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カナダ出身の81歳の億万長者エリック・スプロット(Eric Sprott)氏が、金(ゴールド)と銀(シルバー)への集中投資によって資産30億ドル超を達成した。2025年初頭と比較して約4倍に膨れ上がったその資産は、貴金属市場の歴史的な高騰を背景としている。ベトナムでも金価格の急騰が連日ニュースとなる中、この「貴金属の帝王」の投資哲学は、アジアの投資家にとっても示唆に富む内容である。
エリック・スプロットとは何者か
エリック・スプロット氏は、カナダ・トロントを拠点とする伝説的な投資家である。2000年代初頭から貴金属セクターへの投資を本格化させ、金と銀の鉱山株や現物資産に資金を集中投下してきた。同氏が創業したスプロット・インク(Sprott Inc.)は、貴金属に特化した資産運用会社として北米市場で広く知られている。
注目すべきは、スプロット氏の全資産のうち実に98%が金と銀に関連する投資から生み出されているという点である。通常、資産家はリスク分散のため不動産、株式、債券など多様な資産クラスに分散投資を行うが、同氏はそうした常識に逆らい、貴金属一本に賭け続けてきた。その結果、現在の資産総額は30億ドルを超え、2025年初頭と比較して約4倍にまで拡大した。
なぜ今、貴金属が急騰しているのか
2024年後半から2025年にかけて、金価格は歴史的な高値圏で推移している。その背景には複数の要因がある。
第一に、世界的な地政学リスクの高まりである。ロシア・ウクライナ紛争の長期化、中東情勢の不安定化、そして米中間の貿易摩擦の再燃が、安全資産としての金への資金流入を加速させた。第二に、各国中央銀行による金の大量購入がある。特に中国人民銀行やインド準備銀行をはじめとする新興国の中央銀行が、外貨準備の多様化を目的に金の買い増しを続けている。第三に、米国の財政赤字拡大とドルの長期的な信認低下への懸念が、金の代替通貨としての魅力を高めている。
銀についても、太陽光パネルなどのグリーンエネルギー関連需要が産業用途として急拡大しており、投資需要と産業需要の双方から価格が押し上げられている状況である。
ベトナムにおける金市場の過熱
この世界的な金価格の高騰は、ベトナム国内にも大きな波及効果をもたらしている。ベトナムは伝統的に金への信頼が厚い国であり、国民の間では資産保全の手段として金の現物保有が広く根付いている。ハノイやホーチミン市の金販売店には連日長蛇の列ができ、SJC金地金(ベトナム国営の金地金ブランド)の価格は国際価格を大幅に上回るプレミアムで取引されることも珍しくない。
ベトナム国家銀行(中央銀行に相当)は、国内金価格と国際金価格の乖離を是正するため、金地金の入札販売を断続的に実施してきたが、需要の勢いは衰えていない。金価格の上昇は、ベトナム国内のインフレ期待や通貨ドンの先行きに対する不安とも密接に関連しており、単なる投機ではなく、国民の経済心理を映す鏡とも言える。
スプロット氏の投資哲学が示す教訓
スプロット氏の成功は、「逆張り」と「長期集中投資」の典型的な成功事例である。2000年代初頭、貴金属は多くの投資家から見向きもされないセクターであった。当時は米国のIT株全盛期であり、金や銀への投資は「時代遅れ」と見なされていた。しかしスプロット氏は、通貨の過剰発行と金融システムの脆弱性に早くから着目し、貴金属こそが究極の価値保存手段であるとの確信を持ち続けた。
同氏は単に金の現物を保有するだけでなく、金や銀の探鉱・開発を行うジュニアマイニング企業(中小規模の鉱山会社)にも積極的に投資してきた。こうした企業の株価は、金価格の上昇局面ではレバレッジが効いて大きなリターンを生む一方、下落局面では壊滅的な損失を被るリスクも抱える。スプロット氏はそのリスクを引き受けた上で、20年以上にわたって信念を貫いてきたのである。
投資家・ビジネス視点の考察
このニュースは、ベトナム株式市場や同国の投資環境を考える上でも複数の重要な示唆を含んでいる。
ベトナム株式市場への影響:金価格の高騰は、ベトナムの金関連企業や宝飾品セクターの業績にプラスに作用する可能性がある。一方で、金への資金流入が加速すれば、株式市場から資金が流出するリスクもある。ベトナムのVN-Indexは、国内投資家の金選好が強まる局面では売り圧力にさらされやすい傾向がある。
ベトナムドンと金の関係:ベトナムドンは管理フロート制のもと比較的安定しているが、国際的なドル安基調が続けば、ドン建ての金価格は一段と上昇する可能性がある。これは輸入コストの増大を通じてインフレ圧力を高め、ベトナム国家銀行の金融政策にも影響を及ぼし得る。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、海外からの大規模な資金流入を促すと期待されている。しかし、世界的なリスクオフ局面で貴金属に資金が集中する環境が続けば、新興国株式全体への資金配分が抑制される可能性も否定できない。格上げの恩恵を最大限享受するためには、世界的なリスク選好の回復が不可欠であり、貴金属相場の動向はその先行指標としても注視すべきである。
日本企業・投資家への示唆:ベトナムに進出している日本企業にとって、金価格の上昇に伴うインフレや為替変動は事業コストに直結する問題である。また、日本の個人投資家がベトナム株に投資する際にも、「金か株か」という資金配分の判断が従来以上に重要となっている。スプロット氏のように一つのセクターに集中する戦略は、個人投資家にとってはリスクが高いが、ポートフォリオの一定割合を貴金属に配分するという考え方は、ベトナム投資のヘッジ手段としても検討に値するだろう。
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出典: 元記事












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