朝のコーヒーと一緒にいつも飲んでいるヨーグルト、実はビナミルクの製品だったりします。ハノイのスーパーに行けば、必ずと言っていいほどビナミルクの青いパッケージが目に飛び込んできます。ベトナムに住んでいると、この会社がいかに生活に密着しているかを実感するんです。
昨日も近所のコンビニで牛乳を買ったのですが、やはりビナミルクでした。値段も手頃で品質も良いので、現地の人たちにとっては当たり前の選択肢になっています。
ビナミルクは1976年に設立されたベトナムを代表する国内最大の乳業企業です。正式名称は「ベトナム乳業株式会社」で、当初は食品総公社傘下の一企業としてスタートし、1993年にベトナム乳業へと名称変更、2003年に株式会社化を果たしました。
現在の株価は60,100VND、時価総額は約1,256億VNDという規模で、これは日本円換算で約5,600億円程度になります。外国人保有率が48%と高いのも特徴的で、国際的な投資家からの注目度の高さを物語っています。
基本情報
会社名: CONG TY CO PHAN SUA VIET NAM (VN)
英語名: VIETNAM DAIRY PRODUCTS JOINT STOCK COMPANY (EN)
証券コード: VNM
設立日: 1976年
株式会社化: 2003年11月20日
上場日: 2006年1月19日
所在地: Vinamilk Building, 10 Tan Trao Str., Tan Phu Ward, Dist. 7, Ho Chi Minh City
電話: (84-28) 5415 5555
FAX: (84-28) 5416 1226
URL: http://www.vinamilk.com.vn
Email: vinamilk@vinamilk.com.vn
株式情報(2025年7月15日現在)
資本金: 20,899,554,450,000 VND
流通株式数: 2,089,955,445 株
株価(終値): 60,100 VND
時価総額: 125,606,322,244,000 VND
外国人保有率: 48.00%(2025年7月15日現在)
財務データ(単位:100万VND、期末時点の株価のみ1,000VND)
損益計算書データ
年度 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025/Q1 | 2025予想 |
---|---|---|---|---|---|
流動資産 | 31,560,382 | 35,935,880 | 37,553,650 | 38,407,988 | N/A |
非流動資産 | 16,922,282 | 16,737,491 | 17,495,411 | 16,605,802 | N/A |
資産の部 | 48,482,664 | 52,673,371 | 55,049,061 | 55,013,790 | N/A |
負債の部 | 15,666,146 | 17,647,627 | 18,874,659 | 17,391,302 | N/A |
資本の部 | 32,816,518 | 35,025,744 | 36,174,403 | 37,622,489 | N/A |
売上高 | 59,956,247 | 60,368,916 | 61,782,610 | 12,934,505 | 63,134,000 |
営業利益 | 9,753,174 | 9,771,020 | 10,404,552 | 1,609,796 | N/A |
税引前利益 | 10,495,535 | 10,967,899 | 11,599,654 | 1,951,296 | 11,436,000 |
税引後利益 | 8,577,575 | 9,019,354 | 9,542,893 | 1,587,273 | 9,464,000 |
期末時点の株価 | 76.10 | 67.60 | 63.40 | 60.60 | 72.70 |
各種財務指標
指標 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025/Q1 | 2025予想 |
---|---|---|---|---|---|
ROA(総資産利益率)% | 16.85 | 17.83 | 17.72 | 2.88 | N/A |
ROE(株主資本利益率)% | 24.98 | 26.59 | 26.81 | 4.30 | N/A |
BPS(1株あたり純資産)VND | 15,702 | 16,759 | 17,309 | 18,002 | N/A |
PBR(株価純資産倍率)倍 | 4.85 | 4.03 | 3.66 | 3.37 | N/A |
EPS(1株あたり利益)VND | 3,632 | 3,796 | 4,022 | 674 | 4,035 |
PER(株価収益率)倍 | 20.95 | 17.81 | 15.76 | N/A | 18.02 |
NPM(当期利益率)% | 14.31 | 14.94 | 15.45 | 12.27 | 14.99 |
配当(VND) | 3,850 | 3,850 | 4,000 | N/A | N/A |
配当利回り(%) | 5.06 | 5.70 | 6.31 | N/A | N/A |
資本の変遷
時点 | 資本金(100万VND) |
---|---|
2016年8月 | 14,514,534 |
2019年9月 | 17,416,878 |
2020年10月 | 20,899,555 |
大株主構成(2025年6月19日現在)
株主分類 | 保有株式数(株) | 保有率(%) |
---|---|---|
政府 | 752,476,602 | 36.00 |
国内 | 334,300,229 | 16.00 |
海外 | 1,003,178,614 | 48.00 |
金庫株 | なし | なし |
5%以上を保有する株主(2025年5月27日現在)
株主名 | 保有株式数(株) | 保有率(%) |
---|---|---|
国家資本投資経営総公社(SCIC) | 752,476,602 | 36.00 |
F&N Dairy Investment & F&NBev Manufacturing Pte. Ltd. | 426,185,235 | 20.39 |
Platinum Victory Pte. Ltd. | 221,856,553 | 10.62 |
子会社・関連会社(2024年12月31日現在・保有率上位5社)
会社名 | 資本金(10億VND) | 保有率(%) |
---|---|---|
Driftwood Dairy(米国) | N/A | 100.00 |
ベトナム乳牛 | N/A | 100.00 |
Angkor Dairy(カンボジア) | N/A | 100.00 |
Lao Jargo Development | N/A | 87.32 |
Xiengkhouang(ラオス) | N/A | 68.94 |
事業内容
企業概要
前身は食品総公社傘下の一企業として1976年に設立された南部乳業・コーヒー社。1993年にベトナム乳業へ名称変更し、2003年にベトナム乳業株式会社へ改組。
主要事業分野
製品ライン
- 牛乳をはじめとした乳製品から豆乳、ジュースなどの清涼飲料、栄養食品まで多岐にわたる
- 飲用牛乳市場で最大のシェア4割を握る
生産・調達体制
- 直営酪農場15か所で乳牛4万頭を飼育するほか、原乳買取所を展開して酪農家から原乳を買い取っている
- 直営酪農場と提携先の酪農家の乳牛頭数は13万頭(2024年末)
- 原乳生産量は40万8000tに上る(2024年)
- 国内外で合わせて16か所(国内:13か所、カンボジア・ラオス・米国:3か所)のミルク工場を展開(2024年末)
畜産・食肉事業
- VNM傘下のベトナム畜産[VLC](Vilico)と双日株式会社(東京都千代田区)は北部紅河デルタ地方ビンフック省でベトナム最大規模の肉牛飼育・牛肉製品加工コンプレックスを展開
- 同コンプレックスは酪農場と牛肉加工工場から成るもので、飼育から加工販売まで一貫生産体制を構築(2024年末)
流通網
- 全国に20万か所の代理店からなる大規模な流通網を保有
- 直営店「ビナミルク・ザックモースアベト(Vinamilk Giac mo sua Viet)」を展開(2024年末)
市場シェア・海外展開
- 国内ミルク市場シェアトップを誇る
- 国内市場のみならず、海外63か国・地域にも出荷(2024年)
- これまでにタイ、フィリピン、中東諸国だけではなく、米国や日本など高い品質と厳しい基準の違いが求められる市場への輸出を実現している
- 売上高構成は国内が8割強、輸出と海外事業がそれぞれ1割弱を占めている(2024年)
環境・持続可能性への取り組み
- 2023年5月に北中部地方ゲアン省にある酪農場と牛乳加工工場が国際規格「PAS2060」に基づくカーボンニュートラル認定を取得
- 酪農場と牛乳加工工場でカーボンニュートラルを達成した国内初の乳製品メーカー
- 2023年7月に新たなコーポレートロゴを発表、旧ロゴは1976年の設立時から使われており、変更は47年ぶり
事業戦略・投資計画
2025年事業計画
業績目標
- 売上高: 前年比+4.3%増の64兆5050億VND
- 税引後利益: 同+2.4%増の9兆6800億VND
- 配当: 50%以上
主要投資プロジェクト
北部紅河デルタ地方ワンイエン省での乳製品工場案件(第1期)
- 着工: 2025年6月まで
- 稼働: 2027年1~3月期予定
- 第1期の投資総額: 2.1兆VND
タイニン省乳製品工場
- 2025年2月に同省人民委員会から投資方針決定を取得
- 商業運転開始: 2026年4~6月予定
投資のポイント・リスク要因
強み
- 圧倒的な国内市場シェア(飲用牛乳で4割のシェア)
- 垂直統合された生産体制(酪農から製造・販売まで一貫)
- 充実した流通網(全国20万か所の代理店)
- 安定した収益性(ROE26%超、営業利益率15%超)
- 高い配当利回り(6%超の水準)
- 海外展開の実績(63か国・地域に輸出)
リスク要因
- 原材料価格の変動(飼料価格、原乳価格の上昇)
- 競合他社の参入(外資系企業との競争激化)
- 消費者嗜好の変化(健康志向、代替製品の台頭)
- 為替変動リスク(海外事業拡大に伴う)
- 規制環境の変化(食品安全基準の厳格化)
投資判断のポイント
- 国内市場での圧倒的地位の維持
- 海外展開の成功度
- 新工場稼働による生産能力拡大効果
- カーボンニュートラル認定など環境対応力
- 配当政策の継続性
まとめ
ビナミルクは、ベトナム国内で圧倒的な市場シェアを持つ乳業最大手企業として、安定した収益基盤を確立している。直営酪農場から製造・販売まで一貫した垂直統合型のビジネスモデルにより、高い収益性と配当利回りを実現。海外展開も順調に進展しており、成長と安定性を両立した投資魅力の高い銘柄といえる。特に高配当を求める投資家にとって魅力的な選択肢となる。
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