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アメリカのドナルド・トランプ大統領が、隣国カナダに対して50%という高率の関税を課すため、1930年代の大恐慌期に制定されて以来、事実上一度も発動されたことのない古い法律の条項を持ち出していることが明らかになった。この異例の手法は、トランプ政権の通商政策がいかに前例のない強硬路線を突き進んでいるかを象徴する出来事であり、対米貿易を行う世界各国、そしてベトナムのような輸出主導型経済にとっても看過できない動きである。
90年前の法律とは何か
今回トランプ大統領が根拠として持ち出しているのは、米国議会が大恐慌(世界恐慌)の最中であった1930年代に可決した通商関連の法律の一条項である。この法律は制定から約100年が経過しているにもかかわらず、これまで一度も実際の関税賦課の根拠として発動されたことがなかった、いわば「眠っていた条文」だ。大恐慌とは1929年のニューヨーク株式市場の大暴落に端を発し、世界中を巻き込んだ深刻な経済危機であり、当時のアメリカでは保護主義的な通商政策が数多く導入された歴史的背景がある。トランプ大統領がこの「休眠状態」にあった条項をあえて掘り起こして活用する背景には、既存の通商法(例えば通商拡大法232条や通商法301条など)だけでは、自身が目指す大胆な関税引き上げを正当化しきれないという政治的・法的な事情があるとみられる。
カナダを標的にする狙い
アメリカとカナダは地理的に国境を接し、自動車産業やエネルギー、農産物などの分野で極めて緊密なサプライチェーン(供給網)を構築してきた同盟国であり、経済的にも一体化が進んでいる。にもかかわらず、トランプ大統領は不法移民対策や麻薬(フェンタニルなど)の流入阻止、さらには自国製造業の保護といった名目で、カナダに対して50%という異例の高関税を課す姿勢を鮮明にしている。これは単なる貿易摩擦にとどまらず、北米自由貿易圏(旧NAFTA、現USMCA)の枠組みそのものを揺るがしかねない強硬措置であり、カナダ政府や産業界からは強い反発が予想される。専門家の間では、この措置が最終的に米国内の消費者物価や製造業のコスト増につながる可能性が指摘されており、法的な正当性を巡って今後、米国内の裁判所で争われる可能性も高いとみられている。
関税政策の法的根拠を巡る攻防
トランプ政権はこれまでも、大統領権限を最大限に活用した関税措置を次々と打ち出してきたが、その多くは議会や司法から法的根拠の妥当性を問われてきた経緯がある。今回、大恐慌時代の古い条項を持ち出したことについても、法律専門家の間では「議会が本来想定していた使途と大きく異なるのではないか」との懸念が示されている。仮に司法判断でこの関税措置が無効とされれば、トランプ政権の通商政策全体の信頼性が揺らぐことになりかねず、今後の展開が注目される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の一件は直接的にはアメリカとカナダの二国間問題であるが、ベトナムを含むアジアの輸出国にとっても決して他人事ではない。トランプ政権が同盟国であるカナダにさえ躊躇なく高関税を課す姿勢を見せたことは、対米貿易黒字を抱えるベトナムに対しても、将来的に同様の強硬措置が取られるリスクを改めて意識させるものだ。ベトナムはこれまでも米国からの関税圧力にさらされてきた経緯があり、繊維・アパレル、木材製品、電子機器の組み立てなど、対米輸出比率の高いセクターの投資家は、今回のような「予測不能な通商政策」の動向を継続的に注視する必要がある。
また、日本企業にとっても、ベトナムを製造拠点として対米輸出を行っているケースは少なくなく、米国の通商政策の不確実性が高まることは、サプライチェーン戦略の見直しを迫る要因となり得る。ベトナムに進出する日系企業は、生産拠点の多元化や、対米以外の輸出市場(EU、日本、ASEAN域内など)の開拓を一段と重視する動きを強めるだろう。
一方で、ベトナム株式市場の観点からは、FTSE新興市場指数への格上げ(2026年9月決定見込み)に向けた期待感は引き続き市場のセンチメントを下支えする材料である。米中および米・カナダ間の通商摩擦が激化すればするほど、生産拠点の「チャイナ・プラスワン」戦略の受け皿としてベトナムの相対的な魅力が高まるという側面もあり、短期的な不透明感と中長期的な追い風が交錯する局面が続くとみられる。投資家としては、通商政策の地政学リスクを常に念頭に置きつつ、ベトナム経済のファンダメンタルズ(輸出製造業の強さ、外国直接投資の流入、消費market の拡大)を冷静に見極める姿勢が求められる。
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出典: 元記事












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