ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム共産党中央委員会は、放置されたまま長期間利用されていない土地や、使用開始が著しく遅れている土地に対し、より高い税率を段階的に適用する税制ロードマップの研究を関係機関に指示した。土地投機を抑制し、不動産市場を健全化することが狙いである。これはベトナムの不動産政策における大きな転換点となり得る動きであり、今後の税制改正の行方に市場関係者の注目が集まっている。
中央委員会が示した方針の中身
今回の指示は、ベトナム共産党の意思決定機関である中央委員会(Trung ương)が、税制および財政的手段を活用した不動産市場対策の一環として打ち出したものだ。具体的には、放置地(đất bỏ hoang)や、取得後に開発・使用が長期間先送りされている土地(đất chậm đưa vào sử dụng)に対して、通常よりも高い税率を段階的に適用する制度設計を、財務省をはじめとする関係省庁に検討させるという内容である。
ベトナムでは近年、都市部・地方を問わず、投資目的で土地や不動産プロジェクト用地を取得したまま、実際の開発やインフラ整備を進めず「塩漬け」にするケースが社会問題化してきた。こうした土地は、値上がりを待つ投機的な保有動機によって購入されることが多く、周辺地域の地価上昇を招く一方で、実需に基づく住宅供給や産業用地の確保を妨げる要因ともなっている。今回の方針は、こうした構造的な問題にメスを入れる狙いがあるとみられる。
なぜ今、土地投機対策が必要なのか
ベトナムでは、ハノイ(首都)やホーチミン市(旧サイゴン、南部最大の経済都市)を中心に、過去数年間で地価が急騰した地域が少なくない。特にインフラ整備計画の発表や行政区再編(省・市の統合再編)の噂が流れるだけで、周辺の土地価格が短期間で数倍に跳ね上がるという現象がたびたび報じられてきた。こうした地価高騰の背景には、実需とは無関係に土地を転売目的で保有し続ける投機的な取引が存在するとの指摘が根強い。
放置地や未利用地への課税強化は、こうした投機的保有のコストを引き上げることで、土地の売却や実際の開発利用を促す効果が期待される。ベトナム政府はこれまでも土地法(Luật Đất đai)の改正や、土地使用権に関する行政手続きの簡素化などを進めてきたが、税制面での投機抑制策は比較的手薄だった分野であり、今回の中央委員会の指示は税制を通じた市場健全化への本格着手を意味するものと受け止められている。
今後想定される制度設計の方向性
元記事の概要によれば、今回はあくまで「ロードマップ(lộ trình)の研究」を指示した段階であり、具体的な税率や施行時期はまだ確定していない。今後、財務省などの関係機関が、既存の非農業用土地使用税(thuế sử dụng đất phi nông nghiệp)や土地使用料制度との整合性を図りながら、段階的な税率引き上げの制度設計を進めるとみられる。
ベトナムでは不動産保有課税、いわゆる固定資産税に相当する包括的な税制が日本や欧米諸国と比べて未整備であり、これまで何度も「不動産税(thuế bất động sản)」の導入が議論されながら見送られてきた経緯がある。今回の放置地への重課税方針が、将来的なより包括的な不動産保有税導入への布石となる可能性も指摘されている。
投資家・ビジネス視点の考察
この政策方針は、ベトナム不動産市場全体、そして不動産デベロッパー株に対して中長期的に複雑な影響を与えると考えられる。短期的には、土地の塩漬けを常態化させてきた一部のデベロッパーや個人投資家にとってコスト増となり、保有土地の売却や事業化を急がせる圧力になるだろう。これは市場に一定の供給圧力を生み、短期的な地価調整要因となり得る。
一方で、中長期的には投機マネーが退潮し、実需に基づいた健全な取引が中心となることで、ベトナム不動産市場の透明性・持続可能性が高まるとの見方もできる。ホーチミン証券取引所(HOSE)やハノイ証券取引所(HNX)に上場する大手デベロッパー、例えばビングループ(ベトナム最大手のコングロマリット)系列の不動産事業や、ノバランド、ビナコネックスといった企業の株価動向にも、今後の税制詳細次第で影響が及ぶ可能性がある。特に、開発が遅れている大規模プロジェクトを多く抱える企業は、追加コスト発生のリスクを織り込む必要が出てくるかもしれない。
日本企業にとっても無関係な話ではない。ベトナムに進出し、工業団地や商業施設向けの土地を確保している日系企業、あるいは合弁事業を通じて不動産開発に関わる企業は、今後の税制改正の具体的な内容を注視する必要がある。特に、用地取得後すぐに着工できない事情がある場合、新たな税負担が発生するリスクを踏まえた事業計画の見直しが求められる可能性がある。
また、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連では、不動産市場の透明性向上や投機抑制はベトナム市場全体の「質」を高める要素として、海外機関投資家からの評価にプラスに働く可能性がある。市場の健全化は、短期的な投機マネーではなく、中長期的な実需に基づく資金流入を呼び込む土台となり得るため、格上げ後のベトナム株式市場・不動産市場双方にとって、地に足のついた成長を後押しする材料として注目に値するだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント