こんにちは、ベトテク太郎です。先月、ホーチミン市の新しいオフィスビルに移転した際、建物全体の空調システムの効き具合に感動しました。猛暑の中でも快適な室温を保つ高性能なシステムを見て「これはどこの会社が手がけたのだろう」と調べたところ、やはりREEグループの関連会社が施工を担当していました。
現地で生活していると、リー冷蔵電気工業(REE)という会社がベトナムのインフラ整備にどれほど深く関わっているかを日々実感します。空港ターミナル、高級オフィスビル、大型商業施設、さらには発電所まで、ベトナム経済の基盤となる重要なインフラの多くにREEの技術が使われています。
今日は私のポートフォリオでも注目している銘柄の一つ、リー冷蔵電気工業について現地在住12年の視点から詳しく分析していきたいと思います。
リー冷蔵電気工業(REE)とは?ベトナムM&E業界の絶対的リーダー
まず基本情報から整理していきましょう。リー冷蔵電気工業(証券コード:REE)は1977年に設立され、2000年に上場したベトナムの電気・空調工事施工(M&E)業界のリーディングカンパニーです。
基本データ(2025年7月15日現在)
- 資本金:5兆4165億VND
- 流通株式数:5億4165万株
- 株価:68,600VND
- 時価総額:約37兆1577億VND
- 外国人保有率:49.00%
主な事業内容
- 電気・空調工事施工(M&E)
- エアコン、空調機、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機等の製造・組立
- 住宅開発、オフィス・倉庫賃貸、工場リース
- 発電所や水道事業などのライフライン・インフラ関連事業への投資
売上構成比(2024年)
- 発電・水道:52%
- M&Eエアコン:34%
- オフィス賃貸:14%
この構成を見ると、REEが従来の電気・空調工事会社から、発電・水道事業を中核とする総合インフラ企業へと変貌していることが分かります。
財務分析:インフラ投資拡大による力強い成長
REEの財務データを見ると、積極的なインフラ投資による成長が顕著に表れています。
売上高推移
- 2022年:93兆7193億VND
- 2023年:85兆6992億VND(▲10.7%)
- 2024年:83兆8367億VND(▲2.2%)
- 2025年Q1:20兆6834億VND(通年予想97兆6300億VND)
2023年から2024年にかけて売上が減少していますが、これは大型プロジェクトの完工時期の影響と考えられます。2025年は再び成長軌道に回帰する見通しです。
収益性の改善
- 営業利益:2024年が24兆2829億VND(営業利益率29.0%)
- 税引前利益:2024年が26兆8761億VND(前年比▲20.8%)
- 税引後利益:2024年が23兆9600億VND(前年比▲14.0%)
営業利益率29%という数字は非常に高い水準です。これは発電事業などの高収益インフラ事業の貢献によるものと考えられます。
財務健全性
- ROE:2024年11.09%
- ROA:2024年6.72%
- BPS:47,673VND
これらの指標は健全な水準を維持しており、積極的な事業投資を行いながらも財務安定性を保っています。
PBR・PER分析:割安性を数字で検証
投資判断において重要な株価の割安性について、PBRとPERの観点から分析してみましょう。
PBR(株価純資産倍率)分析
- 現在のPBR:1.45倍(2025年Q1時点)
- 過去3年推移:2022年1.33倍 → 2023年1.12倍 → 2024年1.42倍
PBR1.45倍という水準は、インフラ関連企業としては非常に魅力的な水準です。特に豊富な不動産資産や発電設備などの有形資産を保有している企業としては、割安感があると判断できます。
PER(株価収益率)分析
- 2025年予想PER:16.14倍
PER16.14倍は、インフラ・公益企業としては適正な水準です。特に安定した配当を継続していることを考慮すると、長期投資に適した評価水準と言えるでしょう。
配当利回りの魅力
- 2024年配当:1,000VND(配当利回り約1.5%)
- 2023年配当:1,000VND
- 2022年配当:1,000VND
配当利回り1.5%は決して高くありませんが、3年連続で安定配当を維持している点は評価できます。インフラ企業としての安定性を重視する投資家には魅力的でしょう。
割安性の判断 現在の株価68,600VNDは、PBR・PERともに適正範囲内にあると判断します。特に2025年以降の発電事業拡大を考慮すると、投資妙味のある価格帯だと考えています。
事業戦略:再生可能エネルギーへの大胆な転換
REEの2025年以降の戦略で最も注目すべきは、発電事業への大胆な投資拡大です。
2025年業績計画
- 売上高:97兆6300億VND(前年比+16%)
- 親会社株主帰属利益:24兆2700億VND(前年比+22%)
- 配当:1,000VND維持(配当性向10%)
発電事業の大幅拡大 2025年中に総出力を+100MW、向こう3年間で+500MW増やすことで、2030年末までに2000-3000MWを目指しています。
主要発電プロジェクト
- スエンハイ団地発電所案件:南部メコンデルタ地方カチュビン省、出力48MW、投資総額2.2兆VND、稼働予定2026年1-3月期
- 第2チャクック水力発電所案件:南中部沿岸地方ダクガンガ省、出力30MW、年間発電量1億2050万kWh、投資総額1.2兆VND、商業発電予定2026年7-9月
再生可能エネルギーへの注力 火力発電事業から出資金を回収し、水力発電事業と風力発電事業への投資を増強。風力発電や屋根上太陽光発電などの再生可能エネルギー案件への投資を増強しています。
現地で実感するREEの技術力と存在感
数字だけでは表現できないREEの真の価値は、現地でのその圧倒的な技術力と存在感にあります。
空港・交通インフラでの実績 REEが担負った代表的な案件として、タンソンニャット国際空港T1旅客ターミナル、ノイバイ国際空港T2旅客ターミナル、ダナン国際空港旅客ターミナル、ラオス国会議事堂などが挙げられます。これらの施設を実際に利用してみると、その空調システムの精度の高さに驚かされます。
Reetechブランドの浸透 1997年に「Reetech」ブランドを投入し、中級冷蔵空調ブランドとして国内で広く認知されています。私の周りのベトナム人家庭でも、Reetechのエアコンを使っている家庭が多く、その品質の高さと手頃な価格が評価されています。
不動産開発での存在感 2001年より不動産分野へ進出し、賃貸オフィス物件に特化。好立地にあるBクラスの賃貸オフィスを展開し、リーズナブルな価格でAクラス並みの賃貸オフィスを提供する戦略を展開しています。
実際、私も以前REE Towerでの会議に参加したことがありますが、施設の充実度と立地の良さに驚かされました。
投資リスクの冷静な分析
もちろん、投資判断には冷静な分析が必要です。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて正直にお話しします。
電力政策変更リスク ベトナム政府のエネルギー政策変更により、発電事業の収益性に影響が生じる可能性があります。特に電力買取価格の変更は直接的な影響を与えます。
競合激化リスク M&E分野では外資系企業の参入が進んでおり、価格競争の激化が懸念されます。特に大型案件での受注競争は厳しくなっています。
不動産市況変動リスク オフィス賃貸事業は経済情勢の影響を受けやすく、コロナ禍のような外部要因により稼働率低下のリスクがあります。
プロジェクト遅延リスク 大型インフラプロジェクトは往々にして工期遅延や予算超過のリスクを抱えており、業績への影響が懸念されます。
金利上昇リスク 積極的な設備投資を行っているため、金利上昇により資金調達コストが増加するリスクがあります。
投資判断:インフラ成長と脱炭素化の恩恵を受ける優良銘柄
これらの分析を踏まえ、私はREE株を「ベトナムインフラ成長と脱炭素化トレンドの恩恵を受ける優良銘柄」として注目しています。
投資の理由
- ベトナムM&E業界での圧倒的な技術力と実績
- 発電事業への大胆な転換による成長加速
- 再生可能エネルギー事業への注力
- PBR1.45倍という割安な評価水準
- 安定した配当政策による株主還元
懸念点
- 電力政策変更による収益変動リスク
- 大型プロジェクトの工期遅延リスク
- 競合激化による利益率低下の可能性
目標株価・投資戦略 現在の株価68,600VNDは、PBR・PER分析の結果を考慮すると適正水準にあります。2025年以降の発電事業拡大が順調に進めば、80,000-85,000VND程度への上昇を期待できると考えています。
ポートフォリオでの位置づけ 私のポートフォリオでは「インフラ・公益系の安定銘柄」として位置づけており、ディフェンシブ性と成長性のバランスを重視した配分を行っています。
まとめ:ベトナムインフラ発展の中核を担う企業
リー冷蔵電気工業(REE)は、単なる空調工事会社ではありません。ベトナムの電力インフラを支え、都市開発を推進し、脱炭素社会への移行をリードする総合インフラ企業です。
現地で生活していると、この会社がベトナム社会にとってどれほど重要な存在かを日々実感します。快適なオフィス環境、安定した電力供給、効率的な空港運営など、現代社会の基盤となるインフラの多くにREEの技術が活かされています。
PBR・PER分析からも、現在の株価水準は長期投資に適した魅力的な範囲にあることが確認できました。特に2025年以降の発電事業拡大と再生可能エネルギーへの転換は、大きな成長機会となると期待しています。
確かに短期的には政策変更や競合リスクもありますが、長期的にはベトナムのインフラ需要拡大と脱炭素化トレンドの最大の受益者になると確信しています。
投資は自己責任ですが、ベトナムのインフラ成長に賭けたい投資家にとって、REE株は中核的な投資対象として検討に値する銘柄だと考えています。
皆さんはどう思われますか?ベトナムのインフラ市場や再生可能エネルギー事業の成長性について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細なインフラ・エネルギーセクター分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的にお届けしています。
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