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ベトナム文化・スポーツ・観光省(Bộ Văn hóa, Thể thao và Du lịch)は、ベトナムの文化・歴史的価値を教育・普及する内容を持つゲームを開発・配信する企業に対し、法人税を最大2年間免除し、続く4年間は税額を50%減免するという、前例のない税制優遇策を提案していることが明らかになった。いわゆる「国産ゲーム(game Việt)」の育成を国家戦略として本格的に後押しする動きであり、急成長を続けるベトナムのデジタルコンテンツ産業にとって大きな転換点となる可能性がある。
提案の概要—対象となるのは「奨励分野」のゲーム
今回の税優遇策は、単なるゲーム産業全般への支援ではなく、対象を明確に絞り込んでいる点が特徴だ。教育的な要素を含み、ベトナムの文化・歴史的価値を国内外に広める内容を持つゲームの製造・開発事業から得られる所得が対象となる。具体的には、以下のような優遇措置が提案されている。
- 法人税を最初の2年間、全額免除
- その後の4年間は、納付すべき法人税額を50%減免
- 優遇の対象は「奨励分野(diện khuyến khích)」に該当するゲームの生産・開発活動から生じる所得に限定
これは、ベトナムの法人税制において通常適用される優遇税制(ハイテク分野や特定経済区での投資に適用される免税・減税スキーム)と同水準、あるいはそれに準ずる手厚い内容であり、ゲーム産業がこれまで受けてきた税制上の扱いとは一線を画すものとなる。
なぜ今、ゲーム産業への優遇なのか
ベトナムはここ数年、モバイルゲームの開発・配信国として世界的な存在感を強めている。「Flappy Bird」で知られるグエン・ハー・ドン(Nguyễn Hà Đông)氏の成功以降、ベトナムのゲームスタジオは海外市場、特に東南アジアや欧米圏への配信で実績を積み上げてきた。一方で、国内向けに自国の歴史・文化・伝統を題材とした「意義あるコンテンツ」としてのゲーム開発は、収益性の観点から後回しにされがちだったという課題が指摘されてきた。
文化・スポーツ・観光省としては、ゲームを単なる娯楽産業としてではなく、若年層への文化教育・歴史教育のツール、さらには「ソフトパワー」としての国家イメージ発信の手段として位置づけたい狙いがあるとみられる。日本においても、歴史・文化を題材にしたゲームコンテンツが海外での日本理解を促進してきた事例(戦国時代を扱う作品群など)があることを踏まえれば、ベトナム政府が同様の効果を自国コンテンツに期待しているのは自然な流れといえるだろう。
ベトナムのゲーム市場の現状
ベトナムはアジア太平洋地域でも有数のモバイルゲームユーザー大国であり、人口の若さとスマートフォン普及率の高さを背景に、市場規模は年々拡大を続けている。国内には数百社規模の中小ゲームスタジオが存在するが、その多くは海外向けのカジュアルゲーム開発・配信で収益を上げており、いわゆる「自国コンテンツ」の比重は限定的だった。今回の税優遇策が実現すれば、こうした構造に変化が生じ、国内需要に根差した「メイド・イン・ベトナム」コンテンツへの投資が活発化する可能性がある。
今後の見通し
現時点ではあくまで「提案」の段階であり、正式な法制化・施行には国会審議や関連省庁との調整、パブリックコメントなどのプロセスを経る必要がある。優遇税制の詳細な適用基準(「教育的内容」「文化的価値の普及」の具体的な定義や審査基準)についても、今後策定される政令・通達で明確化されるとみられる。実務上は、どのような審査機関がコンテンツの適格性を判断するのか、申請手続きの煩雑さがどの程度になるのかが、制度の実効性を左右する重要なポイントとなるだろう。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場において、ゲーム・デジタルコンテンツ関連企業は現状、上場銘柄として明確に存在感を示しているわけではないが、テクノロジー・通信セクター全体への波及効果という観点からは注目に値する。例えば、VNGコーポレーション(VNG Corporation、ベトナム最大手のインターネット・ゲーム企業の一つで「Zalo」運営元としても知られる)のような企業は、ゲーム事業を主力の一つとしており、今回のような税優遇策が正式に施行されれば、収益構造の改善につながる可能性がある。同社は米国市場への上場も模索してきた経緯があり、ベトナム国内での税制優遇が投資家からの評価にプラスに働く余地もあるだろう。
また、日本企業にとっても示唆に富むニュースだ。日本のゲーム会社の中には、ベトナムを開発拠点(オフショア開発)として活用する企業が増えており、人件費の優位性に加え、今後は税制面でのメリットも加われば、ベトナムでの開発・配信拠点としての魅力が一段と高まる可能性がある。特に、日本の歴史・文化コンテンツをベトナム市場向けにローカライズする、あるいは逆にベトナムの歴史・文化を題材にしたコンテンツで日越合弁のプロジェクトを立ち上げるといった、新たなビジネスチャンスも生まれ得るだろう。
マクロな視点では、ベトナムが2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、産業育成策・規制緩和策を次々と打ち出している流れの中に、本件も位置づけることができる。ゲーム・デジタルコンテンツ産業への優遇は直接的に格上げ審査基準(市場アクセス、決済インフラ、外国人投資家保護など)に影響するものではないが、ベトナム政府が新興産業への投資誘致・産業高度化に積極的である姿勢を国際社会にアピールする材料としては一定の効果を持つだろう。ベトナム経済全体としては、繊維・電子機器の組立加工に依存した従来型の成長モデルから、知的財産・コンテンツ産業といった高付加価値分野への転換を模索する動きの一環として、本件を捉えるべきである。
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出典: 元記事












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