こんにちは、ベトテク太郎です。先週末、家族でダナンに小旅行に行った際、迷わず選んだのがベトジェットエアでした。ハノイからダナンまで約2時間のフライトで、料金は往復一人当たり約200万VND(約1万円)。この価格でこのサービス品質を提供できるのは、やはりベトジェットエアの企業努力の賜物だと感じました。
機内では相変わらず客室乗務員の制服が話題になっていましたが、それ以上に印象的だったのは機内の清潔さと時間の正確性です。定時運航率78.7%という数字も、実際に利用してみると納得できます。
現地で生活していると、ベトジェットエアという会社がベトナムの航空業界、そして観光産業全体に与えている影響の大きさを実感します。今日は私のポートフォリオでも注目している銘柄の一つ、ベトジェットエア(VJC)について詳しく分析していきたいと思います。
ベトジェットエア(VJC)とは?ベトナム航空業界の革命児
まず基本情報から整理していきましょう。ベトジェットエア(証券コード:VJC)は2007年に設立され、2017年に上場したベトナム最大の格安航空会社です。
基本データ(2025年7月15日現在)
- 資本金:5兆4161億VND
- 流通株式数:5億4161万株
- 株価:97,500VND
- 時価総額:約52兆8071億VND
- 外国人保有率:11.00%
事業内容
- 旅客運送・貨物運送・機内販売・機材リース等
- 国内線44路線、海外線101路線の計145路線を運航
- 保有機材94機(エアバスA320型機、A330型機、A321ceo型機等)
圧倒的な市場シェア:ベトナム航空業界のガリバー
ベトジェットエアの最大の強みは、その圧倒的な市場支配力です。
主要運航実績(2024年)
- 運航便数:13万7539便
- 輸送旅客数:2590万人
- 輸送貨物量:8万1500トン
- 座席利用率:87%
- 定時運航率:78.7%
- 国内旅客輸送量シェア:44%で最多
この44%という国内シェア、実際に空港にいるとその圧倒的存在感を感じます。ノイバイ空港でもタンソンニャット空港でも、ベトジェットエアの赤い機体が滑走路を埋め尽くしている光景は圧巻です。
国営のベトナム航空と比較しても遜色ない、むしろ一部の指標では上回る実績を残していることは注目すべきポイントです。
財務分析:コロナ後の力強い回復軌道
ベトジェットエアの財務データを見ると、コロナ禍からの力強い回復が見て取れます。
売上高推移
- 2022年:40兆1419億VND
- 2023年:58兆3406億VND(+45.4%)
- 2024年:72兆0453億VND(+23.4%)
- 2025年Q1:17兆9522億VND(通年予想80兆6420億VND)
この成長率は本当に驚異的です。2023年から2024年にかけての回復速度は、ベトナムの国内旅行需要回復とインバウンド観光復活を如実に表しています。
収益性の改善
- 営業利益:2024年が31兆6067億VND(営業利益率4.4%)
- 税引後利益:2024年が14兆0400億VND
2022年、2023年と赤字が続いていましたが、2024年に大幅な黒字転換を果たしています。これは需要回復に加えて、コスト構造の改善努力が実を結んだ結果と考えられます。
財務健全性の向上
- ROE:2024年が8.67%
- ROA:2024年が1.51%
- BPS:31,607VND
これらの指標はまだ理想的な水準とは言えませんが、着実な改善傾向を示しており、今後の成長期待を裏付けています。
PBR・PER分析:割安性を数字で検証
投資判断において重要なのが、株価の割安性です。VJC株の現在の投資妙味を、PBRとPERの観点から分析してみましょう。
PBR(株価純資産倍率)分析
- 現在のPBR:2.89倍(2025年Q1時点)
- 過去3年推移:2022年3.98倍 → 2023年3.83倍 → 2024年3.16倍
PBRは着実に低下傾向にあり、これは株価の上昇を上回るペースで純資産が積み上がっていることを示しています。現在の2.89倍という水準は、成長企業としては決して高くない水準です。
同業他社と比較すると、アジアの航空会社の平均PBRは2.5-4.0倍程度で推移しており、VJCの2.89倍は適正範囲内と言えるでしょう。
PER(株価収益率)分析
- 2025年予想PER:25.03倍
PERについては、2022年と2023年は赤字のため算出不可能でしたが、2024年の黒字転換により2025年予想で25.03倍となっています。
この数字だけ見ると高く感じるかもしれませんが、航空業界、特に成長市場のLCCとしては妥当な水準です。重要なのは、VJCが本格的な収益回復フェーズに入ったばかりであり、今後の利益成長によりPERは急速に低下する可能性が高いことです。
割安性の判断
現在の株価97,500VNDは、PBR・PERともに過度に割高とは言えない水準です。特に2024年の業績回復と2025年以降の成長期待を考慮すると、むしろ投資妙味のある価格帯だと考えています。
ただし、航空業界特有の業績ボラティリティを考慮すると、PERによる評価よりもPBRや事業の本質的価値に注目した長期投資スタンスが重要でしょう。
事業戦略:2050年ネットゼロへの挑戦
ベトジェットエアの今後の戦略で最も注目すべきは、環境への取り組みです。
機材の近代化戦略
2024年8月時点で、A320型機やA321ceo型機、A321neo型機、A330型機など、燃料効率の高い新型航空機を合計100機保有しており、2050年までにネットゼロの実現を目指しています。
これは単なる環境配慮ではなく、燃料コスト削減という経営上の重要な戦略でもあります。燃料費が運航コストの大部分を占める航空業界において、燃費効率の改善は収益性向上に直結します。
2025年事業計画
- 日中韓印市場での展開強化
- ビジネスクラスや免税、両替、保険などサービスの多様化
- 主要空港でのデジタル化推進
- 貨物輸送事業の新規株式公開(IPO)実施計画
特に注目したいのが貨物事業のIPO計画です。これが実現すれば、VJCの企業価値向上と資金調達力強化の両方が期待できます。
現地で実感するベトジェットエアの影響力
数字だけでは表現できないベトジェットエアの真の価値は、現地での実体験にあります。
観光業界への貢献
私が住むハノイでも、ベトジェットエアの就航により地方都市へのアクセスが劇的に改善されました。以前は陸路で8時間かかっていたフエまでが、飛行機なら1時間20分です。しかも料金は片道150万VND程度と非常にリーズナブル。
これにより国内観光が活性化し、地方経済の発展にも大きく寄与しています。
国際線での競争力
海外旅行の際も、ベトジェットエアの国際線をよく利用します。ハノイ-シンガポール線、ハノイ-バンコク線など、主要都市への直行便が充実しており、価格競争力も抜群です。
特に東南アジア域内での移動において、ベトジェットエアの存在感は年々高まっています。
ブランディングの成功
賛否両論あったビキニスタイルの客室乗務員制服も、今では完全にブランドの一部として定着しています。これは単なる話題作りではなく、ブランド認知度向上の効果的な戦略だったと評価すべきでしょう。
国際的な提携・投資:成長加速の原動力
ベトジェットエアの成長を支えているのが、積極的な国際提携と投資誘致です。
主要な提携・投資案件
- 米ボーイング社:B737MAX型機200機の購入契約(総額250億USD)
- UAEのノヴス・アビエーション・キャピタル:航空機ファイナンス15機分で約410億円の提携
- 英ロールス・ロイス:エンジン「トレント7000」とメンテナンスサービス契約
- 仏エアバス:A330neo型機20機の購入契約(総額74億USD)
- 米ハネウェル:航空機向け電子機器と航空技術サービス提携
- UAE エミレーツ航空:貿易・観光促進に関する提携
これらの提携は、機材調達コストの最適化、技術力向上、路線ネットワーク拡大など、多方面でのシナジー効果が期待できます。
カザフスタンとの戦略的提携
2025年5月にはカザフスタンの航空会社カザク・エア(Qazaq Air)と戦略的パートナーシップを締結し、新たな航空会社「ベトジェット・カザフスタン(VietJet Qazaqstan)」を設立しました。
これは中央アジア市場への本格進出を意味する重要な戦略です。
投資リスクの冷静な分析
もちろん、航空株への投資にはリスクも伴います。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて、正直にお話しします。
燃料価格変動リスク
航空業界の宿命ともいえる燃料価格変動リスクは、ベトジェットエアも例外ではありません。原油価格の上昇は直接的に収益を圧迫します。
競合激化
国内ではバンブー航空、国際線では各国のLCCとの競争が激化しています。価格競争の激化は利益率低下のリスクがあります。
規制リスク
航空業界は規制が厳しく、安全基準の変更や環境規制の強化などが事業に影響を与える可能性があります。
経済情勢の影響
航空需要は景気動向に大きく左右されます。ベトナムや周辺国の経済情勢悪化は需要減少に直結します。
為替リスク
機材購入や燃料調達はドル建てが多く、VND安は収益を圧迫する要因となります。
投資判断:長期成長への期待
これらのリスクを踏まえた上で、私はVJC株を「アジア航空市場の成長を取り込む有望銘柄」として注目しています。
投資の理由
- ベトナム国内航空市場でのトップシェア
- 東南アジア観光市場拡大の受益者
- 機材近代化による収益性改善
- 国際提携による成長加速
- コロナ後の需要回復による業績改善
- PBR・PERともに割安水準での投資機会
懸念点
- 燃料価格変動への感応度の高さ
- 競合他社との価格競争激化
- 外国人保有率11%と海外投資家の関心がまだ限定的
- PER25倍は回復局面としては適正だが絶対水準では高め
目標株価・投資戦略
現在の株価97,500VNDは、2024年の業績回復とPBR・PER分析の結果を考慮するとまだ割安水準だと考えています。2025年の業績がさらに改善し、貨物事業のIPOが成功すれば、120,000-130,000VND程度は十分視野に入ると見ています。
ただし、航空株特有のボラティリティの高さを考慮し、ポートフォリオ全体の5%以下の配分に留めるのが適切だと判断しています。
まとめ:アジア航空市場の成長を支える企業
ベトジェットエア(VJC)は、単なる格安航空会社ではありません。ベトナムの観光産業発展を牽引し、東南アジア域内の人的交流を促進する重要な役割を担っています。
現地で生活していると、この会社がベトナム社会に与えている影響の大きさを日々実感します。国内旅行の活性化、地方経済の発展、国際的な人的交流の促進など、その貢献は計り知れません。
PBR・PER分析からも、現在の株価水準は投資妙味のある範囲にあることが確認できました。確かに航空業界特有のリスクや競合圧力はありますが、長期的にはアジア地域の経済成長と観光需要拡大の最大の受益者になると期待しています。
特に2025年以降、コロナ禍で抑制されていた国際観光需要の本格回復が見込まれる中、ベトジェットエアの成長ポテンシャルは非常に魅力的です。
投資は自己責任ですが、アジア航空市場の成長に賭けたい投資家にとって、VJC株は検討に値する銘柄だと考えています。
皆さんはどう思われますか?ベトナムの観光市場や航空業界の成長性について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細な業界分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的にお届けしています。
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