ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナムにおける理工系人材、いわゆる「STEM人材」(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Mathematics=数学の頭文字を取った分野の人材)への需要が、今後3〜5年にわたって高い水準を維持するとの見方が専門家の間で強まっている。AI(人工知能)活用とデジタル変革の波、ハイテク志向の工業化路線、そして交通インフラ・エネルギーインフラの整備需要という「3つの大きな原動力」が、この需給ひっ迫を長期化させる背景にあるという。
STEM人材需要を押し上げる3つの原動力
専門家が指摘する第一の原動力は、AI活用とデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)の急速な広がりである。ベトナム政府は近年、国家戦略として「デジタル経済」「デジタル政府」「デジタル社会」の構築を掲げており、金融、製造、小売、行政サービスなど幅広い分野でAI導入とデータ活用が加速している。こうした流れの中で、AIエンジニア、データサイエンティスト、ソフトウェア開発者といった高度なIT人材の需要が急増しているのが現状だ。
第二の原動力は、ハイテク産業を軸とした工業化の推進路線である。ベトナム共産党・政府は従来の労働集約型産業からの脱却を掲げ、半導体、電子機器、精密機械といった高付加価値産業への転換を国家目標として明確に打ち出している。特に半導体産業については、人材育成を含む国家戦略が策定されており、大学や職業訓練機関に対してもカリキュラムの見直しが求められている段階だ。こうした産業構造の転換は、必然的に理工系の専門知識を持つエンジニアや技術者への需要を押し上げることになる。
第三の原動力として挙げられているのが、交通インフラおよびエネルギーインフラの整備需要である。ベトナムでは南北高速鉄道、都市部の地下鉄・都市鉄道網、高速道路網の拡張など、大型インフラプロジェクトが相次いで計画・着工されている。加えて、再生可能エネルギー(洋上風力、太陽光など)や電力網の増強といったエネルギー分野の投資も活発化しており、土木・建築・電気工学分野の技術者不足が今後さらに深刻化する可能性が指摘されている。
専門家が語る「中長期的な人材ひっ迫」の実態
専門家の分析によれば、これら3つの原動力は一過性のものではなく、いずれも国家戦略や大型プロジェクトに裏打ちされた構造的な需要であるため、少なくとも今後3〜5年間はSTEM人材の需要が高水準で推移するとみられている。特にAI・半導体分野の人材は、教育機関からの供給がまだ追いついておらず、実務経験を持つ即戦力人材の獲得競争が企業間で激化していると指摘されている。
ベトナムでは近年、ハノイ工科大学やホーチミン市国家大学といった主要理工系大学がAI・半導体関連の専攻・研究拠点を新設する動きを見せており、政府や地方自治体も海外企業との連携による人材育成プログラムを推進している。しかしながら、産業界が求める人材の量とスピードに対して、教育・訓練の供給体制が十分に追いついていないというギャップが、専門家の間でたびたび指摘される課題となっている。
投資家・ビジネス視点の考察
このニュースは、ベトナム株式市場において複数のセクターに間接的な追い風となる可能性がある。まず、IT・ソフトウェア関連企業(FPTコーポレーションなど)は、AI・デジタル変革需要の拡大を背景に、人材採用力と受注拡大の両面で優位に立つと見込まれる。また、教育・人材育成分野に関連する企業や、大学との産学連携を強化する動きも投資家の注目材料となりうる。
さらに、インフラ関連銘柄(建設、電力、エネルギー開発企業)についても、南北高速鉄道や再生可能エネルギープロジェクトの進展次第で、中長期的な受注拡大が期待される分野だ。ただし、こうした大型プロジェクトは技術者不足によって工期遅延やコスト増のリスクを抱える可能性もあり、投資家としては人材確保状況を継続的にウォッチする必要があるだろう。
日本企業への影響という観点では、ベトナムに進出する製造業・IT企業にとって、優秀な理工系人材の獲得競争が一段と激化することを意味する。特に半導体・電子部品分野で現地生産・開発拠点を持つ日系企業にとっては、賃金上昇圧力や人材の引き抜き合戦への対応が経営課題としてより重要性を増すと考えられる。一方で、日本の大学・専門学校とベトナムの教育機関との連携、あるいは技能実習・特定技能制度を通じた人材交流の強化といった形で、日越間の人材協力の余地はむしろ広がる可能性もある。
マクロ的な視点では、STEM人材需要の高まりは、ベトナムが「労働集約型から技術集約型へ」と経済構造を転換させようとする大きなトレンドの一環として位置づけられる。これはFTSEラッセルによる新興市場指数への格上げ(2026年9月決定見込み)を巡る議論とも軌を一にする話だ。市場インフラの整備や外国人投資家保護の強化と並んで、産業の高度化・人材の質向上は、ベトナム市場が「フロンティア市場」から「エマージング市場」へと格上げされるにふさわしい経済基盤を持つかどうかを判断する材料の一つともなりうる。中長期的な視点でベトナム株式市場を見る投資家にとって、STEM人材の需給動向は、単なる労働市場のニュースにとどまらず、産業構造転換の進捗を測る重要な先行指標として注視すべきテーマと言えるだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント