ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
2025年7月17日、ベトナム最大の商業都市ホーチミン市(旧サイゴン、南部の経済中心地)で開催された「Tech59 Summit(テック59サミット)」において、IT人材ソリューション企業のEmbedIT(エンベッドアイティー)が、ベトナムのテクノロジー産業が抱える構造的課題に鋭く切り込む発言を行い、参加者の間で活発な議論を呼んだ。テーマはずばり「高度技術人材の不足」という、ベトナムのデジタル産業の未来を左右する根源的な問題である。
Tech59 Summitとは何か
Tech59 Summitは、ベトナムのテクノロジー業界における最新動向や課題を議論する場として企画されたカンファレンスであり、今回の開催地であるホーチミン市は、同国最大のIT・ソフトウェア産業集積地として知られる。同市には日系企業を含む多数の外資系IT企業が拠点を構え、オフショア開発やソフトウェア輸出の拠点として世界的に注目を集めてきた歴史がある。特に近年は、単なる「安価な労働力の供給地」という位置づけから脱却し、より高度な技術力・設計力を持つ人材輸出国へと転換しようとする機運が高まっている。今回のサミットは、まさにその転換点における議論の場となった。
EmbedITが指摘する「安全圏」からの脱却
サミットに参加したEmbedITは、ベトナムの技術者(エンジニア)たちが直面している問題として、「安全圏(コンフォートゾーン)」に留まりがちである点を明確に指摘した。具体的には、多くのベトナム人エンジニアが特定の狭い技術領域や、既存のシステムの一部分の実装・保守にのみ習熟し、システム全体のアーキテクチャ(設計思想・構造)を俯瞰し、自ら設計・掌握する能力を十分に育成できていないという課題である。
EmbedITの見解によれば、グローバルなデジタル未来を形作る主体となるためには、ベトナムの技術者は単なる「実装者」から「アーキテクト(設計者)」へと役割を進化させる必要がある。すなわち、与えられた仕様書通りにコードを書く受託開発型の人材ではなく、システム全体の設計思想を理解し、それを牽引できる高度人材への転換が急務であるというのが同社の主張だ。
高度技術人材不足という構造的課題
ベトナムは長らく、若く豊富な労働力人口と比較的低い人件費を武器に、グローバルIT企業のオフショア開発拠点としての地位を確立してきた。FPTソフトウェア(ベトナム最大級のIT企業グループFPTコーポレーションの中核事業)をはじめとする現地大手IT企業や、日本企業との合弁・受託関係を持つ企業も多く、日本のIT業界にとってもベトナムは重要なパートナー国である。
しかし、AI(人工知能)、クラウドアーキテクチャ、半導体設計、大規模分散システムといった高度領域における人材は、依然として供給が需要に追いついていないのが実情だ。ベトナム政府も国家戦略として半導体産業や高度IT人材育成を掲げ、教育機関との連携や海外企業誘致を進めているが、EmbedITが指摘するように、現場レベルでの「システム全体を掌握する力」の育成には、まだ多くの時間と投資が必要とされている。
投資家・ビジネス視点の考察
この人材課題は、ベトナムに進出する日本企業やIT関連投資家にとっても無視できないテーマである。まず、ベトナム証券市場においては、FPTコーポレーションをはじめとするIT関連銘柄が個人投資家・機関投資家双方から高い関心を集めており、同国のテクノロジー人材の質の向上は、これら企業の中長期的な成長ストーリーの根幹に関わる。もし高度人材の育成が進めば、ベトナム企業がより付加価値の高い設計・コンサルティング領域に進出し、単純な受託開発以上の収益性を確保できる可能性が高まる。
また、日本企業にとっても、ベトナムを単なる「安価な開発拠点」としてではなく、「共同でシステムを設計するパートナー」として捉え直す転換点が近づいていると言える。日本国内のIT人材不足は深刻であり、今後もベトナム人技術者への依存度は高まる見込みだが、その際に求められるのは実装力だけでなく、上流工程を担える設計力である。EmbedITのような人材ソリューション企業の台頭は、まさにこの需要に応えるものであり、日本企業がベトナムパートナーを選定する際の重要な判断材料になるだろう。
さらに、2026年9月に決定が見込まれるFTSEラッセルによるベトナム株式市場の新興市場指数への格上げも、この文脈と無関係ではない。市場格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速し、IT・ハイテク関連企業への注目度も一段と高まる可能性がある。その際、人材の質という「見えざる資産」を強化できているかどうかが、個別企業の株価評価やバリュエーションを左右する要因になり得る。ベトナム経済全体が「労働集約型」から「知識集約型」へと移行するトレンドの中で、今回のTech59 Summitでの議論は、その転換の一断面を象徴する出来事として位置づけられる。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント