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2026年5月29日(金)、国際金価格は前日比43.4ドル高の4,540.3ドル/オンスで取引を終え、回復基調を維持した。しかし、世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trustは同日5.8トンの大量売却を実施。金は月間ベースで下落して5月を終えた。インフレ懸念と「金利が高水準で長期化する」との見通しが重くのしかかっている。
米イラン停戦延長報道が金価格を押し上げ
金価格回復の直接的なきっかけとなったのは、米国とイランが停戦合意の延長で一致する可能性があるとの報道である。木曜日に米主要メディアが関係筋の情報として伝え、金曜日にはトランプ大統領自身がイランとの合意について決断する意向を表明した。合意にはホルムズ海峡の再開放とイランの核兵器製造能力の解体が条件として含まれるとされる。
この地政学リスクの緩和期待により、原油価格・ドル指数・米国債利回りが揃って下落し、金にとっては追い風となった。WTI原油先物は1.73%安の87.36ドル/バレル、ブレント原油先物は1.77%安の92.05ドル/バレルで取引を終えた。ドル指数(Dollar Index)は0.11%低下の98.91ポイント。ただし月間では0.77%上昇している。
米国債利回りとインフレ指標の動向
米10年債利回りは1ベーシスポイント超低下し4.443%、2年債は4.008%、30年債は4.98%となった。同週に発表された米個人消費支出(PCE)物価指数は、前年比で3年ぶりの高い伸びを記録した。前月比の伸びは予想を下回ったものの、FRB(米連邦準備制度理事会)が年内に利上げに踏み切る可能性は低下した一方、アナリストの間では2027年まで金利据え置きが続くとの見方が広がっている。
Blue Line Futures社のチーフストラテジスト、フィリップ・ストリーブル氏は、原油安とドル安が金価格の重要な支えになったと分析する一方、ペルシャ湾岸の紛争による海上輸送の混乱やエネルギーインフラの損傷が原油高を維持させ、各国中央銀行が利下げに慎重になるリスクを指摘した。
SPDR Gold Trustの売却と月間パフォーマンス
世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trustは29日に5.8トンを売却し、保有量を1,029.1トンに減らした。5月全体では10トン超の純売却となっている。機関投資家の金離れが鮮明であり、インフレ環境下でも高金利の債券や短期金融商品に資金が流れている構図がうかがえる。
金のスポット価格は週間で0.66%下落、5月月間では0.1%の下落となった。COMEX(ニューヨーク商品取引所)の2026年8月限金先物は1.3%高の4,593ドル/オンス。一方、銀スポット価格は0.38ドル安の75.4ドル/オンスと軟調であった。
ベトナム国内への影響
5月末時点の金スポット価格をベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大の国有商業銀行)のドル売りレートで換算すると、約1億4,440万ドン/ルオン(ベトナムの金取引単位、約37.5グラム)となり、1カ月前と比べ50万ドンの下落である。同行の5月30日朝のドルレートは買値26,085ドン、売値26,395ドンで、4月末比でそれぞれ13ドン安、27ドン高とほぼ横ばいであった。
ベトナムは世界的にも金への需要が根強い国の一つであり、国内金価格は国際価格に連動しつつも独自のプレミアムが乗る構造にある。ベトナム国家銀行(中央銀行)が金地金の輸入を厳格に管理しているため、国際価格の下落がそのまま国内価格の下落に直結しない点には注意が必要である。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金市場の動向は、ベトナム株式市場にも間接的に影響を与える。金価格の軟調は、ベトナムの個人投資家の一部が金から株式へ資金をシフトさせる動機になり得る。特に2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げが実現すれば、海外資金の流入と相まって株式市場への資金移動が加速する可能性がある。
一方、米国の高金利長期化観測はドン安圧力となり、ベトナムに進出する日本企業にとっては原材料コストや為替リスクの管理が引き続き重要な課題となる。原油価格が高止まりした場合、ベトナムの貿易収支や消費者物価にも影響が及ぶため、ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム(PVD)といったエネルギー関連銘柄の動向にも注目すべきである。
金についてはSPDR Gold Trustの大量売却が示す通り、機関投資家は短期的に慎重姿勢を強めている。しかし、地政学リスクやインフレの不確実性が完全に解消されたわけではなく、中長期的な安全資産としての金の役割は変わらない。ベトナム国内で金投資を行う場合は、国際価格との乖離幅(プレミアム)の変動にも目を配る必要がある。
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