こんにちは、ベトテク太郎です。昨日ハノイ市内を車で走っていると、街中でよく見かけるPetroVietnamのガソリンスタンドを数えてみたんですが、なんと30分の道のりで7軒も目に入りました。それくらいベトナム国民の生活に深く根ざしているのが、今日お話しするペトロベトナムガス(GAS)の親会社、ペトロベトナムグループなんです。
実際にベトナムで生活していると、このGAS株がいかにベトナム経済の根幹を支えているかを日々実感します。電気料金の値上がりや燃料価格の変動など、生活に直結する部分でこの会社の影響力を感じることが多いんですよね。
今回は、私の保有ポートフォリオでも重要な位置を占めるペトロベトナムガス株について、現地在住12年の視点から詳しく分析していきたいと思います。
ペトロベトナムガス(GAS)とは?基本情報をサクッと整理
まず基本的な情報から整理していきましょう。ペトロベトナムガス(証券コード:GAS)は、ベトナム最大の石油・ガス会社であるペトロベトナムグループ(PVN)の子会社として1990年に設立されました。
基本データ(2025年7月15日現在)
- 資本金:23兆4267億VND
- 流通株式数:23億4267万株
- 株価:67,700VND
- 時価総額:約158兆6000億VND
- 外国人保有率:1.00%
この規模感、正直言って日本の投資家の方には想像しにくいかもしれませんが、ベトナム株式市場の中では間違いなく最重要銘柄の一つです。時価総額だけで見ても、ベトナム株式市場全体の中で上位に位置する巨大企業なんです。
事業内容:ガス一筋の垂直統合型企業
ペトロベトナムガスの最大の特徴は、天然ガスの生産から販売まで一貫した体制を築いていることです。これは実際に現地で事業を見ていると本当によく分かります。
主な事業内容
- 天然ガスの生産・輸送・保管・加工・販売
- 液化石油ガス(LPG)の製造・販売
- 圧縮天然ガス(CNG)の製造・販売
- コンデンセート(軽質原油)の生産・販売
- ガス輸送サービス
興味深いのは、ベトナム国内のガス市場においてGASが持つ圧倒的なシェアです。天然ガス生産量の66%、そして小売市場では実に70%のシェアを握っています。これはもう独占に近い状況と言っても過言ではありません。
実際に私がホーチミン市やハノイの工業団地を訪問した際も、多くの製造業企業がGASからのガス供給を受けていました。特に繊維工場や食品加工工場では、ガスは不可欠なエネルギー源ですからね。
財務分析:安定感抜群の業績推移
ここからは数字で見てみましょう。正直言って、GAS株の財務データを見ると、その安定感に驚かされます。
売上高推移
- 2022年:100兆7235億VND
- 2023年:89兆9539億VND
- 2024年:103兆5641億VND
- 2025年Q1:102兆2220億VND(通年予想)
2023年に一時的に売上が減少したものの、2024年には過去最高水準まで回復しています。これはベトナム経済の回復基調と、エネルギー需要の増加を反映していると考えられます。
利益面での安定性 営業利益率を見ると、2022年が16.4%、2023年が14.4%、2024年が11.6%と、二桁台を維持している点は評価できます。これは原材料価格の変動があっても、ガス市場での圧倒的地位により安定した収益を確保できていることを示しています。
配当実績
- 2022年:3,600VND
- 2023年:6,000VND
- 2024年:0VND
- 2025年:0VND(予想)
2024年から配当を停止していますが、これは後述する大型設備投資のための資金確保が理由です。投資家としては少し残念ですが、長期的な成長のためと理解しています。
2025年事業計画:野心的な成長戦略
GASの2025年事業計画を見ると、その野心的な成長戦略が見えてきます。
2025年業績目標
- 売上高:74兆VND(前年比▲29%減)
- 税引後利益:5兆3000億VND(前年比▲50%減)
一見すると減収減益予想に見えますが、これには理由があります。実は2025年は大型インフラ投資の年として位置づけられており、短期的な収益よりも中長期的な成長基盤構築を優先している状況なんです。
製品別販売量目標
- 天然ガス:58億8000万m3
- LPG:190万トン
- コンデンセート:5万7000トン
これらの数字を見ると、特に天然ガス事業での大幅な拡大を目指していることが分かります。
注目すべき大型投資プロジェクト
ここからが投資家として最も注目すべき部分です。GASは現在、将来の成長を見据えた大型投資を積極的に進めています。
ディヤイLNG受入基地プロジェクト 場所:東南部地方バリア・ブンタウ省のカイメップ工業団地 投資規模:第2期工事で供給能力を大幅拡大 完成予定:2028年末 年間受入能力:100万トンから300万トンに増強
これは本当に大きなプロジェクトです。私も先日バリア・ブンタウ省を訪問した際に建設現場を見てきましたが、その規模の大きさに圧倒されました。完成すればベトナム南部のエネルギー供給の中核を担う施設になることは間違いありません。
ソンミーLNG受入基地案件 場所:南中部沿岸地方カビントアン省 米国企業との提携:GASが61%、米系企業が39%出資 準備段階:ほぼ完了、本格的な期待施設を強く望んでいる
このプロジェクトで興味深いのは、米国企業との合弁という点です。技術移転や運営ノウハウの獲得という面で、GASにとって大きなプラスになると期待しています。
現地から見たGAS株の投資妙味
ベトナムに12年住んでいて感じるのは、GAS株の投資妙味は数字だけでは表れない部分にもあるということです。
独占的地位の強さ 例えば、私が住むハノイでも、工業団地や大型商業施設のほとんどがGAS系列からのガス供給を受けています。新規参入の障壁が非常に高いエネルギー・インフラ事業において、この地位は簡単には揺らがないでしょう。
政府との密接な関係 ペトロベトナムグループの子会社ということもあり、ベトナム政府のエネルギー政策との整合性は抜群です。実際、再生可能エネルギーへの移行が進む中でも、天然ガスは橋渡し役として重要な位置づけを保っています。
東南アジア市場への展開余地 最近のニュースで注目しているのが、周辺諸国への事業展開です。カンボジア、ラオスといった近隣国でもエネルギー需要が急拡大している中、GASの技術力と資金力は大きなアドバンテージになるはずです。
リスク要因も正直にお話しします
もちろん、投資にはリスクもあります。現地に住んでいるからこそ見えるリスクもあるので、正直にお伝えしておきます。
エネルギー転換リスク ベトナム政府は2050年カーボンニュートラルを目指していますから、長期的には天然ガス需要の頭打ちリスクがあります。ただし、再生可能エネルギーが本格普及するまでの橋渡し役として、当面は需要が続くと見ています。
原材料価格変動リスク 国際的な天然ガス価格の変動は、どうしても業績に影響を与えます。特にロシア・ウクライナ情勢のような地政学的リスクは予測が困難です。
大型投資の回収リスク 現在進行中の大型LNG基地建設が計画通り進むかは要注意です。インフラプロジェクトは往々にして工期延長や建設コスト増加のリスクを抱えています。
投資判断:私の個人的見解
結論から言うと、私はGAS株を長期保有銘柄として位置づけています。現在のポートフォリオでも3.89%を占める重要な銘柄です。
投資の理由
- ベトナム経済成長の恩恵を確実に享受できる
- エネルギーインフラ株としての安定性
- 大型投資完了後の収益拡大期待
- 配当再開時の利回り妙味
投資タイミング 現在の株価67,700VNDは、大型投資による一時的な業績悪化を織り込んだ水準だと考えています。PBR2.43倍も決して高くありません。2026年以降の業績回復を見越した仕込み時期として、悪くないタイミングだと思います。
目標株価・保有期間 私個人としては、2027年頃に90,000VND前後を目指せると考えています。LNG基地が本格稼働し、配当も再開されれば、かなり魅力的な投資対象になるはずです。
まとめ:ベトナム経済の成長を支えるエネルギー株
ペトロベトナムガス(GAS)は、ベトナムという成長市場において、最も重要なインフラを提供している企業です。確かに短期的には大型投資による業績圧迫がありますが、それは将来の成長のための先行投資と捉えるべきでしょう。
ベトナムに住んでいると、この国のエネルギー需要がどれほど旺盛かを日々実感します。工場の新設、住宅開発、商業施設の拡大、どれをとってもエネルギー需要の増加につながっています。そしてその需要の中核を担っているのがGASなんです。
投資は自己責任ですが、ベトナム株への投資を検討されている方にとって、GAS株は検討に値する銘柄だと私は考えています。特に長期投資の観点から、ポートフォリオの一角を占める存在として、十分魅力的だと思います。
皆さんはどう思われますか?ベトナムのエネルギー事情や投資戦略について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。ベトナム株投資についてより詳しい情報が知りたい方は、メンバーシップでさらに深い分析をお届けしています。
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