FPT株式会社(FPT)企業分析レポート – 2025年8月版【ベトナム株】

今朝、ハノイのオフィスに向かう途中、FPT本社の前を通りかかりました。相変わらず多くの社員が出入りしていて、ベトナムIT業界の勢いを肌で感じています。

ところで、最近投資家の方々から「FPTってどうなんですか?」という質問をよくいただくんです。確かに、ベトナム株投資を考える上でFPTは避けて通れない銘柄の一つですよね。

FPTは1988年に設立されたベトナムを代表するIT企業で、現在では東南アジア最大級のITサービス企業に成長しています。主力事業はIT、通信、教育の3本柱で構成されており、特にソフトウェア開発やシステム・インテグレーション、デジタル変革(DX)支援などで強みを発揮しています。

現在の株価は126,000VND、時価総額は約1,866億VNDという規模感です。これは日本円にすると約8,300億円程度になりますから、相当大きな企業だということがお分かりいただけると思います。

目次

基本情報

会社名: CONG TY CO PHAN FPT (VN)
英語名: FPT CORPORATION (EN)
証券コード: FPT
設立日: 1988年9月13日
株式会社化: 2002年3月
上場日: 2006年12月13日

所在地: 10 Pham Van Bach Str., Dich Vong Ward, Cau Giay Dist., Ha Noi
電話: (84-24) 7300 7300
FAX: (84-24) 3768 7410
URL: http://www.fpt.com
Email: ir@fpt.com

株式情報(2025年7月15日現在)

資本金: 14,813,301,220,000 VND
流通株式数: 1,481,330,122 株
株価(終値): 126,000 VND
時価総額: 186,647,595,372,000 VND
外国人保有率: 41.00%(2025年7月15日現在)

財務データ(単位:100万VND、期末時点の株価のみ1,000VND)

損益計算書データ

年度2022202320242025/Q12025予想
流動資産30,937,71136,705,75245,535,94346,075,511N/A
非流動資産20,712,69323,577,07626,464,05327,922,162N/A
資産の部51,650,40460,282,82871,999,99673,997,673N/A
負債の部26,294,27930,349,81636,272,45636,101,018N/A
資本の部25,356,12529,933,01135,727,54037,896,655N/A
売上高44,009,52852,617,90162,848,79416,058,14174,508,000
営業利益6,794,5578,451,62710,508,3472,595,125N/A
税引前利益7,662,2839,203,00611,069,6663,024,69413,332,000
税引後利益6,491,3437,788,0509,427,4232,595,567N/A
期末時点の株価76.9096.10152.50121.00135.90

各種財務指標

指標2022202320242025/Q12025予想
ROA(総資産利益率)%12.2113.9214.253.56N/A
ROE(株主資本利益率)%27.7628.1728.727.05N/A
BPS(1株あたり純資産)VND23,11423,57024,28725,761N/A
PBR(株価純資産倍率)倍3.334.086.284.70N/A
EPS(1株あたり利益)VND4,4294,6614,9441,4786,316
PER(株価収益率)倍17.3620.6230.85N/A21.52
NPM(当期利益率)%14.7514.8015.0016.16N/A
配当(VND)2,0002,0002,000N/AN/A
配当利回り(%)2.602.081.31N/AN/A

資本の変遷

時点資本金(10億VND)
2024年6月14,604,481
2024年10月14,710,692
2025年5月14,813,301

大株主構成(2025年6月19日現在)

株主分類保有株式数(株)保有率(%)
政府83,987,5115.67
国内789,997,26153.33
海外607,345,35041.00
金庫株なしなし

5%以上を保有する主要株主(2025年5月23日現在)

株主名保有株式数(株)保有率(%)
チュオン・ザー・ビン氏102,041,7106.89
国家資本投資経営総公社(SCIC)83,987,5115.67

子会社・関連会社(2024年12月31日現在)

会社名資本金(10億VND)保有率(%)
FPTソフトウェア6,250100.00
FPT教育4,000100.00
FPT情報システム(FPT IS)1,350100.00
スマート・クラウド1,000100.00
FPT投資1,000100.00

事業内容

企業概要

  • ベトナムを代表する情報技術(IT)最大手で、東南アジア最大のITサービス企業
  • IT、通信、教育の3部門を軸に事業を展開
  • 全国63省・市すべてに通信インフラを展開、ベトナムと海外を結ぶ通信容量4890Gpbsのケーブル、国内に4か所のデータセンターを保有(2024年末)
  • 国内に半導体チップ・先端技術研究開発(R&D)センター、半導体インキュベーションセンター、半導体スタートアップ向けインキュベーション施設を展開(2024年末)
  • ベトナムと日本に人工知能(AI)ファクトリー2か所を展開、2025年中に稼働予定
  • 世界で5000万人超のユーザーを獲得(2024年末)

部門別売上構成比(2024年)

  • IT: 62%
  • 通信: 28%
  • 教育・投資などのその他部門: 10%

IT部門(売上構成比62%)

ソフトウェア開発、システム・インテグレーション、ITサービス、デジタル変革(DX)、人工知能(AI)などを手掛ける

主要実績・計画

  • 2023年に初めて海外市場でのITサービス売上高10億USDを達成。日本、米州地域、アジア・太平洋地域が主要市場
  • 2024年11月、強力なライバルであるインド企業に競り勝ち、米国企業からデジタル変革プロジェクトに関する契約を獲得。契約額は2億2500万USDによる
  • IT大国として知られるインドの企業に競り勝ったことは、FPTだけでなくベトナムのIT産業にとっても重要な節目となる

海外市場向けITサービス売上構成

  • 自動車分野向け: 27%
  • 物流向け: 16%
  • エネルギー向け: 10%
  • 金融・銀行向け: 9%
  • その他: 38%

通信部門(売上構成比28%)

通信サービス(インターネット、データセンター、ビデオ会議、モノのインターネット=IoTなど)、有料テレビ(FPT Playをはじめとするインターネットをプラットフォームとしたサービス)、デジタル・コンテンツ・サービス(VNExpress、Ngoisao.netなどの人気情報サイト、オンライン広告、スマート広告システム)を提供

教育部門(売上構成比10%)

ベトナム国内28省・市に小中高校、短期大学「FPT Polytechnic」、FPT大学、国際ライセンスを持つプログラマーを養成する「FPT Aptech」、マルチメディアデザイナーを養成する「FPT Arena」などを展開(2024年末)

事業戦略・投資計画

2025年事業計画

業績目標

  • 売上高: 前年比+20%増の75兆4000億VND
  • 税引前利益: 同+21%増の13兆3950億VND
  • この目標を達成すれば、売上高の過去最高を更新し、5年連続で年間+20%超の成長を遂げる見通し

株主還元・資本政策

  • 2025年の現金配当は額面比20%(1株2000VND)で実施
  • 既存株主を対象に新株2億2200万株を発行する無償増資を行う。発行後の資本金は14兆7110億VNDから16兆9330億VNDへ引き上げられる

中長期戦略

  • 2027年までに日本市場による売上高を10億USDに増やす
  • 2030年の海外市場でのITサービス売上高50億USDを目指す
  • 2030年までに世界的なテクノロジー企業トップ50にランクインすることを目指す

M&A戦略(2023年以降の主要案件)

  • 2023年2月: 米インターテック・インターナショナル(Intertec International)のITサービス部門を買収
  • 2023年11月: 米市場で創業20年の歴史を持つITサービスプロバイダーであるカーディナル・ピーク(Cardinal Peak)を買収
  • 2023年12月: フランスに拠点を置く技術コンサルティング会社AOSIS社を買収
  • 2025年5月: ドイツのエネルギー分野に特化したITコンサルティング企業「デイビッド・ラム・コンサルティング(David Lamm Consulting)」を買収

5つの重点事業分野

半導体

  • 2023年11月、国家イノベーションセンター(NIC)および米国の非営利団体TreSemi(TreSemi)との間で、ベトナム半導体教育センター(VSHE)の設立に関する提携契約を締結
  • 半導体チップ事業を拡大、2030年までに1万人の技術者チームを養成

AI(人工知能)

  • 人材戦略として、2030年までにAIエンジニア5万人を養成し、50万人の労働者にAIに関するスキルと知識を提供することを目指す
  • 2023年10月: 米ランディングAI(Landing AI)と間で、AI開発とAI人材育成に関する戦略的協力覚書を締結
  • 2024年4月: 米エヌビディア・コーポレーション(Nvidia Corporation)との間で、包括的・戦略的協力に関する覚書(MOU)を締結
  • 2024年10月: シンガポール国立大学(NUS)コンピューティング学部との間でAI開発に関する協力覚書を締結

自動車

  • 自動車業界向け分野、特に自動車の設計部門を手掛ける企業の合併・買収を行う計画
  • また、自動車向けソフトウェアの開発を強化

デジタル変革

  • 全世界30都市・市場でデジタル変革推進に関する提携契約を締結(2023年末)
  • 2024年3月: ドイツのシーメンス(Siemens)との間でスマートシティやデジタル変革推進、半導体チップ製造、車載ソフトウェア開発などに関する提携覚書を締結
  • 2024年5月: 米アント・デジタル・テクノロジーズ(Ant Digital Technologies)との間で金融分野のテクノロジーソリューション事業提携に関する覚書(MOU)を締結

グリーン変革

  • 2020年2月: Carbon FX株式会社(東京都港区)との間でベトナムでのカーボンクレジットビジネスの発展促進に関する覚書(MOU)を締結
  • 2024年4月: 米国際開発庁(USAID)との間でクリーンエネルギーの促進に向けた「ベトナム低排出エネルギープログラムII(V-LEEP II)」に関する協力協定を締結

投資のポイント・リスク要因

強み

  1. 東南アジア最大のITサービス企業としての地位
  2. 海外展開の成功(2023年に海外ITサービス売上高10億USD達成)
  3. 多角化された事業ポートフォリオ(IT・通信・教育の3本柱)
  4. 政府のデジタル化政策の恩恵を受ける立場
  5. 強固な財務基盤(ROE28%超、営業利益率15%超)
  6. 積極的なM&A戦略による成長加速

リスク要因

  1. 人材確保競争の激化(IT人材の奪い合い)
  2. 為替変動リスク(海外売上高比率の高まり)
  3. 競合激化(インド系IT企業との競争)
  4. 技術革新への対応遅れのリスク
  5. 経済減速による企業のIT投資抑制

投資判断のポイント

  • 海外市場での更なる成長が株価上昇の鍵
  • AI・半導体などの先端技術分野での競争力
  • M&A効果の収益への反映度
  • 2025年の成長目標(売上高+20%増)達成度

まとめ

FPTは、ベトナムを代表するIT企業として確固たる地位を築いており、海外展開も順調に進展している。特に2024年に米国企業から大型契約を獲得したことで、グローバル市場での競争力を証明した。2025年も高い成長目標を掲げており、AI・半導体などの先端分野への投資も積極的に行っている。財務指標も良好で、長期的な成長が期待できる銘柄といえる。

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