ベカメックスIDC(BCM)株投資ガイド:ベトナム工業団地開発の雄を現地12年の経験で徹底解説

ベトナム移住で9153万円の資産形成。

先月、ビンズオン省の新しい工業団地を視察した際、その規模と設備の充実ぶりに驚きました。整然と区画された工場用地、最新の排水処理設備、24時間稼働の電力供給システムなど、国際基準を満たすインフラが完備されていました。案内してくれた担当者から「この工業団地を開発したのがベカメックスIDCです」と聞いた時、この会社がベトナムの産業発展にどれほど重要な役割を果たしているかを実感しました。

現地で事業を営んでいると、ベカメックスIDC(BCM)という会社がベトナムの工業団地開発、特にビンズオン省を中心とした東南部地方においてどれほど大きな存在感を持っているかが分かります。1976年に農産物加工販売と消費財流通を手掛けるベンカット総合商業会社として設立され、現在では東南部地方ビンズオン省人民委員会傘下の工業団地開発大手へと発展しました。

今日は私のポートフォリオでも注目している銘柄の一つ、ベカメックスIDCについて現地在住12年の視点から詳しく分析していきます。

目次

ベカメックスIDC(BCM)とは?ベトナム工業団地開発のパイオニア

まず基本情報から整理していきましょう。ベカメックスIDC(証券コード:BCM)は1976年に設立され、2020年に上場したベトナム最大級の工業団地デベロッパーです。

基本データ(2025年7月15日現在)

  • 資本金:10兆3500億VND
  • 流通株式数:10億3500万株
  • 株価:67,000VND
  • 時価総額:約69兆3450億VND
  • 外国人保有率:2.00%

主な事業内容

  • 工業団地開発、住宅不動産開発

株主構成の特徴 政府が95.44%を保有する国営企業色の強い企業で、ビンズオン省人民委員会が筆頭株主となっています。これにより政府のインフラ政策との連携が強く、大型プロジェクトの推進において優位性を持っています。

事業規模:ベトナム工業団地開発のリーディングカンパニー

BCMの事業規模は、ベトナム工業団地開発業界において圧倒的な存在感を示しています。

工業団地開発事業 工業の盛んな東南部地方ビンズオン省を中心に事業を手掛けており、行政機関との間に太いパイプを有し立地の土地を確保することが可能です。工業団地開発大手で、ビンズオン省や南中部沿岸地方ダクガンガ省、北部紅河デルタ地方ハイフォン市、同バクニン省、北中部地方ゲアン省など数十か所の工業団地を開発・運営(2024年末)しています。

主要プロジェクト ビンズオン省でベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)、第2ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP2)、第1・2・3・4・5ミーフオック都市・工業団地、北部紅河デルタ地方バクニン省でVSIPバクニン工業団地、同ハイフォン市でVSIPハイフォン工業団地などを開発・運営し、ビンズオン新都市区をはじめとする都市区やマイソン開発も行っています。

社会住宅事業での地位 社会住宅(低所得者向け住宅)デベロッパー最大手で、2024年末までに工業団地周辺で11万0900戸の社会住宅を開発しています。

事業多角化:総合デベロッパーへの進化

売上構成比(2024年)

  • 不動産経営賃貸:65%
  • 商品販売・サービス提供:22%
  • 製品販売:7%
  • その他(建設など):6%

この構成を見ると、BCMは工業団地の賃貸事業を中核としながら、商業施設運営や製品販売まで手がける総合デベロッパーに進化していることが分かります。

多角化事業の展開 商業施設・賃貸オフィスビルの運営や鉱産採取、建設資材製造なども手掛け、ベカメックス国際総合病院(病床数:1000床)、ミーフオック病院(同500床)、東部国際大学、ベカメックスホテルを子会社として傘下に置くなど、事業を多角展開(2024年末)しています。

財務分析:安定した賃貸収入による堅実な成長

BCMの財務データを見ると、工業団地賃貸事業による安定した収益構造が見て取れます。

売上高推移

  • 2022年:65兆378億VND
  • 2023年:78兆8257億VND(+21.2%)
  • 2024年:52兆3924億VND(▲33.5%)
  • 2025年Q1:18兆4252億VND(通年予想:66兆4800億VND)

2024年は大幅な減収となりましたが、これは大型プロジェクトの売却タイミングの影響と考えられます。2025年は27%の増収を予想しており、回復が見込まれます。

収益性の特徴

  • 営業利益:2024年が17兆8464億VND(営業利益率34.1%)
  • 税引前利益:2024年が25兆5935億VND(前年比▲5.1%)
  • 税引後利益:2024年が23兆9605億VND(前年比▲5.3%)

営業利益率34.1%という数字は非常に高い水準で、工業団地賃貸事業の収益性の高さを示しています。

財務健全性

  • ROE:2024年11.93%
  • ROA:2024年4.27%
  • BPS:19,980VND

これらの指標は健全な水準を示しており、安定した事業基盤を持っています。

PBR・PER分析:割安性を数字で検証

投資判断において重要な株価の割安性について、PBRとPERの観点から分析してみましょう。

PBR(株価純資産倍率)分析

  • 現在のPBR:3.68倍(2025年Q1時点)
  • 過去3年推移:2022年4.65倍 → 2023年3.34倍 → 2024年3.55倍

PBR3.68倍という水準は、工業団地という収益性の高い資産を保有している企業としては妥当な範囲内です。特に立地の良い工業用地を多数保有していることを考慮すると適正な評価と言えるでしょう。

PER(株価収益率)分析

  • 2025年予想PER:44.70倍

PER44.70倍は一見すると高く感じますが、これは2024年の利益減少を受けた一時的な現象と考えられます。工業団地賃貸事業の安定性と2025年の業績回復を考慮すると、長期的な視点での投資価値は十分にあります。

配当政策の変化

  • 2024年配当:0VND(無配)
  • 2023年配当:1,000VND
  • 2022年配当:800VND

2024年は無配でしたが、これは大型投資による成長を優先した結果と考えられます。2025年には配当復活が予定されています。

割安性の判断 現在の株価67,000VNDは、2025年の業績回復期待と豊富な開発用地の資産価値を考慮すると適正水準にあると判断します。特に今後の大型プロジェクト展開による収益拡大を考慮すると、投資妙味があります。

事業戦略:大規模工業団地開発で成長加速

BCMの2025年以降の戦略で最も注目すべきは、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)事業の拡大と新規大型プロジェクトの展開です。

2025年業績計画

  • 売上高:99兆5000億VND(前年比+29%)
  • 税引前利益:27兆VND(前年比+5%)
  • 税引後利益:24兆7000億VND(前年比+3%)
  • 配当:額面比10%

資本増強計画 2024年の配当は現金配当または株式配当を額面比11%で実施予定です。株式配当の場合、約1億1400万株の新株を発行し、発行後の資本金は11兆4890億VNDとなります。

VSIP事業の拡大 ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)の新規株式公開(IPO)を実施する計画があり、VSIPはBCMとシンガポールのセムコープ(SembCorp)との合弁会社として独立した上場企業となる予定です。

大型工業団地開発計画 2025年から2030年にかけて、ビンズオン省で5-6件の工業団地・大型都市区開発プロジェクトを進める計画で、投資総額は数百兆VNDの見通しです。

2025年には、ビンズオン省でバクバン拡張工業団地(第2期、面積380ha)、ガイチュン工業団地(同700ha)を着工予定です。

デジタル化・持続可能性への取り組み

スマートファクトリー構想 2024年10月、電気設備の生産を手掛ける韓国系LSエレクトリック(LS Electric)との間で、工業団地入居企業に対するスマートファクトリーソリューションの導入促進に関する協力に関して、BCMは、スマートファクトリング活性化のため、入居企業の開拓を行うことになっています。

持続可能エネルギー事業 LSエレクトリックは工場の自動化に関する提案からシステム導入、運用まで、スマートファクトリー構築に関する全般的な作業を担う計画で、2社は今後、ソリューション提供の範囲、エネルギー貯蔵装置(ESS)の導入を含む再生可能エネルギー分野にも広げる予定です。

資本拡大計画 2028年までに資本金を20兆-30兆VNDへと引き上げるほか、時価総額70億-100億USDを目指しています。

現地で実感するBCMの圧倒的存在感

数字だけでは表現できないBCMの真の価値は、現地での工業団地開発における圧倒的な存在感にあります。

工業団地の品質 私が実際に視察したBCMの工業団地は、インフラ整備の水準が非常に高く、入居企業から高い評価を受けています。特に排水処理設備、電力供給の安定性、物流アクセスの良さは他社を上回る水準です。

政府との密接な関係 ビンズオン省人民委員会が筆頭株主という立場を活かし、用地取得や許認可取得において他社にない優位性を持っています。これは新規プロジェクト推進において大きなアドバンテージです。

総合デベロッパーとしての価値 工業団地だけでなく、病院、大学、ホテルまで運営する総合デベロッパーとしての機能により、入居企業に対してワンストップでサービスを提供できる体制が構築されています。

投資リスクの冷静な分析

工業団地開発株への投資にはリスクも伴います。現地にいるからこそ見えるリスクも含めて正直にお話しします。

政策変更リスク 国営企業としての性格上、政府の産業政策や外資誘致政策の変更により事業に大きな影響を受けるリスクがあります。

用地確保の競争激化 工業団地需要の高まりにより、優良な用地確保の競争が激化しており、新規プロジェクトのコストが上昇するリスクがあります。

入居企業の業績影響 世界経済の動向や製造業の海外移転動向により、入居企業の撤退や賃料減額要求のリスクがあります。

環境規制強化リスク 工業団地に対する環境規制の強化により、設備投資や運営コストの増加が生じる可能性があります。

外国人保有率の低さ 外国人保有率2%という数字は流動性の低さを示しており、大口売買時の価格変動リスクがあります。

投資判断:ベトナム工業化進展の最大受益者

これらの分析を踏まえ、私はBCM株を「ベトナムの工業化進展と外資誘致拡大の最大受益者」として高く評価しています。

投資の理由

  1. ベトナム工業団地開発業界での圧倒的地位
  2. ビンズオン省との密接な関係による競争優位性
  3. 営業利益率34%という高い収益性
  4. VSIP事業のIPOによる企業価値向上期待
  5. 2025年29%増収計画と大型プロジェクト展開

懸念点

  • PER44.70倍という高い評価水準
  • 政府政策変更による事業への影響リスク
  • 外国人保有率2%による流動性の低さ
  • 2024年の無配継続

目標株価・投資戦略 現在の株価67,000VNDは、2025年の業績回復とVSIP事業の価値向上を考慮すると適正水準にあります。大型プロジェクトの本格稼働により、80,000-85,000VND程度への上昇を期待できると考えています。

ポートフォリオでの位置づけ 私のポートフォリオでは「ベトナム産業インフラ・工業団地開発の中核銘柄」として位置づけており、国の工業化政策と外資誘致拡大の恩恵を取り込む戦略的投資として保有しています。

まとめ:ベトナム製造業発展の基盤を築く企業

ベカメックスIDC(BCM)は、単なる工業団地デベロッパーではありません。ベトナムの製造業発展を支え、外資系企業の進出を促進し、地域経済の活性化に貢献する重要なインフラ企業です。

現地で事業を営んでいると、この会社がベトナムの産業発展にとってどれほど重要な存在かを実感します。質の高い工業用地の提供から総合的なビジネス支援まで、製造業企業の成功を多方面で支えています。

PBR・PER分析からは現在の株価水準が長期的な成長期待を織り込んだものであることが確認できましたが、ベトナムの継続的な工業化進展を考慮すると、投資価値は十分にあると判断します。

確かに短期的には政策変更や競合リスクもありますが、長期的にはベトナムの製造業発展と外資誘致拡大の最大の受益者になると確信しています。

投資は自己責任ですが、ベトナムの産業インフラ発展に賭けたい投資家にとって、BCM株は見逃せない銘柄だと考えています。

皆さんはどう思われますか?ベトナムの工業団地開発業界や製造業の成長性について、ぜひコメントで意見交換させていただければと思います。


この記事は2025年8月時点の情報に基づいており、投資判断は自己責任でお願いします。より詳細な工業団地・不動産セクター分析や投資戦略については、メンバーシップで定期的にお届けしています。

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ベトナム移住で9153万円の資産形成。

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