こんにちは、ベトテク太郎です。今朝もいつものように近所のWinMartでコーヒーを買い、お昼はインスタント麺のOmachiを食べ、夜は家族でマサンの調味料を使って料理を作りました。そう、気がついてみると私の日常生活の中に、今日お話しするマサングループ(MSN)の商品が驚くほど深く浸透しているんです。
実際にベトナムで生活していると、マサングループという会社がこの国の消費者の生活にどれほど密着しているかを痛感します。街を歩けばWinMartやWinMart+の看板が目に入り、スーパーの棚にはマサンブランドの商品がずらりと並んでいます。
私のポートフォリオでも現在7.02%を占める重要な銘柄であるマサングループについて、現地在住12年の視点から詳しく分析していきたいと思います。この会社、数字だけ見ても面白いのですが、実際の事業を現地で目の当たりにするとさらに投資妙味が見えてくるんです。
マサングループ(MSN)とは?ベトナム消費者生活の中核企業
まずは基本情報から整理していきましょう。マサングループ(証券コード:MSN)は2004年に設立され、2009年に株式会社化されたベトナムを代表するコングロマリット企業です。
基本データ(2025年7月15日現在)
- 資本金:15兆1292億VND
- 流通株式数:15億1292万株
- 株価:74,500VND
- 時価総額:約112兆7134億VND
- 外国人保有率:26.00%
この外国人保有率26%という数字、これがマサングループの国際的な注目度の高さを物語っています。実際、韓国のSKグループが大株主として参画していることからも、その成長性が海外からも高く評価されていることが分かります。
事業ポートフォリオ:生活のあらゆる場面に浸透
マサングループの最大の魅力は、その事業の多様性と相互補完性です。現地で生活していると、この戦略の巧妙さが本当によく分かります。
主要事業セグメント
- 食品・飲料事業:消費者向け商品の製造・販売
- 畜産・飼料事業:豚肉を中心とした食肉事業
- 資源開発事業:タングステンなど希少金属の採掘
- 小売事業:WinMartチェーンの運営
- 金融・銀行事業:テクコムバンクなどへの投資
売上高構成比(2024年)
- 小売:4割
- 日用消費財(調味料・加工食品・飲料・パーソナルケア等):3割
- 飼料・食肉:2割
- 鉱産採掘:1割
この構成を見ると、消費者に直結する事業が全体の7割を占めていることが分かります。これはベトナムの経済成長と中間層拡大の恩恵をダイレクトに受けられる構造になっているということです。
現地で実感するマサンブランドの圧倒的存在感
数字だけでは伝わらないマサングループの真の強さは、現地での圧倒的なブランド浸透力です。
食品・調味料分野での支配的地位 私が毎週買い物に行くWinMartでも、調味料コーナーの約6割がマサンブランドで占められています。特に「Nam Ngu(ナムグー)」という魚醤ブランドは、ベトナム人なら知らない人はいないレベルの国民的ブランドです。
実際、私の妻(ベトナム人)に「調味料といえば何を思い浮かべる?」と聞いたら、迷わず「マサンのNam Ngu」と答えました。これほどまでに消費者の心に刻まれたブランドを持っている企業は、ベトナムではそう多くありません。
インスタント食品での独占的地位 インスタント麺「Omachi(オマチ)」シリーズも凄いです。コンビニエンスストアでも、スーパーでも、どこに行ってもOmachiが置いてあります。最近では「Lẩu tự sối(ラウ・トゥー・ソイ)」という火鍋風味や「Cơm tự chín(コム・トゥー・チン)」という炊飯不要のご飯まで開発しており、その商品開発力には驚かされます。
財務分析:安定成長を続ける収益構造
ここで数字を見てみましょう。マサングループの財務データは、まさに「安定成長企業」の特徴を示しています。
売上高推移
- 2022年:76兆1892億VND
- 2023年:78兆2516億VND
- 2024年:83兆1777億VND
- 2025年予想:82兆9210億VND
過去3年間で着実な成長を続けており、特に2024年の売上高は過去最高を更新しています。これはベトナム経済の回復と消費拡大を反映している結果だと考えられます。
利益面での安定性 営業利益率を見ると、2024年が7.4%と決して高くありませんが、これは小売事業の薄利多売構造を反映したものです。重要なのは安定性で、過去数年間大きなぶれがない点は評価できます。
ROE・ROAの推移
- ROE:2024年が10.82%と二桁台を維持
- ROA:2024年が2.90%と前年から改善
これらの数字は、資本効率性の向上を示しており、事業の収益性改善が進んでいることを表しています。
注目すべき2025年事業計画:さらなる成長への布石
マサングループの2025年事業計画を見ると、その野心的な成長戦略が見えてきます。
2025年全社業績目標
- 売上高:80兆5000億〜85兆5000億VND(前年比▲7%〜+14%)
- 税引後利益:4兆8750億〜6兆5000億VND(前年比+14%〜+52%)
売上高は若干保守的な目標設定ですが、利益面では大幅な改善を目指しています。これは収益性改善施策が本格的に効果を発揮することを見込んだものと考えられます。
事業別戦略
MCH(マサン消費財)部門
- 売上高目標:33兆5000億〜35兆5000億VND(+10%〜+15%)
- 調味料や即席食品の高付加価値化戦略を推進
- ホーチミン証券取引所への上場を完了
これは非常に注目すべきポイントです。消費財部門の独立上場により、投資家により分かりやすい投資対象になることが期待されます。
WCM(ウィンコマース)部門
- 売上高目標:35兆6000億〜36兆9000億VND(+8%〜+14%)
- 年末までに4500店舗体制を目指す
- 1日平均2店舗の新規出店を計画、うち1900店舗は農村地域
この店舗拡大戦略、実際に街を歩いていても実感できます。特に農村部での出店加速は、ベトナムの地方経済成長を見込んだ戦略的な動きだと考えています。
韓国SKグループとの提携:国際的な成長基盤
マサングループを語る上で欠かせないのが、韓国SKグループとの戦略的提携です。この提携、実は投資家にとって非常にポジティブな要素なんです。
SKグループの投資実績
- 2018年:MSN株9.5%を4億3000万USDで取得
- 2021年:子会社WCM株16.3%を4億1000万USDで取得
- さらにクラウン・エックス(The CrownX)株4.9%を3億4000万USDで取得
総額で約10億USD超の投資は、SKグループのマサングループに対する本気度を示しています。技術移転、経営ノウハウの共有、韓国市場へのアクセスなど、単純な資本参加を超えた戦略的価値があります。
実際、最近のマサン製品のパッケージデザインや マーケティング戦略を見ていると、韓国企業のノウハウが活かされているのを感じます。
新規事業・成長戦略:未来への種まき
マサングループが本当に面白いのは、既存事業での安定成長に加えて、将来に向けた新たな成長の芽を着実に育てていることです。
タングステンリサイクル工場建設 ベトナムを地域の中心地として発展させ、採掘活動への依存を減らす戦略的な投資です。中国を除くタングステンシェアで世界トップを目指すという野心的な目標も掲げています。
自社農場開発による複合型小売店構想 「Joins Pro」というランドリー店の導入など、単なる小売業を超えた生活サービス業への展開を図っています。これは消費者の利便性向上と収益多角化の両方を狙った巧妙な戦略です。
中国アリババグループとの提携 EC最大手アリババのLazadaプラットフォームとの提携により、小売事業の効率化・近代化を加速しています。
現地投資家の視点:MSN株の投資妙味
ベトナムに12年住んでいて感じるMSN株の投資妙味は、「生活実感に基づいた成長確信」です。
消費者ロイヤルティの高さ 例えば、私の近所のベトナム人ファミリーに「どこで買い物をするか?」と聞くと、ほぼ全員が「WinMart」と答えます。価格競争力、商品の品揃え、店舗の清潔さ、どれをとってもローカル小売店より優位に立っています。
ベトナム中間層拡大の恩恵 ベトナムの中間層は今後10年で現在の倍以上に拡大すると予想されています。そして中間層の拡大は、まさにマサンが得意とする「ちょっと良い商品」への需要拡大に直結します。
参入障壁の高さ 特に食品・調味料事業において、マサンが築き上げたブランド力と流通網は、新規参入者にとって非常に高いハードルになっています。
リスク要因:投資判断に必要な冷静な視点
もちろん、投資にはリスクもあります。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて、正直にお話しします。
競合他社の台頭 特に小売業においては、韓国のロッテマートやイオンなど外資系企業の進出が活発化しています。また、地場企業でもBig CやCo.opMartなど手強い競合が存在します。
原材料価格変動リスク 食品・飼料事業は原材料価格の影響を受けやすく、特に2022年から2023年にかけてのコモディティ価格高騰は業績を圧迫しました。
消費者の価格感応度 ベトナム消費者は依然として価格に敏感で、経済状況が悪化すれば安価な商品に流れる傾向があります。
投資判断:長期成長ストーリーへの確信
結論から言うと、私はMSN株を「ベトナム経済成長の恩恵を受ける代表的銘柄」として長期保有を継続しています。
投資の理由
- ベトナム中間層拡大のダイレクトな受益者
- 多角化された事業ポートフォリオによるリスク分散
- 強固なブランド力と流通網
- SKグループとの提携による成長加速
- 配当停止による成長投資の加速
目標株価・投資期間 現在の株価74,500VNDは、2025年の業績目標を考えると決して高くありません。2026年以降の利益成長とMCH部門上場による価値の明確化を考慮すると、90,000-100,000VND程度は十分視野に入ると考えています。
ポートフォリオでの位置づけ 私のポートフォリオでは「ベトナム内需株の中核」として7.02%を配分しています。VICやFPTなどの他の主力銘柄と合わせて、ベトナム経済の多角的な成長を取り込む戦略の一部として位置づけています。
まとめ:ベトナム消費社会の成長を支える企業
マサングループ(MSN)は、単なる食品会社ではありません。ベトナム人の生活に深く根ざし、同国の消費社会の発展をリードする存在です。
現地で生活していると、この会社がベトナム社会にとってどれほど重要な存在かを日々実感します。朝起きてからマサンの歯磨き粉で歯を磨き、マサンの調味料で料理を作り、WinMartで買い物をする。そんな生活が、多くのベトナム人にとって当たり前になっています。
そしてこの「当たり前」が、ベトナムの経済成長と共にさらに拡大していく。それがMSN株への投資理由です。
確かに短期的には競合他社の台頭や原材料価格変動などのリスクもありますが、長期的にはベトナム経済成長の最大の受益者になると確信しています。
投資は自己責任ですが、ベトナム株への投資を検討されている方、特に内需関連株に興味のある方にとって、MSN株は検討に値する銘柄だと思います。
皆さんはどう思われますか?ベトナムの消費市場の成長性や、マサングループの戦略についてぜひコメントで意見交換させていただければと思います。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細な財務分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的に更新情報をお届けしています。
コメント