ベトナム国際銀行(VIB)株投資ガイド:自動車ローン市場のリーダーを現地12年の経験で徹底解説

先月、新しい車の購入を検討する際に、ベトナム国際銀行(VIB)の自動車ローンについて調べる機会がありました。担当者から「弊行は自動車ローン市場でシェアトップを誇っています」と説明を受けた時、この銀行がベトナムの消費者金融分野でどれほど重要な地位を占めているかを実感しました。

現地で生活していると、VIBという銀行がベトナムの金融業界、特にリテールバンキング分野においてどれほど革新的な存在かが分かります。オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)との戦略的提携により急成長を遂げ、2024年末時点で約600万の顧客を確保する中堅銀行に成長しました。

今日は私のポートフォリオでも注目している銘柄の一つ、ベトナム国際銀行について現地在住12年の視点から詳しく分析していきます。

目次

ベトナム国際銀行(VIB)とは?リテールバンキングに特化した革新的中堅銀行

まず基本情報から整理していきましょう。ベトナム国際銀行(証券コード:VIB)は1996年に設立され、2020年に上場したリテールバンキングに強みを持つ民間銀行です。

基本データ(2025年7月15日現在)

  • 資本金:29兆7913億VND
  • 流通株式数:29億7913万株
  • 株価:19,350VND
  • 時価総額:約57兆6461億VND
  • 外国人保有率:4.00%

主な事業内容

  • 資本調達、貸付、保険販売、国内及び国際決済、証券業、その他の金融業

事業規模

  • 全国に本店1か所、支店66か所、出張所130か所を展開(2025年3月末)
  • 約600万の顧客を確保(2024年末)

事業特性:自動車ローン市場での圧倒的優位性

VIBの最大の特徴は、リテールバンキング(個人向けサービス)への特化と自動車ローン市場での圧倒的な地位です。

自動車ローン市場でのリーダーシップ 主力商品は住宅ローンと自動車ローンで、自動車ローン市場でシェアトップを誇ります。2024年末時点のリテール部門(個人事業主・個人)向けの貸付割合が80%で業界トップです。

バンクアシュアランス事業の成功 2015年からプルデンシャル・ベトナム(Prudential Vietnam)との間でバンクシュアランスに関する事業提携契約を締結しており、預金者や融資先などの取引先向けにプルデンシャル・ベトナムの代理販売を行っています。バンクシュアランスによる生命保険料収入で業界トップのシェアを占めています。

売上構成比の特徴

  • 利息関連収入:約85%
  • 手数料・サービス収入:約15%

この構成は典型的な商業銀行の収益構造を示しており、貸出業務を中核とした安定したビジネスモデルです。

CBAとの戦略的提携:成長の原動力と新たな転換点

VIBの発展において重要な役割を果たしてきたのが、オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)との戦略的提携です。

提携の経緯 1996年の設立で、2010年にオーストラリアの大手銀行であるオーストラリア・コモンウェルス銀行(Commonwealth Bank of Australia=CBA)が資本参加し、戦略的パートナーシップ契約を締結。以後、同行からの支援を受けていました。

CBAの段階的撤退 2024年7月時点でCBAによるVIB株保有比率は19.84%でしたが、CBAが撤退計画の一環として2024年9月から10月にかけて相対取引を通じてVIB株を売却し、VIB保有率を4.7%に引き下げました。CBAが売却したVIB株は、ビー会長をはじめとする同行役員とコネクションがある会社や、それらの役員の家族が買い取りました。

新たな戦略的パートナー探索 CBA撤退により、VIBは新たな戦略的パートナーを模索する計画を表明しています。これは今後の成長戦略において重要な要素となります。

財務分析:着実な成長を続けるリテール特化銀行

VIBの財務データを見ると、リテールバンキングに特化した着実な成長が見て取れます。

主要財務指標の推移

  • 資産の部:2024年49兆3158億VND(前年比+20.4%)
  • 貸金:2024年27兆6308億VND(前年比+16.8%)
  • 貸付金:2024年31兆8316億VND(前年比+21.5%)
  • 資本の部:2024年4兆1862億VND(前年比+10.3%)

この成長率は非常に印象的で、特に貸付金の21.5%増という数字は、自動車ローンを中心とした個人向け融資の好調を反映しています。

収益性の改善

  • 業務利益:2024年2兆569億VND(前年比▲7.2%)
  • 税引前利益:2024年9004億VND(前年比▲15.9%)
  • 税引後利益:2024年7204億VND(前年比▲15.9%)

2024年は利益面で前年比減となっていますが、これは引当金の積み増しや一時的な費用増加が要因と考えられます。

財務健全性指標

  • ROE:2024年18.06%
  • ROA:2024年1.60%
  • LDR(貸出預金比率):115.20%

ROE18.06%は非常に高い水準で、資本効率性の良さを示しています。LDR115%は積極的な貸出姿勢を表しており、成長市場での事業拡大を重視している姿勢が伺えます。

PBR・PER分析:割安性を数字で検証

投資判断において重要な株価の割安性について、PBRとPERの観点から分析してみましょう。

PBR(株価純資産倍率)分析

  • 現在のPBR:計算値が不適切なため、適正な評価が困難

財務データに何らかの計算エラーがあると思われますが、一般的にベトナムの銀行株のPBRは1.5-3.0倍程度が妥当な範囲です。

PER(株価収益率)分析

  • 2025年予想PER:7.56倍

PER7.56倍は銀行株としては非常に魅力的な水準です。特に高いROEと成長性を考慮すると、明らかに割安な評価と判断できます。

配当利回り

  • 2024年配当:700VND(配当利回り約3.6%)
  • 2023年配当:1,250VND
  • 2022年配当:1,500VND

配当は年々減少していますが、これは成長投資を優先している結果と考えられます。それでも3.6%の利回りは魅力的な水準です。

割安性の判断 現在の株価19,350VNDは、PER7.56倍、ROE18%という指標から見て、明らかに割安水準にあると判断します。特に2025年以降の業績回復期待を考慮すると、非常に魅力的な投資機会です。

事業戦略:顧客基盤拡大とデジタル化で成長加速

VIBの2025年以降の戦略は、顧客基盤の大幅拡大とサービス品質向上を柱としています。

2025年業績計画

  • 税引前利益:1兆1153億VND(前年比+22%)
  • 総資産:60兆3500億VND(前年比+22%)
  • 貸付金残高:39兆5800億VND(前年比+22%)
  • 資金調達残高:37兆7300億VND(前年比+26%)
  • 不良債権比率:3.0%未満

資本増強計画 既存株主を対象に新株4億1700万株を発行する無償増資を行います。幹部社員へのインセンティブ(ESOP)として新株780万株も発行。発行後の資本金は29兆7910億VNDから34兆400億VNDへと引き上がる見込みです。

顧客基盤拡大目標 2026年までに顧客ベースを1000万顧客に増やす野心的な目標を設定しています。これは現在の600万顧客から約67%の増加を意味します。

デジタル化戦略 リテールバンキング、また、資産の質の改善に引き続き注力する方針を表明しており、海外からの資金調達を強化するなどして資金源を多様化することにより、資金調達コストを引き下げる計画です。

現地で実感するVIBの革新性とサービス品質

数字だけでは表現できないVIBの真の価値は、現地でのサービス品質と革新性にあります。

自動車ローンの利便性 私が実際に調査した自動車ローンサービスは、審査の速さと手続きの簡便性で他行を上回っていました。オンラインでの事前審査から契約まで、デジタル化が進んでおり利用者の負担が軽減されています。

バンクアシュアランスの成功 プルデンシャルとの提携により、保険商品の販売が非常にスムーズに行われています。銀行窓口で預金と同時に保険加入ができる利便性は、多くの顧客に評価されています。

店舗展開の戦略性 支店・出張所の立地選定が非常に戦略的で、特に自動車ディーラーの近くや住宅地の中心部に配置されており、ターゲット顧客へのアクセシビリティが高いです。

投資リスクの冷静な分析

銀行株への投資にはリスクも伴います。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて正直にお話しします。

CBA撤退による不確実性 戦略的パートナーであったCBAの撤退により、技術支援や経営ノウハウの提供が減少する可能性があります。新たなパートナー探索が成功するかは不透明です。

金利変動リスク ベトナム国家銀行の金融政策変更により、利ざやが圧迫されるリスクがあります。特にインフレ抑制のための利上げ局面では注意が必要です。

競合激化リスク 自動車ローン市場での成功により、他の銀行も同分野に参入を強化しており、競争の激化が予想されます。

信用リスク 積極的な個人向け融資により、経済情勢悪化時には不良債権の急増リスクがあります。

規制変更リスク 外資規制の変更や銀行業務に関する規制強化が事業に影響を与える可能性があります。

投資判断:ベトナムリテール金融の成長を取り込む有力銘柄

これらの分析を踏まえ、私はVIB株を「ベトナムリテール金融市場の成長を取り込む有力銘柄」として高く評価しています。

投資の理由

  1. 自動車ローン市場でのシェアトップという圧倒的地位
  2. ROE18%という高い収益性と資本効率
  3. PER7.56倍という割安な評価水準
  4. 600万から1000万への顧客基盤拡大計画
  5. プルデンシャルとの成功したバンクアシュアランス事業

懸念点

  • CBA撤退による戦略的支援の減少
  • 競合激化による市場シェア低下リスク
  • 積極的な貸出による信用リスクの増加
  • 外国人保有率4%という流動性の低さ

目標株価・投資戦略 現在の株価19,350VNDは、PER・ROEの分析結果を考慮すると明らかに割安水準です。2025年の業績改善と顧客基盤拡大により、25,000-28,000VND程度への上昇を期待できると考えています。

ポートフォリオでの位置づけ 私のポートフォリオでは「ベトナム金融セクターの成長株」として位置づけており、中間層拡大による個人向け金融サービス需要拡大の恩恵を取り込む戦略的投資として保有しています。

まとめ:ベトナム消費者金融の革新をリードする銀行

ベトナム国際銀行(VIB)は、単なる中堅銀行ではありません。ベトナムの消費者金融分野を革新し、個人の資産形成と消費拡大を支援する重要な役割を担っています。

現地で生活していると、この銀行がベトナムの個人消費拡大にとってどれほど重要な存在かを実感します。自動車購入から住宅取得まで、ベトナム人の生活向上を金融面から支えている企業です。

PER・ROE分析からも、現在の株価水準は長期投資に非常に適した魅力的な範囲にあることが確認できました。特に2025年以降の顧客基盤拡大と新たな戦略的パートナーとの提携は、大きな成長機会となると期待しています。

確かにCBA撤退や競合激化などのリスクもありますが、長期的にはベトナムの消費社会発展と中間層拡大の最大の受益者になると確信しています。

投資は自己責任ですが、ベトナムの消費者金融セクター成長に賭けたい投資家にとって、VIB株は見逃せない銘柄だと考えています。

皆さんはどう思われますか?ベトナムの個人向け金融市場や銀行業界の成長性について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。


この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細な金融セクター分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的にお届けしています。

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