こんにちは、ベトテク太郎です。先日、新しい投資信託を購入するためにベンゲ区にあるサイゴン証券の本店を訪れました。平日の午後にも関わらず、個人投資家で溢れるロビーと、最新のトレーディングシステムが稼働する様子を見て、ベトナム株式市場の成長とこの会社の存在感の大きさを改めて実感しました。
現地で投資活動を続けていると、サイゴン証券(SSI)という会社がベトナムの資本市場発展にどれほど重要な役割を果たしているかを日々実感します。個人投資家の株式投資から機関投資家向けのファンド運用まで、ベトナム証券業界の中心的存在として君臨しています。
今日は私のポートフォリオでも注目している銘柄の一つ、サイゴン証券について現地在住12年の視点から詳しく分析していきたいと思います。
サイゴン証券(SSI)とは?ベトナム証券業界の絶対的リーダー
まず基本情報から整理していきましょう。サイゴン証券(証券コード:SSI)は1999年に設立され、2007年に上場したベトナム最大手の独立系証券会社です。日本の大和証券グループを戦略的パートナーに持つことでも知られています。
基本データ(2025年7月15日現在)
- 資本金:19兆7386億VND
- 流通株式数:19億7187万株
- 株価:30,500VND
- 時価総額:約60兆1421億VND
- 外国人保有率:39.00%
主な事業内容
- ブローカレッジ業務、自己売買業務、ポートフォリオ管理業務
- 引受・発行代理業務、投資コンサルタント業務、証券保管・預り業務、その他
圧倒的な市場シェア
- 証取別のブローカー業務シェア(2025年1-3月期):ホーチミン証取9.93%(2位)、ハノイ証取7.32%(3位)
- 本店(ホーチミン市)のほか、全国に支店・出張所13か所を展開(2024年12月)
財務分析:証券市場拡大の恩恵を受けた力強い成長
SSIの財務データを見ると、ベトナム証券市場の拡大による恩恵が顕著に表れています。
売上高推移
- 2022年:63兆3582億VND
- 2023年:71兆5769億VND(+13.0%)
- 2024年:85兆2928億VND(+19.2%)
- 2025年Q1:21兆5927億VND(通年予想:約97兆VND)
この成長率は非常に印象的です。特に2024年の19.2%増という数字は、ベトナム証券市場の活況とSSIの市場シェア拡大を反映しています。
収益性の大幅改善
- 営業利益:2024年が49兆3957億VND(前年比+13.2%)
- 税引前利益:2024年が35兆4327億VND(前年比+41.0%)
- 税引後利益:2024年が28兆4511億VND(前年比+24.0%)
税引前利益の41%増という数字は特に注目すべき点です。これは投資収益の大幅な改善によるものと考えられます。
財務健全性
- ROE:2024年11.37%
- ROA:2024年3.99%
- BPS:12,952VND
これらの指標は健全な水準を示しており、積極的な事業拡大を行いながらも財務安定性を保っています。
PBR・PER分析:割安性を数字で検証
投資判断において重要な株価の割安性について、PBRとPERの観点から分析してみましょう。
PBR(株価純資産倍率)分析
- 現在のPBR:1.94倍(2025年Q1時点)
- 過去3年推移:2022年1.44倍 → 2023年2.58倍 → 2024年2.01倍
PBR1.94倍という水準は、証券会社としては妥当な範囲内です。特に成長性の高いベトナム証券市場でのポジションを考慮すると、適正な評価水準と判断できます。
PER(株価収益率)分析
- 2025年予想PER:16.96倍(2024年実績では16.76倍)
PER16.96倍は証券会社としては決して高くない水準です。特にベトナム証券市場の成長期待を考慮すると、妥当な評価と言えるでしょう。
配当政策の変化
- 2024年配当:0VND(無配)
- 2023年配当:1,000VND
- 2022年配当:1,000VND
2024年は無配でしたが、これは成長投資への資金需要を優先した結果と考えられます。2025年以降の配当復活が期待されます。
割安性の判断 現在の株価30,500VNDは、PBR・PERともに証券会社としては適正水準にあると判断します。特に2025年以降の業績拡大期待を考慮すると、投資妙味のある価格帯だと考えています。
事業戦略:デジタル化とファンド事業で次のステージへ
SSIの2025年以降の戦略は、デジタル化の推進とファンド事業の拡大を柱としています。
2025年業績目標
- 営業収益:97兆6950億VND(前年比+11%)
- 税引前利益:4兆2520億VND(前年比+20%)
主要戦略施策
個人顧客向け証券サービス拡大 市場シェアを7.69%まで拡大し、年末時点の証拠金取引向け貸付金残高は26兆VNDとする見込みです。これは個人投資家の信用取引需要拡大を見込んだ戦略的な取り組みです。
投資銀行業務の強化 M&Aや証券発行のアドバイザリーを中心に、収益目標を前年比+14%増の1059億VNDに設定しています。これはベトナム企業の資金調達需要拡大を見越した戦略です。
デジタル技術革新への投資 2025年1月には、傘下のSSIファンド運用会社(SSIAM)がブロックチェーン(分散型台帳)やデジタル技術向け投資プラットフォーム「SSIデジタルベンチャーズ(SSI Digital Ventures)」を設立。投資規模は2億USDで、最大5億USDまで拡大する見込みです。
また、SSIのグエン・スイン・アン会長が設立した「SSIデジタルテクノロジー(SSID)」は、ハノイ市ホアラックハイテクパーク内にある1.7haの用地でブロックチェーン・デジタル技術R&Dセンター案件を開始しています。
日本との戦略的提携:大和証券グループとの協力関係
SSIの成長を支える重要な要素の一つが、日本の大和証券グループとの戦略的提携です。
大和証券グループとの関係 大和証券グループが15.34%を保有する筆頭株主として、技術移転や人材育成、商品開発などで密接な協力関係を築いています。これにより、日本の先進的な証券業務ノウハウを導入し、サービス品質の向上を図っています。
海外投資家向けサービスの強化 民間独立系証券会社の先駆けとして知られ、海外投資家向けブローカー業務に強みを持っています。2015年9月には、定款の外国人投資家保有比率上限に関する規定を撤廃し、100%外資保有が可能な初の上場企業となりました。
現地で実感するSSIの革新性とサービス品質
数字だけでは表現できないSSIの真の価値は、現地での実体験にあります。
デジタル化の先進性 私自身もSSIのオンライントレーディングシステムを利用していますが、その使い勝手の良さと機能の充実度は他社を圧倒しています。リアルタイム情報、チャート分析、注文執行まで、すべてがスムーズに行えます。
投資商品の多様性 株式投資はもちろん、投資信託、債券、デリバティブまで幅広い投資商品を提供している点が魅力的です。特に最近設立された各種ファンドの運用成績は良好で、個人投資家からの注目も高まっています。
顧客サービスの質 支店でのコンサルティングサービスも非常にプロフェッショナルです。投資初心者から機関投資家まで、それぞれのニーズに応じた的確なアドバイスを提供しています。
投資リスクの冷静な分析
もちろん、証券会社への投資にはリスクも伴います。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて正直にお話しします。
市況変動リスク 証券会社の業績は株式市場の動向に大きく左右されます。ベトナム株式市場の調整局面では、取引量減少により収益が大幅に減少するリスクがあります。
競合激化リスク 外資系証券会社の参入や国内証券会社との競争激化により、手数料率低下や顧客獲得コスト増加のリスクがあります。
規制変更リスク ベトナム政府による金融機関への規制強化や、証券業務に関する規制変更が事業に影響を与える可能性があります。
信用リスク 信用取引の拡大に伴い、顧客の信用リスクや市場急変時の損失リスクが増加する可能性があります。
投資判断:ベトナム資本市場成長の中核銘柄
これらの分析を踏まえ、私はSSI株を「ベトナム資本市場成長の恩恵を最大限に享受できる中核銘柄」として注目しています。
投資の理由
- ベトナム証券業界でのトップクラスの市場地位
- 大和証券グループとの戦略的提携による競争優位性
- デジタル化とフィンテック投資による将来性
- PER16.96倍という妥当な評価水準
- ベトナム証券市場拡大の直接的受益者
懸念点
- 株式市況変動への高い感応度
- 競合激化による利益率低下リスク
- 2024年無配による配当収益の不安定性
目標株価・投資戦略 現在の株価30,500VNDは、2025年の業績目標を考慮すると適正水準にあります。ベトナム証券市場の長期的な成長を考慮すると、35,000-40,000VND程度への上昇を期待できると考えています。
ポートフォリオでの位置づけ 私のポートフォリオでは「ベトナム金融セクターの成長銘柄」として位置づけており、市場の成長サイクルに応じた戦略的な投資を行っています。
まとめ:ベトナム資本市場発展の中心的存在
サイゴン証券(SSI)は、単なる証券会社ではありません。ベトナムの資本市場発展を牽引し、個人投資家の資産形成を支援し、企業の資金調達を支える重要な金融インフラです。
現地で投資活動を続けていると、この会社がベトナムの金融市場にとってどれほど重要な存在かを日々実感します。個人の投資機会拡大から企業の成長資金調達まで、資本市場のあらゆる局面でSSIが重要な役割を果たしています。
PBR・PER分析からも、現在の株価水準は長期投資に適した魅力的な範囲にあることが確認できました。特に2025年以降のデジタル化推進とファンド事業拡大は、大きな成長機会となると期待しています。
確かに短期的には市況変動や競合リスクもありますが、長期的にはベトナム経済成長と資本市場発展の最大の受益者になると確信しています。
投資は自己責任ですが、ベトナムの資本市場成長に賭けたい投資家にとって、SSI株は中核的な投資対象として検討に値する銘柄だと考えています。
皆さんはどう思われますか?ベトナムの証券市場の成長性や金融セクターの将来について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。
この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細な金融セクター分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的にお届けしています。
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