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先進国の主要中央銀行10行(G10)で利上げの波が広がっている。6月11日にECB(欧州中央銀行)が約3年ぶりの利上げに踏み切ったのを筆頭に、オーストラリア、ノルウェー、日本も金融引き締めに転じた。イラン紛争に起因するホルムズ海峡の物流混乱と原油高が、世界的なインフレ圧力を再燃させており、ベトナム経済・株式市場にも無視できない影響を及ぼしつつある。
G10とは何か——外為市場における主要10通貨グループ
G10とは、外国為替市場で最も活発に取引される10通貨を発行する国・地域のグループを指す。具体的には米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフラン、カナダドル、スウェーデンクローナ、ノルウェークローネ、豪ドル、NZドルの10通貨である。これらの中央銀行の政策金利動向は、新興国であるベトナムの為替・資本フローに直結するため、ベトナム投資家にとっても極めて重要な指標である。
各中央銀行の政策金利見通し(政策金利の高い順)
1. オーストラリア(RBA)——政策金利4.35%(G10最高)
オーストラリア準備銀行(RBA)は2026年に入り既に3回の利上げを実施し、政策金利を4.35%まで引き上げた。これはG10の中で最も高い水準である。イラン紛争による世界的なエネルギー価格高騰への対応であり、昨年実施した利下げ分を完全に巻き戻した形だ。ミシェル・ブロック総裁は引き締め政策が期待通りに効果を発揮し始めていると述べたが、市場では年内にさらにもう1回利上げが行われる確率を約75%と織り込んでいる。
2. ノルウェー(Norges Bank)——政策金利4.25%
ノルウェー中央銀行は5月初旬に0.25ポイントの利上げを実施し、政策金利を4.25%に引き上げた。この決定はアナリストの予想より早く、他の主要中銀に先駆ける形となった。6月18日の会合では据え置きが予想されているが、5月のコアインフレ率が予想外に上昇しており、年内の追加利上げ観測が強まっている。
3. 英国(BOE)——政策金利3.75%
イングランド銀行(BOE)は6月18日に会合を開くが、2026年初頭から据え置いている3.75%を維持する見通しである。市場は9月の利上げをほぼ確実視しているものの、BOE内部は慎重姿勢を崩していない。注目すべきは、BOEが従来の中心シナリオによるインフレ予測の公表を取りやめ、3つのシナリオを提示する方式に切り替えた点である。最悪シナリオでは大幅な利上げが必要になる可能性が示されている。
4. 米国(Fed)——政策金利据え置き見通し
FRB(米連邦準備制度理事会)は6月16〜17日の会合で金利を据え置く見通しである。イラン紛争の勃発後、市場は利下げ期待を完全に撤回し、逆に2026年中の利上げシナリオを織り込み始めた。10月会合までに利上げが行われる確率は約60%と見積もられている。新任のケビン・ウォーシュFRB議長はトランプ大統領から利下げ圧力を受けているとされるが、利下げへの支持を取り付けるのは困難な情勢である。
5. ニュージーランド(RBNZ)——政策金利2.25%
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は7月初旬の会合で利上げに踏み切る可能性が高い。インフレ率が目標レンジ(1〜3%)を大きく上回ると予測される一方、失業率は10年ぶりの高水準にあり、スタグフレーション的な難題に直面している。年内に複数回の追加利上げも視野に入っている。
6. カナダ(BOC)——政策金利2.25%
カナダ中央銀行(BOC)は6月10日、政策金利を2.25%に据え置いた。エネルギーコスト上昇が物価全般に波及している兆候はまだ限定的であり、コアインフレの低下傾向は国内需要の弱さを示唆している。エコノミストはBOCが2026年を通じて金利を据え置くと予想している。
7. ユーロ圏(ECB)——政策金利2.25%に引き上げ
ECBは6月11日、約3年ぶりとなる利上げを決定し、主要政策金利である預金ファシリティ金利を2.25%に引き上げた。イラン紛争によるエネルギーコスト上昇がユーロ圏全体に波及する前に先手を打つ狙いである。ECBは同時に新たな基本シナリオ予測を公表し、2026年のインフレ率を3%、2027年を2.3%、2028年を2%と見通している。
8. スウェーデン(Riksbank)——政策金利1.75%
スウェーデン中央銀行(リクスバンク)は来週会合を開くが、基調インフレが比較的低水準にとどまっていることから、年内は1.75%で据え置きとの見方が市場の大勢を占めている。
9. 日本(BOJ)——政策金利0.75%、追加利上げの公算
日本銀行(BOJ)は来週の政策決定会合で、現行0.75%の短期政策金利をさらに引き上げると予想されている。長期にわたるマイナス金利政策からの正常化プロセスの一環であり、5月の国内企業物価指数(PPI)は3年ぶりの高い伸びを記録した。円安による輸入コスト増がインフレ圧力を強めており、利上げは円安抑制にも寄与すると期待される。ただし、植田和男総裁が会合直前に入院したことが政策運営を複雑にする可能性がある。
10. スイス(SNB)——政策金利0%(G10最低)
スイス国立銀行(SNB)はG10で最も低い0%の政策金利を維持しており、来週の会合でも変更なしと予想される。スイスのインフレは低水準にとどまる一方、フラン高が経済を圧迫している。SNBはマイナス金利への回帰には慎重であり、フラン高抑制のために為替介入を優先する姿勢を示している。
ベトナム経済・株式市場への影響——投資家が注視すべきポイント
(1)為替・資本フローへの影響:G10全体で利上げ基調が強まれば、先進国と新興国の金利差構造が変化し、ベトナムからの資本流出圧力が高まる。ベトナム国家銀行(SBV)もドン防衛のために利上げを迫られる可能性があり、国内の不動産・建設セクターなど金利感応度の高い業種には逆風となる。
(2)原油高とインフレ:ホルムズ海峡の混乱による原油高は、エネルギー輸入国であるベトナムの貿易収支とインフレに直撃する。ペトロリメックス(PLX)やPVガス(GAS)などエネルギー関連銘柄には追い風だが、製造業全般のコスト増は企業収益を圧迫しかねない。
(3)FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、海外からの資金流入を大きく左右する。しかし、世界的な利上げ環境下では新興国全体への資金配分が縮小するリスクもあり、格上げの恩恵が期待ほど大きくならない可能性も考慮すべきである。
(4)日本企業への影響:BOJの追加利上げが実現すれば円安是正に寄与し、ベトナムに進出する日本企業の現地コスト負担が相対的に軽減される。一方、ベトナム国内金利が連動して上昇すれば、現地での資金調達コストが増大するため、設備投資計画の見直しを迫られるケースも出てくるだろう。
世界の主要中央銀行が一斉に引き締めに転じる局面は、2022年以来の大きな転換点となり得る。ベトナム投資においては、SBVの政策対応と為替動向、そして原油価格の行方を三位一体で注視することが不可欠である。
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