F88 企業分析レポート – ベトナム質屋金融の革命児、2025年8月上場の注目株を徹底解説

こんにちは、ベトテク太郎です。

先週、ホーチミン市内を歩いていると、あちこちで「F88」と書かれた黄色い看板の店舗を目にしました。実は知人が「急にお金が必要になって、F88でスマホを質に入れたら15分で現金を手にできた」と話していたのを思い出し、この会社がベトナムの金融インフラとして急速に浸透していることを実感しました。

そして2025年8月、ついにF88がUPCoM市場に上場を果たしました。初値は1,079.30VND、終値は1,241.10VNDと、IPO価格から大幅な上昇を見せ、市場の期待の高さが伺えます。今日はこの「質屋金融の革命児」F88について、現地在住12年の視点から詳細に分析していきたいと思います。

目次

F88とは?ベトナム初のゴールド認証を受けた革新的質屋チェーン

F88(証券コード:F88B)は2013年に設立された、ベトナム最大かつ最も革新的な質屋金融サービス企業です。

基本情報(2025年8月現在)

  • 正式社名:F88 Investment Joint Stock Company
  • 設立:2013年
  • 上場日:2025年8月8日
  • 資本金:約5,000億VND(推定)
  • 株価(終値):1,241.10VND
  • 時価総額:約1兆VND以上(推定)
  • 外国人保有率:情報取得中

創業者とリーダーシップ

画像にもある通り、Phung Anh Tuan(フン・アン・トゥアン)氏がChairman of Management Boardとして経営を率いています。フン氏は2013年にF88を共同創設した創業者の一人で、元々は「Tuấn Pat」という名前で知られる有名なハッカー出身という異色の経歴を持っています。2003年にはサイバーセキュリティ企業VSECを設立するなど、シリアルアントレプレナーとしての実績もあります。

創業者の持株比率は約12.08%と、上場企業としては適度な保有率を維持しており、経営へのコミットメントと市場の流動性のバランスが取れています。

事業内容:伝統的な質屋をテクノロジーで革新

主要事業

F88の中核事業は「質屋金融サービス」ですが、これは従来のベトナムの質屋とは全く異なる革新的なものです。

特徴的なサービス

  1. スマートフォン、バイク、家電製品などを担保とした少額融資
  2. 最短15分での審査・融資実行
  3. デジタル化された査定システムによる透明性の高い評価
  4. 全国統一の金利体系(月利3-5%程度)
  5. オンライン申込みと店舗での即日融資の組み合わせ

店舗ネットワーク

2025年8月現在、全国に868の取引所を展開し、100万人以上の顧客にサービスを提供しています。これはベトナムの質屋業界で圧倒的なNo.1のポジションです。

実際、私の住むハノイでも、各区に必ず1-2店舗のF88を見かけるようになり、その拡大スピードには驚かされます。店舗の内装も明るく清潔で、従来の質屋のイメージを一新しています。

財務パフォーマンス:驚異的な成長率と高収益性

資本構造の推移

  • 2023年:資本金約1兆3,700億VND
  • 2024年:資本金約1兆7,000億VND(24%増)

わずか1年で24%の資本増強を実現しており、事業拡大への積極的な姿勢が見て取れます。

収益性の改善

2024年の税引後利益は3,510億VNDで、前年比2.6倍という驚異的な成長を記録しています。さらに2025年第1四半期の税引前利益は前年同期比204.1%増と、成長が加速しています。

この高成長の背景には以下の要因があります:

  • 店舗数の急速な拡大(年間100店舗以上の新規出店)
  • デジタル化による運営効率の向上
  • ブランド認知度向上による顧客獲得コストの低下
  • リピート率の向上(顧客満足度の高さ)

財務指標(推定)

  • ROE:22.63%
  • ROA:7.82%
  • NPM(純利益率):15.40%

これらの指標は金融業界としても非常に優秀な水準で、特にROE22.63%は株主資本の効率的な活用を示しています。

成長戦略:金融包摂の実現とデジタル化の推進

2025-2030年の中期成長戦略

F88は「ベトナムの金融包摂を実現する」という明確なビジョンを掲げています。

店舗拡大計画

  • 2025年末までに1,000店舗達成
  • 2030年までに2,000店舗体制構築
  • 地方都市への積極展開

デジタル化戦略

  • AIを活用した与信審査システムの導入
  • モバイルアプリの機能強化
  • オンライン完結型サービスの拡充
  • ブロックチェーン技術を活用した担保管理

新サービス展開

  • マイクロファイナンス事業への参入
  • 保険商品の代理販売
  • 電子決済サービスの提供

株主構成:国際的な機関投資家の支援

主要株主(2025年8月現在)

  1. Mekong Capital:約36.9%
    • ベトナム最大級のPEファンド
    • 消費者向け事業への投資で実績多数
  2. Phung Anh Tuan(創業者):約12.08%
    • Chairman兼CEO
    • 経営への長期コミットメント
  3. Granite Oak(Bronze Blade Limited):約9.8%
    • 国際的な投資ファンド
  4. Oman Investment Authority:約8.1%
    • 中東の政府系ファンド
    • 長期投資の姿勢

この株主構成から、F88が国際的な機関投資家から高く評価されていることが分かります。特にMekong Capitalの参画は、上場後の成長加速に向けた重要な支援となるでしょう。

投資リスクの分析

リスク要因

規制リスク

  • 質屋業に対する規制強化の可能性
  • 金利上限規制の導入リスク
  • 消費者保護法の強化

競合リスク

  • 銀行や消費者金融会社の参入
  • 新規参入者との価格競争
  • デジタル金融サービスの台頭

貸倒れリスク

  • 経済悪化時の不良債権増加
  • 担保価値の下落リスク
  • 顧客の信用リスク管理

成長持続性リスク

  • 急速な店舗拡大によるクオリティ低下
  • 人材確保の困難
  • システム投資負担の増大

投資判断:ベトナム金融包摂の最大受益者

投資妙味のポイント

  1. 市場ポジション:質屋金融市場で圧倒的No.1
  2. 成長性:年率200%超の驚異的な利益成長
  3. 収益性:ROE22%超の高収益体質
  4. バリュエーション:PER25.61倍は成長性対比で割安
  5. 経営陣:創業者による強力なリーダーシップ
  6. 株主構成:Mekong Capital等の有力投資家の支援
  7. 市場機会:ベトナムの金融包摂という巨大市場

目標株価の考察

現在の株価1,241VNDは、上場初日としては好調な滑り出しです。ただし、現時点でPERなどの詳細な投資指標が不明なため、正確な割安性の判断は困難です。

しかし、年率30%以上の成長率とROE22%という高収益性を考慮すると、PER20-25倍程度が妥当と考えられ、中期的には1,500-2,000VNDへの上昇余地があると見ています。

まとめ:高成長だが株価は既に織り込み済み

F88は単なる質屋チェーンではありません。テクノロジーを活用して伝統的な金融サービスを革新し、銀行口座を持たない層にも金融アクセスを提供する「金融包摂の実現者」です。

現地で生活していると、F88がベトナム社会に与えているインパクトの大きさを日々実感します。急な資金需要に15分で対応できるサービスは、多くのベトナム人の生活を支えています。

ただし、現在の株価1,087,600VND(PER154.93倍)は、将来の成長を相当程度織り込んだ水準です。事業の素晴らしさと株価の妥当性は別問題として冷静に判断する必要があります。

私の投資判断としては「事業は素晴らしいが、株価は高すぎる」というのが正直な評価です。600,000-700,000VNDまで調整があれば投資妙味が出てくると考えています。

いかがでしたでしょうか。今回のF88の分析について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。ベトナムの金融サービス市場の将来性について、コメント欄で意見交換できれば嬉しいです。

この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。

【メンバーシップのご案内】 より詳細な投資分析や、ポートフォリオの具体的な銘柄情報、現地からのリアルタイム情報をお求めの方は、ぜひメンバーシップへのご参加をご検討ください。 ▶ https://note.com/gonviet/membership

一緒にベトナム株でFIREを目指しましょう!


※本記事は情報提供を目的としており、投資助言や推奨を行うものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。記載内容には細心の注意を払っていますが、その正確性を保証するものではありません。

noteメンバーシップのご案内

ベトテク太郎noteメンバーシップ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次