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ベトナム証券市場において、2026年第2四半期(4〜6月期)の決算発表シーズンが本格的に始動した。これまでに上場企業97社が業績を公表しており、これら企業の税引後利益(当期純利益)の合計は前年同期比で17.5%の増加となった。一見すると堅調な伸びに見えるが、この増加率は過去5四半期の中では最も低い水準にとどまっており、市場関係者の間ではベトナム企業の増益ペースに「減速の兆し」が見え始めたのではないかという声が上がっている。
過去5四半期で最低の増益率、何が起きているのか
ベトナムの上場企業は例年、四半期ごとに決算を順次開示していく。決算発表の初期段階で公表されるのは主に決算作業が早い企業や、業績に自信のある企業が中心となる傾向があり、今回の97社という数字は、東証(東京証券取引所)に相当するベトナムのホーチミン証券取引所(HOSE)およびハノイ証券取引所(HNX)、さらに非上場公開会社市場(UPCoM)に上場する企業全体からすればまだごく一部に過ぎない。しかし、この初期段階での集計は、その後の決算シーズン全体の「先行指標」として市場関係者から重視されている。
今回集計された97社の税引後利益合計の伸び率は17.5%であった。これは前年同期比としては依然としてプラス成長を維持しているものの、直近5四半期(2025年第2四半期から2026年第1四半期にかけて)の中で最も低い増加率となった。ベトナム経済はこれまで、輸出の回復や国内消費の持ち直し、外国直接投資(FDI)の継続的な流入などを背景に、企業収益が高い伸びを示してきた経緯がある。今回の数字はその勢いに一服感が出てきたことを示唆するものと受け止められている。
増益率鈍化の背景をどう読むか
増益率が鈍化した背景には複数の要因が考えられる。第一に、前年同期の比較対象となる2025年第2四半期の利益水準がすでに高かった「ベース効果」の影響が挙げられる。前年の業績が好調であればあるほど、翌年の伸び率は相対的に低く見えることになる。第二に、世界経済の減速や米国の通商政策(トランプ関税を含む対ベトナム貿易措置)の影響により、輸出関連企業やサプライチェーンに組み込まれている製造業の収益にブレーキがかかっている可能性がある。第三に、国内の不動産市場や建設関連セクターの回復が、当初期待されていたほど力強くない可能性も指摘されている。
ただし、現時点ではまだ97社の発表に過ぎず、これはベトナム証券市場全体の上場企業数(1,600社以上ともいわれる)のごく一部である。今後、銀行株や不動産株、消費財株といった時価総額の大きいセクターの決算が出そろうにつれて、全体の増益率は上下どちらの方向にも修正される可能性がある。特にベトナムの株式市場では、時価総額上位を銀行セクターが占める構造となっており、大手銀行(ベトコムバンク(ベトナム外国貿易商業銀行)、テクコムバンク(ベトナム技術商業銀行)、BIDV(ベトナム投資開発銀行)など)の決算内容が市場全体の増益率を大きく左右する点に留意が必要である。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の「17.5%増益、ただし5四半期ぶりの低水準」というニュースは、ベトナム株式市場に短期的な警戒感をもたらす可能性がある。特にベトナムのベンチマーク指数であるVN指数(VN-Index)は、近年の企業業績拡大への期待を背景に上昇基調を維持してきただけに、増益ペースの鈍化が確認されれば、バリュエーション(株価収益率などの割高感)の見直しにつながるリスクは無視できない。
もっとも、増益率が鈍化したとはいえプラス成長自体は継続している点は重要である。ベトナム経済は依然として東南アジアの中でも高い成長率を維持しており、製造業のFDI誘致や中間層の拡大による消費市場の成長というファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)自体は崩れていない。日本企業にとっても、ベトナムは引き続き「チャイナ・プラスワン」の有力な投資先であり、進出済みの日系企業(自動車部品、電子機器、小売、金融など)にとって現地取引先企業の業績動向は取引継続やパートナーシップ判断の重要な材料となる。
また、2026年9月に決定が見込まれるFTSEラッセルによるベトナムの新興市場(エマージング・マーケット)指数格上げとの関連も見逃せない。格上げが実現すれば、パッシブ運用を中心とした海外機関投資家の資金流入が期待される一方で、その前提となるのはベトナム上場企業の収益力・情報開示の透明性・市場インフラの改善である。今回のような決算発表の遅れや、増益ペースの鈍化といったニュースが積み重なれば、格上げ判断における「企業業績の質」への評価にも間接的に影響を与えかねない。今後発表が続く残りの上場企業、特に銀行・不動産・製造業セクターの決算内容を注視することが、ベトナム株式市場全体の方向性を見極める上で不可欠となるだろう。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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