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ベトナム電力公社EVN、ピーク時間帯の変更を検討—家庭への影響なしも企業は対応必至

Phó tổng giám đốc EVN: Đổi khung giờ điện cao điểm không ảnh hưởng đến hộ gia đình
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナム電力公社(EVN=Electricity of Vietnam)の副総裁が、電力料金のピーク時間帯(高負荷時間帯)の変更を検討していることを明らかにした。家庭の電気料金には影響しないものの、製造業を中心とする企業は生産スケジュールの見直しを迫られる可能性がある。電力需要が急増するベトナムにおいて、需給バランスの最適化を図る重要な政策転換の動きである。

目次

EVN副総裁が言及した「新ピーク時間帯」の概要

EVNのゴー・ソン・ハイ(Ngô Sơn Hải)副総裁は、電力料金体系における「高負荷時間帯(giờ cao điểm)」の枠組み変更について言及した。現行制度では、ベトナムの電力料金は時間帯別に3段階——低負荷(オフピーク)、通常、高負荷(ピーク)——に分かれており、高負荷時間帯に使用した電力には割増料金が適用される。この仕組みは主に産業用・商業用の大口需要家に適用されるもので、一般家庭向けの電気料金は累進制(使用量に応じた段階料金)が基本となっている。

同副総裁によれば、新たなピーク時間帯が導入された場合でも、一般家庭の電気料金の計算方式には変更がないため、家計への直接的な影響は生じない。一方で、時間帯別料金が適用される企業・工場については、ピーク時間帯のシフトに合わせて生産計画や操業時間を調整する必要が出てくる。

なぜ今、ピーク時間帯の見直しなのか

背景にあるのは、ベトナムの電力需要構造の急速な変化である。ベトナムは過去10年にわたり年間GDP成長率6〜8%の高成長を続けてきたが、それに伴い電力消費量も年率約10%前後のペースで増加してきた。特に近年は以下のような構造変化が顕著である。

第一に、製造業の集積が進んだことで、工業用電力の需要パターンが変化している。サムスン、LG、キヤノン、パナソニックといった外資系メーカーの大規模工場が北部(バクニン省、タイグエン省など)や南部(ビンズオン省、ドンナイ省など)の工業団地に集中しており、従来のピーク時間帯の前提が現在の需要実態と乖離し始めている。

第二に、太陽光発電の急速な普及により、日中の電力供給が過剰となる一方、夕方から夜間にかけての需要ピークとのギャップが拡大している。いわゆる「ダックカーブ(Duck Curve)」と呼ばれる現象で、これは世界的にも再生可能エネルギーの普及が進んだ地域で共通して見られる課題である。ベトナムでは特に中南部で屋根置き型太陽光パネルが爆発的に増えたため、この傾向が顕著だ。

第三に、気候変動の影響でエルニーニョ現象などによる猛暑が頻発し、冷房需要のピークが従来の想定を超えるケースが増えている。2023年、2024年にはベトナム全土で電力不足が深刻化し、北部では計画停電が実施される事態にまで至った。こうした経験を踏まえ、EVNは需要側の行動変容を促すための料金体系の見直しを進めているのである。

企業への影響——生産シフトの再設計が必要に

今回の変更が実施された場合、最も大きな影響を受けるのは電力多消費型の製造業である。ベトナムに進出している日系企業を含む外資系メーカーの多くは、電力コスト削減のためにピーク時間帯を避けた生産スケジュールを組んでいる。ピーク時間帯が変更されれば、工場のシフト体制や設備の稼働計画を根本的に見直す必要が生じる。

特に鉄鋼、セメント、化学、繊維といったエネルギー集約型産業では、ピーク時間帯の電力料金は通常時間帯の1.5〜2倍程度に設定されているため、わずかな時間帯のずれが年間の電力コストに大きく影響する。工業団地に入居する中小規模の工場にとっても、労働者のシフト変更や物流スケジュールの調整など、付随するコストは無視できない。

一方、EVN側としては、ピーク時間帯の見直しにより電力需要の平準化を実現し、発電設備の効率的な運用や送配電網への負荷軽減を図る狙いがある。ベトナムでは第8次電力マスタープラン(PDP8=Power Development Plan VIII)に基づき、2030年までに再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げる計画を推進中であり、時間帯別料金の最適化はその実現に不可欠な要素と位置づけられている。

現行の電力料金制度の仕組み

理解を深めるために、ベトナムの現行電力料金制度を簡単に整理しておく。ベトナムの電力小売料金は商工省(Bộ Công Thương)が定める規制価格であり、需要家の種類に応じて以下のように分類されている。

(1)一般家庭向け:6段階の累進制(使用量が増えるほど単価が上がる方式)。時間帯別の区分はなく、月間の総使用量に基づいて料金が算出される。今回の変更の影響を受けないのはこの仕組みによるものである。

(2)産業用・商業用:時間帯別の3段階制(ピーク・通常・オフピーク)。電力メーターが時間帯別に計測し、それぞれ異なる単価が適用される。今回の変更はこのカテゴリーに直接影響する。

(3)その他(行政機関、病院、学校など):別途定められた料金体系が適用される。

EVNはベトナム唯一の送配電事業者であり、電力小売市場においても事実上の独占的地位にある国有企業である。近年は電力市場の自由化(卸売市場の整備など)が段階的に進められているが、小売段階での競争導入はまだ先の話である。

投資家・ビジネス視点の考察

今回のニュースは、短期的に特定の上場銘柄を急騰・急落させるような材料ではないが、中長期的な視点では複数の投資テーマと関連している。

EVN関連銘柄への影響:EVN自体は上場していないが、その子会社である発電3社——第1発電総公社(PV Power=POW)、第2発電総公社(未上場)、第3発電総公社(PGV)——はホーチミン証券取引所に上場している。ピーク時間帯の変更は発電所の稼働パターンに影響を与えるため、特にガス火力や水力発電を主力とするこれらの企業の収益構造に波及する可能性がある。ただし、影響の方向性は新たなピーク時間帯の具体的な設定次第であり、現時点では確定的な判断は難しい。

日系製造業への影響:ベトナムに生産拠点を置く日系企業は約2,000社以上にのぼる。特に電子部品、自動車部品、繊維・縫製などの分野では電力コストが原価に占める割合が比較的高く、ピーク時間帯の変更は直接的なコスト影響をもたらす。日系企業の現地法人は、今後EVNや商工省から発表される具体的な時間帯設定に注視し、早期に対応策を検討すべきである。

電力インフラ・再エネ関連:ベトナム政府がPDP8に基づき再生可能エネルギーの拡大を推進する中、時間帯別料金の見直しは蓄電池(BESS=Battery Energy Storage System)やスマートグリッド関連の需要を喚起する可能性がある。ピークシフトが進めば、企業が自前で蓄電設備を導入するインセンティブが高まり、関連ビジネスの成長が期待される。

FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに直接的な影響を与えるテーマではないが、電力供給の安定性はベトナムの投資環境を評価する際の重要な要素の一つである。2023年の電力危機は海外投資家の間でベトナムのインフラリスクとして広く認識された経緯があり、今回のような需給最適化の取り組みは、中長期的にベトナム市場の信頼性向上に寄与するものと評価できる。

総じて、今回の動きはベトナムの電力制度が経済成長とエネルギー転換の両立に向けて進化しつつあることを示すものである。家庭への影響がないとされる点は社会的な安定を維持する上で重要であり、一方で企業に対しては柔軟な対応力が求められる。ベトナムに投資・事業展開する日本の関係者にとっては、電力政策の動向を継続的にウォッチすべきテーマといえるだろう。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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