こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
「なぜ今もFPTを持ち続けるのか」——ベトコムバンク系の大手ファンド運用会社VCBFが、この問いに正面から答えました。
VCBFとは、ベトコムバンク(VCB)傘下の投資ファンド管理会社で、ベトナムを代表する機関投資家の一つです。日本でいえばノムラアセットマネジメントに近いポジション、と言えばイメージしやすいでしょうか。その会社が年次総会を開き、2026年第1四半期のパフォーマンスと今後の投資戦略を公開しました。
まず数字が面白い
市場全体がズルズル下げていた局面で、VCBFの全ファンドがベンチマーク指数を大きく上回りました。
リーディングストック投資ファンド(BCF)は+0.3%を記録した一方、ベンチマークのVN100指数は-7.9%。差にして8.2ポイントです。グロース・エクイティ・ファンド(MGF)は+5.3%に対しVN70は-1%。戦略バランス投資ファンド(TBF)は+1.3%に対しベンチマークは-2.6%。アクティブ・インカム・インベストメント・ファンド(AIF)は+1.4%に対しVN指数は-7.6%。
4ファンドすべてが、揃ってアウトパフォームしました。こういう下げ局面でベンチマークを上回るのは本当に難しい。BCFに至ってはVN100が7.9%も下げた局面でほぼ横ばいを保ち、NAVは1兆5,210億VNDと2025年末比20%以上増加しています。市場が荒れた時こそ、運用哲学の差が出ると言いますが、まさにその通りの結果になりました。
VICを全売却した理由
総会では、VinFast親会社であるVingroupの株式を全売却しつつ、苦戦が続くハイテク大手FPTを保有し続けることへの疑問が投資家から相次ぎました。「VIC株を売買して高収益を上げているファンドもあるのに、なぜVCBFはもっとダイナミックにトレードしないのか」という声です。
これに対し、ポートフォリオ管理ディレクターのグエン・ズイ・アイン氏の答えは明快でした。「現在の評価水準ではVICを保有していない。ただし、VinFastの業績が改善し財務状況が回復すれば、再投資を検討する可能性はある」と。
感情でも諦めでもなく、純粋にバリュエーション判断ということです。今の値付けでは保有する根拠がない、それだけの話。逆に言えば、価値が戻ったと判断すれば再び入る可能性を残している。このシンプルさが、機関投資家の本質だと思います。
ではなぜFPTを持ち続けるのか
FPTはここ最近、世界のテクノロジーセクター全体の不透明感に引きずられ、株価が調整局面にあります。ポートフォリオに占めるFPT比率も、昨年末の約6%からBCFでは約4%前後に低下しました。ただしこれは売却したのではなく、ファンドへの大量資金流入によって相対的なウエイトが薄まった結果だと明かされています。
ファム・レ・ズイ・ニャン氏がFPT継続保有の根拠として挙げたのは、予想PERが約12倍という水準にあること、潤沢なキャッシュリザーブを持つこと、そしてソフトウェア輸出部門でインドの大手IT企業と比較しても依然として高い成長率を維持していること。さらに「強固なガバナンスと安定した成長見通し」という定性評価も加えています。
ベトナムの主要銘柄としてPER12倍が安いか高いかは見方が分かれます。ただ、ソフトウェア輸出という確かな成長ドライバーを持ちながらこの水準ということを、VCBFは「割安」と見ている。私もFPTは個人的に継続観察している銘柄の一つで、今回のVCBFの判断は非常に興味深く読みました。
3〜5年保有という哲学
もう一つ、今回の総会で語られた長期投資の哲学が印象的でした。
「なぜポートフォリオの回転率がそんなに低いのか」という投資家の問いかけに対し、グエン・ズイ・アイン氏はこう答えています。銘柄をポートフォリオに組み込む前に3週間から1ヶ月をかけて徹底的に調査する。その上で3〜5年の長期保有を目指す。設立当初から保有し続けている銘柄もある、と。
3〜5年です。短期トレードを繰り返してVIC株で収益を上げたファンドと同じ土俵で比較すること自体、土俵が違うということでしょう。調整局面でVCBFが全ファンドアウトパフォームできた一因も、この長期視点にあると私は見ています。事業の質と成長の持続性で銘柄を選ぶから、VICは評価が合わなくなった時点で迷わず売り、FPTは評価水準が魅力的なら揺れの中でも持ち続ける。
そういうことなんです。
FTSE昇格との接点
もう一点、FTSE昇格関連で面白い話が出ていました。海外パッシブ資金の流入は大型株に集中するため、中型株中心のMGFは恩恵が薄いのでは、という懸念です。投資部門のグエン・トリウ・ヴィン氏は「FTSEが作成した対象23銘柄にはMBB、ACB、STBも含まれており、MGF保有銘柄の一部は直接恩恵を受ける」と答えました。さらに将来的にMGFの保有銘柄がFTSE採用閾値を超えてくる可能性にも言及しています。
2030年のMSCI昇格を見据えてIPO市場が活況を呈し、上場企業数が増えていく——VCBFはそういう中期シナリオの中でポートフォリオを組んでいます。彼らが次の成長分野として挙げたのは、銀行、金融サービス(証券)、現代小売、建設・建築資材、グリーンエネルギーとグリーン輸送の5分野です。ハノイで13年ベトナム株を見てきた私の目には、これはまさに「ベトナムの次の10年」を意識したセレクションに映ります。
機関投資家の中期シナリオを読むことは、個人投資家が市場を俯瞰する上で、とても有効な練習になると私は思っています。今回のVCBF総会の開示は、その意味でも読みごたえのある内容でした。
いかがでしたでしょうか。今回のVCBFの投資戦略について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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