こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ハノイに住んでいると、Zaloが「アプリ」というより「インフラ」だと実感する瞬間が何度もある。
マンションの管理組合からのお知らせも、子どもの学校からの連絡も、近所のフォー屋さんの「今日は早じまい」も、全部Zaloで飛んでくる。レストランの予約確認、銀行の取引通知、行政からの案内まで。日本でLINEが「生活のインフラ」と言われるのとまったく同じ構図が、ここベトナムで起きている。そのZaloが、月間アクティブユーザー数8020万人を突破したと発表した。
8020万人、というのは少し立ち止まって考えてほしい数字だ。ベトナムの人口は約1億人。子どもや高齢者、スマートフォン非保有層を除いたデジタル人口のほぼ全員がZaloを使っている計算になる。もはや「使っていない人を探す方が難しい」アプリだ。
Zaloを運営するのはVNGコーポレーション(証券コード:VNZ)。ベトナムを代表するインターネット企業で、ゲーム・フィンテック・クラウドと幅広く事業を展開している。そのVNGの看板アプリがZaloであり、月間8020万人というユーザーベースは、競合が容易に追いつけない「堀」になっている。
今回発表された内容で注目したいのはユーザー数だけではない。1日あたりのメッセージ送信数が約21億件に達しているという数字もそうだが、それ以上に「AI機能の深化」の話だ。
Zaloは現在、メッセージの自動翻訳、音声入力、ビデオ通話への字幕追加といったAI機能を提供している。ユーザーの約30%がすでにこれらを日常的に使っているという。8020万人の30%というと、2400万人超。これは東京都の人口の倍近い規模のユーザーが、毎月Zalo上でAI機能を実際に活用しているということだ。
さらに今年4月には「OpenClaw」というオープンソースの自律型AIエージェントとの直接接続(Bot API)をサポートした。つまりZaloのチャット画面から、外部のAIエージェントをシームレスに呼び出せるようになったということで、これは単なる「チャットアプリのAI強化」とは一線を画す動きだ。WhatsAppやLINEに近い位置づけから、より高度なAIアシスタント基盤へと自己進化しようとしている。
ここで少し脱線するが、私がハノイで見ているベトナムのデジタル化の速さはかなり本物だと思っている。5年前、Zaloはメッセージアプリだった。今は電子政府サービスへのゲートウェイになりつつある。行政手続きの通知や公共サービスへのアクセスにZaloが使われ始めているのは、日本のマイナンバーカードとLINEを組み合わせたような話で、これが一民間企業のアプリ上で自然発生的に実現されているのが面白い。
Zaloが5月にシンガポールで発表した視覚障がい者向け技術ソリューションも、単なるCSR活動として見るべきではない。東南アジア全域でのブランド価値向上と、ASEAN市場へのプラットフォーム拡張を視野に入れた伏線だと私は読んでいる。
投資家としてVNGをどう見るかという話になると、率直なところ「難しい銘柄」だというのが正直な感想だ。Zaloという圧倒的なプラットフォームを持ちながら、その収益化モデルはまだ発展途上にある。ゲーム事業の国際展開も課題を抱えている。
ただ、8020万人のMAUと月21億件というメッセージ量は、将来的な広告・フィンテック・クラウドサービスへの収益化余地として見れば、今の株価水準が適正かどうかは継続的に観察する価値がある。
VNGがZaloのAIプラットフォーム化に本気で取り組んでいること、そしてベトナムのデジタル人口がほぼ全員Zaloを使っているという事実は、少なくとも「面白い会社だ」と思わせるには十分だ。
FTSEラッセルのセカンダリーエマージング昇格によって外国人機関投資家のベトナム市場への注目度が上がっていく中で、VNGのようなプラットフォーム企業がどう評価されていくかは、引き続き注視していきたいと思っている。
そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回のZalo・VNGの話について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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