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ベトナム政府が再始動を決めた原子力発電計画において、深刻な人材不足という課題が浮き彫りになっている。2030年までに稼働予定のニントゥアン第1・第2原子力発電所(ニントゥアン省=ベトナム中南部の沿岸地域)だけで、発電所の直接運転に約3,900人の専門人材が必要になると試算されており、周辺産業まで含めると数万人規模の人材育成が急務となっている。原子力という高度な技術分野において、ベトナムが短期間でこれだけの専門人材をどう確保するのか、政府・産業界・教育機関を巻き込んだ総力戦が始まろうとしている。
ニントゥアン原発計画、再始動の経緯
ニントゥアン省における原子力発電所建設計画は、もともと2000年代後半から日本(ニントゥアン第2)とロシア(ニントゥアン第1)の協力のもとで進められてきた歴史ある計画である。福島第一原子力発電所事故(2011年)の影響や財政負担への懸念から、2016年にベトアム国会(国会=ベトナムの最高立法機関)が計画の一時停止を決議した経緯がある。しかし、近年の電力需要の急増、製造業の外国直接投資(FDI)拡大、そして再生可能エネルギーだけではベースロード電源を安定的に確保できないという現実的な判断から、ベトナム政府は2024年以降、原子力発電計画の再開を正式に決定した。2030年までの稼働開始という極めてタイトなスケジュールが設定されており、国家的な最優先プロジェクトの一つとして位置付けられている。
3,900人規模の専門人材が必要という現実
今回明らかになった試算によれば、ニントゥアン第1・第2の両原発が稼働する2030年時点で、発電所の直接運転だけで約3,900人の人材が必要になるという。これには原子炉運転員、放射線管理の専門家、保守・保全技術者、安全管理担当者などが含まれる。さらに、発電所本体の運転要員だけでなく、原子力規制当局の審査官、放射性廃棄物管理の専門家、大学・研究機関での教育・研究人材、関連する部品・資機材のサプライチェーンを支える技術者など、周辺分野まで含めれば必要人材は数万人規模に膨れ上がるとみられている。ベトナムはこれまで原子力発電の商業運転経験がなく、ゼロからこれだけの専門人材を育成しなければならないという点で、他の原発新興国と比較しても難易度の高い挑戦に直面している。
人材育成の具体策と国際協力への期待
ベトナム政府は、国内の大学における原子力工学関連学部・学科の新設や定員拡大、海外への留学生派遣、そして原発建設のパートナーとなる国(ロシア、日本、韓国、フランスなどが候補として取り沙汰されている)との人材育成協力プログラムの構築を急いでいる。特に日本は福島事故を経験した国として、安全文化や規制の在り方に関する知見を持っており、ベトナムにとって重要な協力相手となる可能性が高い。かつてニントゥアン第2の建設協力を担っていた経緯もあり、日本の原子力関連企業や研究機関、大学が改めて人材育成分野で存在感を示す可能性は十分にある。一方で、原子力人材の育成には最低でも数年から10年単位の時間がかかるとされ、2030年という目標年限との間には大きなギャップがあるとの指摘も専門家から出ている。
投資家・ビジネス視点の考察
この原子力発電計画の再始動は、ベトナムの電力インフラ関連銘柄にとって中長期的な材料として注目される。電力機器メーカーや建設・エンジニアリング関連企業(ベトナム国内では国営電力グループのEVN(ベトナム電力グループ)傘下企業や、PetroVietnam系列の建設会社などが関連するとみられる)にとって、原発建設・運転に伴う周辺需要は新たな収益機会となり得る。また、人材育成分野では教育関連企業や、技術者派遣・研修サービスを手掛ける企業にもビジネスチャンスが生まれる可能性がある。
日本企業にとっても、原子力関連の機器供給、安全システム、人材研修プログラムの提供といった形での参入余地は残されている。かつて日本がニントゥアン第2建設で協力していた実績を踏まえれば、日越間の原子力分野での協力再開は、両国関係の新たな柱となる可能性を秘めている。すでにベトナムに進出している日本の重電・エンジニアリング企業にとっても、今後の入札・協力案件の動向を注視する価値は大きい。
マクロ的な視点では、ベトナムが安定的なベースロード電源の確保に本腰を入れ始めたことは、今後も続く製造業FDI誘致競争において電力供給の安定性という重要な訴求材料を強化する動きだと評価できる。2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けても、電力インフラの安定性はマクロ経済の信頼性を測る一つの材料となり得るため、間接的にはベトナム株式市場全体への長期的な追い風要因の一つとして位置づけられよう。ただし、原発建設・人材育成には巨額の資金と長期間を要するため、短期的な株価材料としてよりも、5年〜10年単位の中長期テーマとして注視すべき案件である。
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出典: 元記事












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