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ベトナム政府関係当局は、現行の土地法(Luật Đất đai)の抜本的な見直しに向け、7つの政策方針グループからなる改正の方向性を提案した。土地利用計画の刷新、土地の割当・貸与および用途変更に関する制度の整備、そして土地収用・補償・支援・再定住の仕組みを「国家・住民・投資家の利益調和」の観点から改善することが柱に据えられている。不動産開発や工業団地整備、インフラ投資に直結するテーマだけに、ベトナム国内外の投資家から高い関心が寄せられている。
土地法改正が意味するもの
ベトナムでは土地は憲法上「全人民の所有に属し、国家が所有者代表として統一的に管理する」と定められており、私有制度を採らない社会主義国特有の土地制度が存在する。企業や個人が「所有」できるのは土地そのものではなく、あくまで「土地使用権(Quyền sử dụng đất)」であり、この使用権の設定・移転・収用・補償のルールを規定するのが土地法である。土地法は2013年に大幅改正されて以降、経済発展のスピードや都市化の進展、外国直接投資(FDI)の急増に制度が追いつかず、たびたび実務上の矛盾や紛争の温床になってきた。今回提案された7つの政策方針グループは、こうした積年の課題に対応するための包括的な見直しの第一歩と位置づけられる。
7つの政策方針グループの中身
今回明らかにされた概要によれば、改正の重点は大きく以下の分野に置かれている。第一に、土地利用計画(quy hoạch)制度の刷新である。中央・地方の各レベルでの計画策定プロセスの整合性を高め、計画変更の柔軟性と透明性を確保することが狙いとされる。第二に、国家による土地の割当(giao đất)、貸与(cho thuê đất)、および用途変更(chuyển mục đích sử dụng đất)に関する制度の整備であり、企業が工業団地や住宅開発、商業施設のために土地を取得する際の手続きの明確化・迅速化が期待されている。
第三の柱として特に注目されるのが、土地収用(thu hồi đất)、補償(bồi thường)、支援(hỗ trợ)、再定住(tái định cư)に関する制度の見直しである。ベトナムではインフラ開発や工業団地建設に伴う土地収用をめぐり、補償額の算定基準が市場実勢と乖離しているとの批判や、住民との補償交渉が長期化し事業が遅延するケースが後を絶たない。今回の方針では「国家・住民・投資家の利益を調和させる」という表現が明記されており、収用対象となる住民への補償水準の適正化と、事業者側のプロジェクト推進の円滑化を両立させる制度設計が模索されているとみられる。
これまでの経緯と背景
ベトナムでは近年、土地収用をめぐるトラブルが社会問題化する事例が相次いできた。補償額に不満を持つ住民の抗議や訴訟、あるいは逆に土地確保が進まずインフラ・工業団地プロジェクトが数年単位で遅延する事例も珍しくない。こうした状況は、外国企業にとっても工場用地や倉庫用地の取得リスクとして認識されており、日系企業を含む進出企業からも「土地取得のスピードと予見可能性の向上」を求める声が上がっていた。今回の政策方針は、こうした現場の課題を踏まえ、法制度の根本的な整備によって土地関連の紛争やプロジェクト遅延のリスクを低減させる狙いがあるとみられる。
投資家・ビジネス視点の考察
土地法改正の議論は、ベトナム株式市場において不動産デベロッパー株や工業団地開発関連銘柄に長期的な影響を与えるテーマである。土地の割当・貸与手続きの簡素化や用途変更の柔軟化が実現すれば、住宅・商業用地の開発サイクルが短縮され、ビングループ(ベトナム最大手のコングロマリット)やノバランド(大手不動産デベロッパー)、ベトナム最大級の工業団地運営会社であるKBCやIDICOといった企業の事業進捗にプラスに働く可能性がある。一方で、補償制度の厳格化・適正化は、土地収用コストの上昇という形で開発事業者の負担増につながる側面もあり、両面から市場への影響を注視する必要がある。
日本企業にとっても、この改正論議は無視できないテーマだ。ベトナムに進出する日系製造業の多くは工業団地内での用地取得・拡張を通じて事業を展開しており、土地収用や用途変更の手続きが明確化・迅速化されれば、新規進出や増設投資の意思決定がしやすくなる。逆に、制度整備の過程で一時的に手続きが停滞したり、既存の運用ルールが変更されるリスクもあるため、現地の法律事務所やコンサルタントを通じた最新動向のフォローが欠かせない。
マクロな視点では、ベトナムは2026年9月にFTSE(フッツィー)ラッセルの新興国市場指数への格上げが決定される見込みとなっており、これに向けて資本市場・不動産市場双方の制度整備が急がれている局面にある。土地法という不動産・インフラ投資の根幹を成す法制度の近代化は、外国人投資家の予見可能性向上という観点からも、格上げ実現の環境整備の一環として位置づけることができる。土地制度の透明性向上は、株式市場における不動産セクターの評価にも中長期的にプラス材料となり得るため、今後の法案審議の進捗は注視に値する。
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出典: 元記事












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