ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ダイヤモンドは「価値が下がらない資産」「金と並ぶ安全な投資先」というイメージを持たれがちだが、実際には価格が上昇する局面があっても、必ずしも安全な投資チャネルとは言えないという指摘がベトナム国内外の専門家から相次いでいる。金(ゴールド)投資への関心が高まるベトナムにおいて、ダイヤモンドを資産形成の選択肢として検討する層も増えているが、その実態には多くの落とし穴が存在する。
ダイヤモンドと金の決定的な違い
ベトナムでは伝統的に金が「安全資産」として庶民から富裕層まで幅広く保有されてきた歴史がある。結婚式の贈り物として金の装飾品を贈る文化があるほど、金はベトナム社会に深く根付いた資産保全の手段だ。これに対しダイヤモンドは、同じ「輝く貴重品」というイメージを持ちながらも、市場構造がまったく異なる。
最大の違いは流動性と価格形成の透明性にある。金は世界共通の規格(純度・重量)で取引され、国際市場でリアルタイムに価格が形成される。どの国のどの業者に持ち込んでも、ほぼ同じ基準で買い取ってもらえる。一方でダイヤモンドは、カット・カラー・クラリティ・カラット(いわゆる4C)という複雑な評価基準によって一つひとつの価値が大きく異なり、標準化された国際価格が存在しない。同じカラット数のダイヤモンドでも、品質評価次第で価格が数倍変わることも珍しくない。
「売る時に大幅に目減りする」という現実
専門家が特に強調するのは、ダイヤモンドは「買う時の価格」と「売る時の価格」の差(スプレッド)が極めて大きいという点だ。宝飾店でダイヤモンドを購入する際には、素材の価値に加えてブランド料、デザイン料、加工費、店舗の利益などが上乗せされている。しかし、いざそれを売却しようとすると、買取業者は再加工や再販売のコスト、そして品質再鑑定のリスクを織り込んで買い取り価格を提示するため、購入時の価格から大幅に減額されるケースがほとんどだ。金であれば購入価格に近い水準で売却できる可能性が高いのとは対照的である。
さらに、ダイヤモンド市場には近年新たな変数が加わっている。それが「合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)」の急速な普及だ。技術の進歩により、天然ダイヤモンドと肉眼では区別のつかない人工ダイヤモンドを低コストで大量生産できるようになり、世界的に天然ダイヤモンドの需給バランスと価格形成に影響を与えている。実際、近年の国際市場では天然ダイヤモンドの価格が伸び悩む、あるいは下落する局面も見られており、「ダイヤモンドは値上がりし続ける」という神話そのものが揺らいでいる。
専門家が指摘する投資判断の注意点
今回の報道で紹介された専門家の見解によれば、ダイヤモンドは価格が上昇することはあっても、それは「安全資産としての値上がり」ではなく、特定の希少な高品質ダイヤモンド(特大カラット、極めて高いクラリティなど)に限られる傾向が強いという。一般消費者が宝飾店で購入するような装飾用ダイヤモンドは、投資対象というよりも消費財としての性格が強く、資産保全や資産形成の手段としては適していないというのが専門家の一致した見方だ。
また、ダイヤモンドは金と異なり、公的な買い戻し制度や国家管理下での取引市場が整備されていない国が多く、ベトナムにおいても同様の状況にある。売却先の選定や真贋・品質の鑑定を個人が行うのは極めて難しく、詐欺や過大評価によるトラブルのリスクも金に比べて高いとされる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナムでは中央銀行(国家銀行)が金の輸入・取引を厳格に管理しており、金価格の国内外価格差が政策論争になるほど金は「準国民資産」的な位置づけを持つ。今回のダイヤモンドに関する報道は、こうした金一辺倒の資産保全文化に対し、消費者に多角的な視点を提供する意味合いが大きい。ダイヤモンド市場自体はベトナム株式市場に上場する銘柄が限定的であり、直接的な株価インパクトは小さいと見られるが、宝飾・小売セクター(例えばPNJ〈フーニュアン宝石貴金属〉など金・宝飾品を扱う大手企業)の販売戦略やマーケティングの方向性に間接的な影響を与える可能性はある。
また、FTSEラッセルによる新興市場指数への格上げが2026年9月に決定される見込みとなっている中、ベトナムの個人金融資産の多様化・透明化は、資本市場のガバナンス向上という文脈でも注目される。金やダイヤモンドといった実物資産への依存度が高い国民の資産形成行動が、株式や投資信託といった金融商品へシフトしていくかどうかは、今後のベトナム資本市場の厚みを測る上で重要な指標となるだろう。日本からベトログイン進出する宝飾・小売企業にとっても、現地消費者の「安全資産」に対する認識の変化は、商品戦略を考える上で無視できないポイントである。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント