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ベトナムの多くの国有企業(DNNN、Doanh nghiệp nha nước)が数千億ドン規模の資産を保有しながら、成長軌道に乗れずに苦しんでいる。専門家によれば、その原因はガバナンス(企業統治)体制の制約と、資本運用に関する自己決定権の欠如にあるという。今回の指摘は、ベトナム経済における国有セクターの構造的課題を改めて浮き彫りにするものであり、国有企業改革の行方に関心を寄せる投資家にとっても看過できない内容だ。
豊富な資産を抱えながら伸び悩む国有企業
ベトナムでは、電力、通信、金融、運輸、資源開発など基幹産業の多くを国有企業が担っている。これらの企業の中には、数千億ドンから兆ドン規模の資産を保有する大企業も少なくない。しかし、専門家の分析によると、こうした潤沢な資産を持ちながらも、事業拡大や新規投資に踏み出せず、成長が停滞しているケースが目立つという。
その背景として指摘されているのが、国有企業特有の管理・監督の仕組みだ。ベトナムの国有企業は、国(政府)が実質的な所有者であるため、投資判断や資金の使途について、複数の行政機関や監督機関の承認を経る必要がある。この多層的な承認プロセスが、民間企業に比べて意思決定のスピードを著しく遅らせているとされる。
「資本自己決定権」の欠如という構造問題
専門家が特に強調しているのが「資本に関する自己決定権(quyền tự quyết vốn)」の不足だ。国有企業の経営陣は、企業の経営者でありながら、資産の処分や新規事業への投資、増資などの重要な意思決定において、国有資本管理を担う機関(かつてのSCIC=国家資本投資公司など)や関連省庁の許可を得る必要がある場合が多い。
この結果、市場の変化に迅速に対応できず、収益性の高い投資機会を逃してしまう、あるいは非効率な資産を抱え続けざるを得ない、といった事態が生じている。専門家は、こうした構造が続く限り、国有企業がその潤沢な資産規模に見合った企業価値や収益力を発揮することは難しいと警鐘を鳴らしている。
ベトナム政府が進める国有企業改革の文脈
ベトナム政府はこれまでも「株式化(cổ phần hóa)」と呼ばれる国有企業の民営化・株式会社化を段階的に進めてきた。ペトロベトナム(PetroVietnam、国営石油ガスグループ)、ビナミルク(Vinamilk、乳製品大手)、サベコ(Sabeco、ビール大手)などはその代表例であり、株式化後に経営効率が大幅に改善した事例として知られる。
一方で、依然として完全な国有形態を維持している企業や、株式化後も国が過半数株式を握り続けている企業では、今回指摘されたようなガバナンスの制約が残存しているとみられる。専門家は、単なる株式化にとどまらず、経営の自主性を実質的に高める制度改革が必要だと提言している。
投資家・ビジネス視点の考察
この問題は、ベトナム株式市場において国有企業関連銘柄(ペトロベトナム傘下企業、EVNグループ関連、各種国有商業銀行など)を評価するうえで重要な視点を提供する。資産規模だけを見て割安と判断するのは危険であり、実際の資本効率(ROE、ROA)やガバナンス体制の実態を精査する必要があることを、今回の専門家指摘は改めて示している。
また、日本企業がベトナムの国有企業とのJV(合弁事業)や資本提携を検討する際にも、この「自己決定権の欠如」という構造的リスクは無視できない。国有企業側の意思決定が政府機関の承認待ちで停滞し、プロジェクトの進行が遅延するケースは実務上しばしば発生しており、交渉段階からこうした事情を織り込んだスケジュール設定が求められる。
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連では、国有企業改革の進展はベトナム資本市場の透明性・効率性向上を示す重要な指標となる。格上げ実現に向けては、国有企業のガバナンス改善や情報開示の充実が、外国人投資家の信頼獲得に直結するテーマであり、今後の政策動向を注視する価値が高い。
ベトナム経済全体で見れば、民間セクターの急成長と対照的に、国有セクターの構造改革の遅れは経済全体の生産性向上の足かせとなり得る。今回の専門家の指摘は、今後のベトナム政府による国有企業改革の加速を促すきっかけとなる可能性があり、中長期的な政策動向として注目していきたい。
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出典: 元記事












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