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ベトナムのeコマース市場において、TikTok Shop(ティックトック・ショップ)の存在感が急速に増している。過去1年間の流通取引総額(GMV)は前年比66%増となり、市場全体の成長率のおよそ2.5倍のスピードで拡大したことが明らかになった。ショート動画から直接購買につながる「ショッパブルコンテンツ」の浸透が、ベトナムの消費行動を大きく変えつつある。
TikTok Shopの急成長の実態
今回明らかになったデータによれば、TikTok Shopの年間GMV成長率は66%に達し、ベトナムのeコマース市場全体の成長率を大きく上回った。市場全体の成長スピードと比較して2.5倍以上のペースで拡大しているという事実は、単なる一プラットフォームの躍進にとどまらず、ベトナムの消費者行動そのものが「動画視聴からその場での購買」というスタイルへ移行していることを示している。
もともとTikTok(ティックトック)は短尺動画のエンターテインメントアプリとして東南アジア全域で若年層を中心に爆発的な人気を獲得してきたが、2022年以降ベトナムでも「TikTok Shop」機能が本格展開され、インフルエンサーによるライブコマース(ライブ配信販売)や、動画内から直接商品ページへ遷移できる仕組みが急速に普及した。特にベトナムでは、ライブ配信中に司会者が商品を実演しながら視聴者からの質問にリアルタイムで答え、その場で購入ボタンを押させるという販売スタイルが定着しており、若年層のみならず30〜40代の消費者層にも浸透している。
ベトナムeコマース市場全体の構図
ベトナムのeコマース市場は、シー(Shopee、シンガポール系)、ラザダ(Lazada、アリババ系)、ティキ(Tiki、地場系)といった従来型プラットフォームがシェアを競う構図が続いてきた。しかし近年はTikTok Shopがシェアを急拡大させ、大手プラットフォームの一角に食い込んでいるとされる。市場調査会社の複数のレポートでも、TikTok Shopはすでにベトナム国内のeコマースGMVにおいて上位2〜3位に位置づけられているとの分析があり、今回の66%成長というデータはこの勢いをさらに裏付ける結果と言える。
ベトナムは人口約1億人を抱え、そのうち若年層(Z世代・ミレニアル世代)の比率が高く、スマートフォン普及率、インターネット利用率も東南アジアで際立って高い水準にある。こうした人口構成とデジタル環境が、TikTokのようなコンテンツ主導型のショッピング体験と極めて高い相性を持っている点が、今回の急成長の背景にあると分析できる。
ライブコマースという新たな消費文化
ベトナムでは「TikTok Shop」を通じたライブコマースが一種の社会現象となっている。日用品や化粧品、アパレル、食品など幅広いジャンルで、インフルエンサーや個人事業主が自らライブ配信を行い、視聴者とのコミュニケーションを通じて商品を販売する手法が定着した。従来の「検索してから購入する」eコマースのスタイルとは異なり、「見て、共感して、即購入する」という消費行動が主流になりつつある点が、ベトナムのデジタル経済における大きな転換点として注目される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のTikTok Shopの急成長は、ベトナム株式市場に上場する物流企業、決済企業、広告代理店関連銘柄にとって間接的なプラスの材料となり得る。eコマースの拡大は宅配・ラストマイル物流の需要を押し上げるほか、電子決済インフラの利用頻度の増加にもつながるためだ。ベトナム証券取引所(HOSE)に上場する物流・宅配関連企業や、フィンテック分野に関与する銀行株にとっても、消費のデジタル化トレンドは中長期的な追い風になるとみられる。
また、日本企業やベトナム進出企業にとっても、このトレンドは無視できない。日本の消費財メーカーやアパレル、化粧品ブランドがベトナム市場に参入する際、従来型のECサイト出店だけでなく、TikTok Shopを通じたライブコマース戦略を組み込むことが、現地マーケティングの必須要素になりつつある。特に価格競争が激しいベトナム市場において、インフルエンサーマーケティングとライブ配信を組み合わせた販売手法は、ブランド認知と即時購買を同時に獲得できる有効な手段として注目されている。
さらに、2026年9月に決定が見込まれるFTSE(フッツィー)新興市場指数へのベトナム格上げの観点からも、今回のデータは重要な意味を持つ。デジタル経済の拡大は、ベトナムの消費関連セクター全体の成長ストーリーを補強する材料であり、格上げに向けた「ベトナム市場の質的向上」を裏付ける一つの証拠として、海外機関投資家の評価材料になり得る。消費・小売・物流セクターの成長は、格上げ後に流入が見込まれるパッシブ資金の投資対象としても引き続き注目されるテーマだろう。
総じて、TikTok Shopの66%成長というデータは、ベトナム経済全体における「デジタル消費革命」の進行を象徴する事象であり、今後もベトナム株式市場や日本企業のベトナム戦略における重要な参照点となっていくと考えられる。
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