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ベトナム国内の個人投資家が本日、市場全体で1,863億8,000万ドンの買い越しを記録した。特に注目すべきは、マッチング取引(khớp lệnh、通常取引時間中の板寄せによる売買)だけを見ると2,070億ドンもの買い越しとなっている点だ。これは、株価が下落する局面で個人マネーが積極的に「押し目買い(bắt đáy、底値を拾う動き)」に動いたことを示しており、ベトナム株式市場における投資家心理の変化を読み解く重要な材料となる。
個人投資家の「押し目買い」とは何か
ベトナムの株式用語で「bắt đáy」とは、直訳すると「底を掴む」という意味であり、株価が調整局面(下落局面)に入った際に、これ以上下がらないと見込んで買いを入れる行動を指す。日本の投資家にとっての「押し目買い」や「逆張り買い」に近い概念だと理解してよいだろう。
今回のデータで特筆すべきは、個人投資家全体の買い越し額(1,863億8,000万ドン)よりも、マッチング取引だけの買い越し額(2,070億ドン)の方が大きいという点である。この差は、個人投資家が通常取引(マッチング取引)で積極的に買いを入れる一方、プットスルー取引(thỏa thuận、大口の相対取引)では売り越しに回った、あるいは他の投資主体との取引で差し引かれた結果と分析できる。つまり、市場の板の上では個人の「買いたい」という強い意欲が明確に表れていたということだ。
誰が売り、誰が買ったのか
ベトナム証券市場の売買動向を見る際は、個人投資家(nhà đầu tư cá nhân)、外国人投資家(nhà đầu tư nước ngoài)、自己勘定(tự doanh、証券会社の自己売買部門)、機関投資家という主要プレイヤーの資金の流れを総合的に見る必要がある。個人投資家が2,000億ドン規模の買い越しに動いたということは、裏を返せば外国人投資家や自己勘定部門が同規模程度の売りを出していた可能性が高い。ベトナム市場では伝統的に、外国人投資家が売り越し、個人投資家が買い支えるという構図がしばしば見られ、これは日本の東京証券取引所における「個人は逆張り、海外投資家は順張り」という傾向とも類似性がある。
ベトナム個人投資家層の特徴
ベトナムでは2020年以降、コロナ禍を経て個人の証券口座開設数が急増し、いわゆる「F0(エフゼロ、証券投資未経験から市場に参入した新規個人投資家を指すベトナム特有のスラング)」と呼ばれる層が市場の主要プレイヤーとして定着した。彼らはSNSやオンラインコミュニティでの情報交換を通じて、短期的な値動きに敏感に反応する傾向があり、株価が急落した局面で「割安」と判断すると一気に買いを入れる行動パターンが特徴的だ。今回の2,000億ドン規模の買い越しも、こうした個人層の厚みと機動力を象徴する動きと言えるだろう。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の個人投資家による大規模な買い越しは、短期的にはベトナム株式市場(VN-Index、ホーチミン証券取引所の代表指数)の下値を支える要因となった可能性が高い。特に外国人投資家の売り圧力が続く局面において、国内個人マネーの厚みが市場のクッション役を果たしている構図は、ベトナム市場特有の需給バランスとして今後も注視すべきポイントである。
また、FTSEラッセル(FTSE Russell)による新興国市場(エマージング市場)への格上げ判断が2025年9月に予定される中、外国人投資家の動向にはこれまで以上に市場の注目が集まっている。仮に格上げが実現すれば、パッシブファンドを中心とした数十億ドル規模の資金流入が期待される一方、格上げ前の期待先行局面では利益確定売りやポジション調整による一時的な変動も起こりやすい。今回のような個人投資家の押し目買いは、まさにそうした外国人売りの受け皿として機能している可能性があり、ベトナム市場の「地力」を測る指標としても興味深い。
日本からベトナムに進出する企業や、ベトナム株式市場への投資を検討する日本の個人投資家にとっても、この個人投資家の動向は無視できない要素だ。ベトナムでは政府系企業(国有企業)の民営化・上場や、不動産、銀行、消費財セクターの大型銘柄が個人投資家の主要な投資対象となっており、押し目買いの動きが強まるセクターを把握することで、市場全体のセンチメントを先読みするヒントが得られる。今後もベトナム株式市場では、個人・外国人・自己勘定という3者の資金フローのせめぎ合いが続くと見られ、FTSE格上げの行方と合わせて、引き続き注意深く追っていく必要があるだろう。
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出典: 元記事












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