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米国の最高裁判所(連邦最高裁)が「相互関税」に違憲判断を下してから4カ月。トランプ大統領は屈することなく、次々と新たな輸入関税措置を打ち出し、事実上の「関税の壁」を再構築しつつある。ベトナムを含む米国の主要貿易相手国は、法的根拠を変えながら形を変えて復活する米国の保護主義的通商政策に、改めて警戒を強めている。
最高裁が「相互関税」を違法と判断した経緯
トランプ大統領は2025年、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に、貿易相手国に対して一律の「相互関税(reciprocal tariffs)」を課す大統領令を発動した。これは、米国が特定の国から受けている貿易赤字や不公正な貿易慣行を「国家的緊急事態」と位置づけ、大統領権限で関税率を機動的に引き上げるという、これまでにない強硬な手法であった。
しかし米連邦最高裁判所は、この関税措置がIEEPAの本来の趣旨を逸脱しており、通商政策における議会の権限を大統領が不当に侵害しているとして、違憲・違法との判断を下した。米国憲法上、関税や通商に関する権限は本来、行政府ではなく連邦議会に属するという原則に基づく判断であり、トランプ政権にとっては大きな政治的・法的敗北となった。
それでも止まらない関税攻勢
ところがトランプ大統領は、この司法判断からわずか4カ月の間に、別の法的根拠を用いて新たな輸入関税を次々と導入している。IEEPAが使えないのであれば、通商拡大法232条(安全保障を理由とした関税)や通商法301条(不公正貿易慣行への対抗措置)といった、大統領により広範な裁量が認められている既存の法律を駆使する形で、実質的に同様の政策目標を追求しているとみられる。
これは、最高裁の判断によって「相互関税」という手法そのものは否定されたものの、トランプ政権が掲げる「米国第一主義」に基づく保護主義的な通商政策の方向性自体は何ら変わっていないことを示している。むしろ、法的な抜け穴を探しながら関税措置を再構築しようとする姿勢は、政権の通商政策に対する執念の強さを物語っていると言えるだろう。
ベトナムを含む貿易相手国への影響
ベトナムは近年、対米輸出が急拡大しており、米国はベトダムにとって最大の輸出先国のひとつとなっている。繊維・履物、家具、電子機器などの分野で、ベトナムは中国からの生産移転先(チャイナ・プラスワン)としての地位を確立してきた経緯がある。そのため、米国の関税政策の行方は、ベトナムの輸出企業やサプライチェーンに直接的な影響を及ぼす重要な変数である。
今回のように、最高裁判断後も米国が別の法的枠組みで関税措置を継続・強化する姿勢を見せていることは、ベトナムにとって「関税リスクが完全に払拭されたわけではない」という警戒感を強める材料となる。特に、中国製品の迂回輸出先としてベトナムが利用されているとの指摘に対して、米国が個別に対抗措置を講じる可能性は引き続き残されている。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場(VN指数)にとって、米国の通商政策の不透明感は依然として重要な下振れリスク要因である。特に、対米輸出比率の高い繊維・履物関連銘柄や、電子機器の受託製造を手掛ける企業、物流・港湾関連銘柄などは、関税措置の内容次第で株価が敏感に反応する可能性が高い。
一方で、ベトナムは2026年9月にFTSE(フッツィー)による新興市場指数への格上げが見込まれており、これが実現すれば海外資金の大規模な流入が期待される局面にある。米国の関税政策による短期的な下押し圧力があったとしても、格上げをにらんだ中長期的な資金流入トレンドは崩れにくいとの見方もある。むしろ、関税リスクが顕在化して株価が調整する局面は、中長期投資家にとって「押し目買い」のタイミングとなる可能性も否定できない。
日本企業にとっても、ベトナムを生産拠点としてグローバルサプライチェーンに組み込んでいる企業は多く、米国向け輸出品にどのような関税が課されるかは収益に直結する問題である。今後、通商法232条や301条を根拠とした個別品目への追加関税が発表される可能性もあり、ベトナム進出企業は米国側の政策動向を継続的にウォッチする必要があるだろう。
ベトナム経済全体としては、米中対立の激化と保護主義の高まりという世界的なトレンドの中で、「漁夫の利」を得られる局面と、「巻き込まれるリスク」がある局面の両面を抱えている。トランプ政権の関税政策の行方は、今後もベトナム経済・株式市場を占う上で最重要テーマのひとつであり続けるだろう。
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出典: 元記事












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