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ベトナム経済の重要な資金源のひとつである海外からの送金(キューホイ、Kiều hối)に異変が起きている。ホーチミン市(旧サイゴン、ベトナム最大の商業都市)における今年上半期(1〜6月)の海外送金受取額が、前年同期比で20%以上減少し、約40億ドルにとどまったことが明らかになった。ベトナム経済の「隠れた外貨獲得源」とも言われる送金が減少に転じたことは、市場関係者の間で注目を集めている。
ホーチミン市の海外送金、なぜ減少したのか
海外送金とは、海外に居住・就労するベトナム人(越僑、いわゆるベトキュー)や海外出稼ぎ労働者が、本国の家族・親族に送る仕送りを指す。ベトナムでは長年にわたり、米国・カナダ・オーストラリア・欧州各国、さらには韓国や日本などで働く労働者からの送金が、外貨準備や国内消費、不動産市場を支える重要な資金源として機能してきた。特にホーチミン市は南部ベトナムの経済中心地であり、海外に親族を持つ世帯が多いことから、全国の海外送金受取額の中でも突出した規模を誇ってきた。
今回発表されたデータによれば、2026年上半期のホーチミン市向け送金額は約40億ドルとなり、前年同期に比べて2割以上の減少となった。これは近年にない大きな下げ幅であり、単なる一時的な変動ではなく、構造的な要因が背景にある可能性が指摘されている。
背景にある複合的な要因
専門家の間では、今回の減少にはいくつかの要因が絡み合っているとの見方が強い。第一に、米国をはじめとする主要送金元国での金利動向や為替変動が、送金コストや送金タイミングに影響を与えている可能性がある。第二に、世界的なインフレ長期化や労働市場の変化により、海外で働くベトナム人労働者自身の可処分所得が伸び悩んでいることも一因とされる。さらに、ベトナム国内の金融当局が近年、非公式な送金ルート(いわゆる「闇送金」)への監視を強化していることも、統計上の減少に一部反映されている可能性がある。
加えて、ベトナムドンの為替レートや預金金利の水準も送金行動に影響を与える要素だ。海外送金の多くは、受取人が米ドルのまま保有するか、ドンに両替して国内の預金・不動産・株式などに投資するかを選択する。国内の金利水準が相対的に魅力を欠く場合、送金そのものの誘因が弱まることも考えられる。
ホーチミン市が果たしてきた役割
ホーチミン市はこれまで、ベトナム全体の海外送金受取額の3割から4割程度を占めるとされ、その経済的インパクトは極めて大きい。送金資金は個人消費のみならず、不動産購入や中小事業への投資資金としても活用されており、同市の不動産市場や小売市場の活性化に直接的に寄与してきた経緯がある。そのため、今回のような大幅な減少は、市の消費動向や不動産セクターの資金流入にも波及する可能性がある。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場の観点から見ると、海外送金の減少は短期的にはネガティブ材料と捉えられる可能性がある。特に不動産デベロッパー銘柄や、消費関連セクター(小売、消費財メーカーなど)は、海外送金を背景とした個人消費・住宅購入需要の恩恵を受けてきた面があり、送金減少が続けば需要の下支え要因が弱まることになる。
一方で、ベトナム経済全体は輸出製造業やFDI(海外直接投資)の拡大によって力強い成長を続けており、海外送金の減少が直ちに経済全体の失速を意味するわけではない。むしろ、経済構造が「送金依存型」から「製造・輸出主導型」へとシフトしつつある証左と捉えることもできるだろう。日本企業を含む外資系企業にとっては、ベトナムの内需動向を見極める上で、送金統計は消費者マインドの先行指標として引き続き注視すべき指標である。
また、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断との関連では、海外送金そのものが直接の評価基準になるわけではないが、外貨流入の多様化と安定性はマクロ経済の健全性を測る上で投資家心理に影響を与えうる。送金減少が一時的な調整なのか、構造的なトレンド転換なのか、今後数四半期のデータでの見極めが重要になるだろう。
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出典: 元記事












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