ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
米国とイランの軍事衝突が続く中、ペルシャ湾岸の緊張が新たな段階に入り、金価格が激しく上下動している。世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trustが8.9トンもの大量売却を行い、短期的な金相場に対する投資家の悲観的な心理が浮き彫りとなった。原油高とドル高が同時進行する異例の環境下で、ベトナムの金市場・為替市場にも影響が及んでいる。
金価格:買い戻し後に再び下落
4月22日(火曜日)のニューヨーク市場で、金のスポット価格は前日比18.8ドル高の4,740.9USD/オンスで取引を終えた(Kitcoデータ)。上昇率は0.4%。COMEX(米商品先物取引所)の6月限金先物も0.7%上昇し、4,753USD/オンスで引けている。銀のスポット価格は77.82USD/オンスと、1.03ドル(1.3%)上昇した。
アナリストによれば、この上昇は前日に2%超の急落を記録した後の「押し目買い」によるものである。しかし、原油価格とドルの同時上昇が上値を抑えた。
翌23日のアジア市場では早速反落し、ベトナム時間午前6時30分時点で金スポット価格は約4,728USD/オンスと、前日のニューヨーク終値比0.3%安。銀も0.3%近く下落し、77.6USD/オンス超の水準となった。
湾岸情勢:ホルムズ海峡で新たな衝突
金価格の乱高下の背景にあるのは、ペルシャ湾岸における地政学リスクの急激なエスカレーションである。トランプ大統領が米国とイランの間の停戦延長を発表した直後、イラン革命防衛隊(IRGC)がホルムズ海峡(世界の原油輸送量の約2割が通過する戦略的要衝)で「無許可で通過しようとした」コンテナ船2隻を拿捕したと、イラン国営タスニム通信が報じた。一方、米国は停戦期間中もイランに対する海上封鎖を維持している。
この結果、停戦延長がホルムズ海峡経由の原油フローの回復につながるかは極めて不透明な状況にある。タンカーの通行量は依然として「細々とした状態」が続いており、輸送業者は依然として危険に直面している。
原油・ドルの同時上昇が金を圧迫
原油市場はホルムズ海峡の緊張を受けて急騰した。ロンドン市場のブレント原油先物(世界の原油価格の指標)は3%超上昇し101.91USD/バレルで引け、米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油も3%超上昇の92.96USD/バレルとなった。
ドル指数(Dollar Index、主要6通貨に対するドルの強さを示す指標)は0.21%上昇の98.61ポイント。米連邦準備制度理事会(FRB)が原油高によるインフレ圧力に対抗するため、高金利を長期間維持するとの観測がドルを下支えしている。原油高の長期化はグローバルなインフレ懸念を高め、各国中央銀行の利上げ観測にもつながっている。
金はドル建てで取引され、かつ利息を生まない資産であるため、ドル高と高金利の組み合わせは金にとって二重の逆風となる。米イラン戦争の開始以降、金価格は約11%下落している。
SPDR Gold Trustが8.9トンの大量売却
世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trust(ティッカー:GLD)は水曜日の取引で8.9トンの金を売却(ネットベース)し、保有残高は1,050.9トンに減少した。この大規模な売却は、機関投資家を含む市場参加者が金の短期的な上昇余地に対して悲観的な見方を強めていることを如実に示している。
ベトナム国内の金・為替市場への影響
上記の金スポット価格をベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大手の国営商業銀行)のドル売りレートで換算すると、約1億5,010万ドン/ルオン(1ルオン=約37.5グラム)に相当する。同時点でのベトコムバンクのドルレートは、買い26,095ドン、売り26,355ドンで、前日比各2ドン安であった。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金価格の乱高下と原油高は、ベトナム経済・株式市場に複数の経路で影響を及ぼす。
第一に、インフレ圧力の高まりである。ベトナムは原油の純輸入国であり、ブレント原油が100ドル超の水準に定着すれば、国内の燃料価格・輸送コストが上昇し、消費者物価指数(CPI)を押し上げる。ベトナム国家銀行(中央銀行)が利下げに慎重にならざるを得ず、不動産・建設セクターや内需関連株にはマイナス要因となる。
第二に、為替リスクである。ドル高がさらに進行すれば、ドン安圧力が強まる。ベトナム国家銀行はドンの安定維持を重視しており、外貨準備の取り崩しや政策金利の調整を迫られる可能性がある。輸出企業には追い風だが、ドル建て債務を抱える企業や輸入依存度の高いセクターには逆風となる。
第三に、VN-Index(ホーチミン証券取引所の代表的指数)への影響である。海外の地政学リスクが高まると、ベトナム株式市場からの外国人資金流出が加速する傾向がある。2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げを控え、外国人投資家の動向は特に注視すべきである。格上げが実現すれば数十億ドル規模のパッシブ資金流入が期待されるが、足元の地政学リスクと金融環境の引き締めが格上げ後の資金流入タイミングを遅らせる可能性もある。
第四に、日本企業への影響である。ベトナムに製造拠点を持つ日本企業は、原材料コストの上昇と為替変動の両面でコスト管理が難しくなる局面にある。特に自動車部品、電子機器、食品加工などの分野でサプライチェーンへの影響を注視する必要がある。
金のSPDR Gold Trustの大量売却は、短期的にはリスク回避よりも「高金利環境での金離れ」を示唆している。しかし、ホルムズ海峡の情勢が一段と悪化すれば、金が再び安全資産として見直される展開もあり得る。ベトナム国内の金投資家にとっても、国際金価格と為替の両面から目が離せない局面が続く。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント