ドラゴンキャピタル:ベトナム投資界の巨人、新CEO就任で新たな章へ

こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。

2025年10月1日付で、ベトナム最大の資産運用会社ドラゴンキャピタルの子会社であるドラゴンキャピタル・ベトナム・ファンド・マネジメント(DCVFM)に、レ・アン・トゥアン(Le Anh Tuan)博士が新CEOとして就任しました。ベトナム在住12年の私から見ると、この人事は単なる経営陣の交代を超えて、ベトナム投資の新時代の始まりを告げる重要な出来事だと感じています。

目次

ドラゴンキャピタルとは:ベトナム投資の開拓者

ドラゴンキャピタルグループは、1994年に設立されたベトナムおよび東南アジア新興市場に特化した統合投資プラットフォームです。創設時はわずか6人のチームと1,800万米ドルの運用資産でスタートしましたが、現在では61億米ドル(2024年3月31日時点、未監査)の運用資産を誇る、ベトナム資本市場において最も歴史が長く独立した資産運用会社となっています。

会社概要

  • 設立年:1994年
  • 本社:ホーチミン市(ハノイにも拠点あり)
  • 運用資産:61億米ドル(2024年3月時点)
  • 従業員数:170名以上
  • 海外拠点:バンコク、香港、英国

創業者ドミニク・スクリヴェン氏:ベトナム投資の先駆者

創業者であり現会長のドミニク・スクリヴェン(Dominic Scriven)氏は、英国エクセター大学で社会学と法学の学位を取得後、ロンドン・シティやサン・ハン・カイ・プロパティーズで金融業務に従事していました。1990年代初頭にベトナムを訪れ、その経済的機会に注目し、2年間ハノイ総合大学でベトナム語を学んだ後、1994年にドラゴンキャピタルを共同設立しました。

スクリヴェン氏は2006年に大英帝国勲章を、2014年にはベトナム大統領チュオン・タン・サン氏から労働勲章三等を授与されるなど、両国から高い評価を受けています。

主力ファンドと投資戦略

Vietnam Enterprise Investments Limited(VEIL)

1995年に設立されたクローズドエンドファンドで、ロンドン証券取引所のFTSE 250に上場しています。16億米ドル以上の運用資産を持ち、2000年以降年率11.6%のリターンを投資家に提供してきました。

Vietnam Equity (UCITS) Fund(VEF)

ベトナム初のアクティブ運用UCITSファンドで、2億7,000万米ドル以上の運用資産を保有しています。

新CEO就任:レ・アン・トゥアン博士

2025年10月1日付で、レ・アン・トゥアン(Le Anh Tuan)博士が新CEOに就任しました。トゥアン博士は2008年にドラゴンキャピタルに入社し、チーフエコノミスト、リサーチディレクター、投資部門ディレクターなど要職を歴任してきました。

経歴

  • ウィラメット大学MBA取得
  • ペンシルベニア州立大学経済学博士号取得
  • メリルリンチ・プライベート・ウェルス・マネジメント出身

Dr Le Anhは、2008年から同社に在籍し、最高投資責任者としての役割も兼任する予定です。彼はベトナムの資本市場に関する深い知識と市場洞察力、商業的規律を兼ね備えたリーダーシップが評価されています。

現地で実感するドラゴンキャピタルの影響力

ベトナムに12年住んでいる私から見ると、ドラゴンキャピタルの影響力は計り知れません。

コーポレートガバナンス改善への貢献 同社は単なる投資会社ではなく、ベトナム企業のコーポレートガバナンス向上に大きく貢献してきました。投資先企業の経営改善に積極的に関与し、ベトナム資本市場全体の発展に寄与しています。

ESG投資の先駆者 2005年からカーボンニュートラルを実現し、国連責任投資原則(UN PRI)の署名機関として、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の分野でも先駆的な役割を果たしています。

ベトナム企業の海外展開サポート 多くのベトナム企業の海外進出や外資調達において、ドラゴンキャピタルがアドバイザリー業務を提供しており、ベトナム経済の国際化に大きく貢献しています。

2025年上半期業績と今後の展望

2025年上半期の業績を見ると、ドラゴンキャピタル・ベトナム・ファンド・マネジメント(DCVFM)は売上高4,800億VND超、税引き後利益550億VND超を記録しました。前年同期比でそれぞれ12%減、60%減となっていますが、これは市場環境の変化を反映したものです。

収益構造

  • 投資証券コンサルティング:67%(約3,240億VND)
  • 証券投資ファンド管理:32%

この人事は、ベトナムと米国の間で新たな貿易協定が合意されたタイミングと重なります。この協定により、ベトナムの輸出品に46%の関税が課される予定でしたが、代わりに20%の関税で合意され、ベトナムも米国製品への関税を撤廃することになりました。この協定は、ベトナムの製造業ハブとしての地位と強い経済成長を支援しており、2025年上半期のGDP成長率は7.52%となり、過去15年で最も速いペースとなっています。

ドラゴンキャピタルのETF商品ラインナップ

ドラゴンキャピタルは、ベトナム株式市場への多様な投資ニーズに応えるため、3つの特色あるETF商品を提供しています。これらのETFは、日本の投資家にとってもベトナム市場への効率的なアクセス手段として注目に値します。私自身のポートフォリオでも、これらのETFを重要な位置に置いており、その実用性と効果を日々実感しています。

1. VN30 ETF(ティッカー:E1VFVN30)

「ベトナムの株式市場リーダーの価値を捉える」

基本情報

  • 設定日:2014年9月18日(最も歴史のあるETF)
  • 純資産価値:32,717.34 VND(2025年9月21日現在)
  • 年初来リターン:39.20%
  • 5年リターン:129.50%
  • 純資産総額:5兆9,512億VND
  • 管理手数料:0.65%
  • ベンチマーク:VN30 TRI
  • トラッキングエラー:0.34%

投資戦略 VN30指数に連動するパッシブ運用ETFで、ベトナムの時価総額上位30社への分散投資を実現します。ベトナムの大型優良株(ブルーチップ)への投資を通じて、同国の成長ストーリーに最もシンプルかつ低コストで参加できる商品です。

指数の構成銘柄が変更されると、ETFのポートフォリオも自動的に調整されるため、アクティブな調査・分析が不要で、コストを最小限に抑えることができます。ただし、市場が下落する際の防御戦略や、割高に見える際の利益確定は行われません。

私の12年間のベトナム投資経験から言えば、このETFは「ベトナム株投資の入門編」として最適な商品です。VN30構成銘柄には、ビングループ(VIC)、FPT、ベトコムバンク(VCB)など、私のポートフォリオにも含まれる優良企業が多数組み入れられています。特に初心者の方には、個別株選択のリスクを避けながらベトナム市場全体の成長を享受できる理想的な商品だと考えています。

2. Diamond ETF(ティッカー:FUEVFVND)

「グローバル投資家の投資選好を追跡」

基本情報

  • 設定日:2020年4月22日
  • 純資産価値:39,366.55 VND(2025年9月21日現在)
  • 年初来リターン:17.02%
  • 5年リターン:198.44%
  • 純資産総額:13兆5,539億VND
  • 管理手数料:0.80%
  • ベンチマーク:VNDIAMOND Index
  • トラッキングエラー:0.49%

投資戦略 VN DIAMOND指数に連動し、外国人投資家の持株比率が上限(通常49%)の90-95%に達した銘柄で構成されています。これは「外国人投資家が最も欲しがっている銘柄」を集めたETFと言えます。

このETFの独特な特徴は、外国人投資家に制限なくアクセスを提供することです。通常、外国人投資家は個別銘柄で外国人保有上限に達すると新規投資ができませんが、このETFを通じて間接的に投資することが可能になります。

現地在住者として特に興味深いのは、このETFが「外国人投資家の思考」を可視化している点です。外国人投資家が持株上限近くまで買い進めている銘柄は、真の優良企業である可能性が高く、長期投資の観点から非常に参考になります。実際、私がベトナムで見聞きする限り、DIAMOND指数構成銘柄は業績が安定しており、配当利回りも魅力的な企業が多く含まれています。

3. Midcap ETF(ティッカー:FUEDCMID)

「明日の株式市場リーダーへの投資」

基本情報

  • 設定日:2022年8月23日(最も新しいETF)
  • 純資産価値:15,397.27 VND(2025年9月21日現在)
  • 年初来リターン:30.10%
  • 設定来リターン:53.97%
  • 純資産総額:4,111億VND
  • ベンチマーク:VNMidcap Index
  • トラッキングエラー:0.93%

投資戦略 VNMidcap指数に連動し、将来の大型株候補となる中型株への投資機会を提供します。サンプリング戦略を採用し、時価総額と流動性の高い銘柄を優先的に組み入れることで、流動性リスクを軽減し、ベンチマーク指数を密接に追跡することを目指しています。

大型株に比べて割安な評価で取引されることが多い中型株に投資することで、優れたリスク・リターンバランスを目指します。これらの企業は、プレミアムな市場評価を受ける前の成長段階にあることが多く、将来的な株価上昇の潜在力を秘めています。

ベトナム在住12年の経験から言うと、このMidcap ETFは「隠れた宝石」を発掘する可能性を秘めています。ベトナムの中型株には、地方経済の成長や特定業界の発展により、将来大きく成長する可能性のある企業が数多く含まれています。例えば、キンバックシティ(KBC)のような地方開発会社や、地方銀行など、ハノイ・ホーチミン以外の地域経済の発展を担う企業が多数組み入れられています。

共通する運用チーム

3つのETF全てが、レ・アン・トゥアン新CEO(最高投資責任者兼任)を中心とした経験豊富な運用チームによって管理されています:

  • レ・アン・トゥアン博士:最高投資責任者、業界経験16年
  • ルオン・ティ・ミー・ハン氏:国内資産運用部長、業界経験21年
  • ヴー・ドゥック・スー氏:ETFリード・ポートフォリオマネージャー、業界経験14年

この運用チームの特徴は、全員がベトナム市場に精通した長期在籍者であることです。特にハン氏は21年の業界経験を持ち、VN30 ETFの運用を10年間担当してきた実績があります。ベトナムの金融市場の発展と共に成長してきたチームであり、現地市場の動向を熟知している点が大きな強みです。

ETF投資の実践的メリット

分散投資の実現 3つのETFにより、ベトナム株式市場の大型株から中型株、さらには外国人投資家に人気の銘柄まで、幅広い分散投資が可能となります。これにより、個別銘柄リスクを大幅に軽減しながら、市場全体の成長を享受できます。

低コスト投資 全てのETFが1%以下の管理手数料を実現しており、個別株投資に比べて取引コストを大幅に削減できます。特にVN30 ETFの0.65%という管理手数料は、アクティブファンドと比較して非常に魅力的です。

流動性の確保 全てホーチミン証券取引所(HOSE)に上場しており、株式と同様の利便性で売買可能です。創設単位は全て10万株で設定されており、機関投資家による大口取引にも対応しています。

透明性の高い運用 パッシブ運用により、ポートフォリオの構成が明確で、指数の動きに連動した値動きが期待できます。これにより、投資家は市場の動向を予測しやすくなります。

現地投資家としての活用法

私自身のポートフォリオでも、これらのETFは重要な位置を占めています。具体的な活用方法をご紹介します:

コア・サテライト戦略 私のポートフォリオでは、VN30 ETFとDiamond ETFを「コア部分」として位置づけ、全体の30-40%程度を配分しています。残りの部分で個別株投資を行う「サテライト戦略」により、リスクを抑えながら超過リターンを狙っています。

市場環境に応じた使い分け

  • 上昇相場では:Midcap ETFの比重を高めて成長を享受
  • 下落相場では:VN30 ETFの比重を高めて安定性を重視
  • 外国人投資家の動向に注目したい時:Diamond ETFの動きを参考

ドルコスト平均法の活用 月次で一定額をETFに投資することで、価格変動リスクを平準化しています。特にVN30 ETFは流動性が高いため、定期積立に最適です。

投資判断とリスク分析

強み

  1. 30年の実績: ベトナム投資において最も長い歴史と実績
  2. 現地密着型運営: 170名以上の現地スタッフによる情報収集力
  3. 多様な投資商品: 上場・非上場株式、債券、不動産まで幅広いカバレッジ
  4. ESG投資のリーダー: 持続可能な投資への早期取り組み
  5. 政府系機関との良好な関係: ベトナム政府との長期的なパートナーシップ
  6. 優秀なETFラインナップ: 市場ニーズに対応した3つの特色あるETF商品

リスク要因

  1. ベトナム経済依存: ベトナム経済の成長率低下が直接影響
  2. 規制変更リスク: 外資規制や税制変更の影響
  3. 為替リスク: VND/USD為替変動の影響
  4. 流動性リスク: 新興市場特有の流動性制約
  5. 政治リスク: ベトナムの政治情勢変化の影響
  6. 追跡誤差リスク: ETFがベンチマーク指数を完全に複製できない可能性

ベトナム株投資におけるドラゴンキャピタルの位置づけ

個人投資家への影響

間接的な投資機会 日本の個人投資家は、ドラゴンキャピタルが運用するファンドを通じて間接的にベトナム株に投資することが可能です。特に三井住友DSアセットマネジメントの「ベトナム株式ファンド」などで、同社の運用ノウハウを活用できます。

また、現地でETFに直接投資することも可能で、より低コストでベトナム市場にアクセスできます。私自身も、日本の投資信託よりもコスト面で有利なドラゴンキャピタルのETFを積極的に活用しています。

市場動向の指標 ドラゴンキャピタルの投資動向は、ベトナム株式市場全体のトレンドを占う重要な指標となります。同社の売買動向を注視することで、市場の方向性を予測する手がかりが得られます。

現地投資家としての評価

私の12年間のベトナム投資経験から言えば、ドラゴンキャピタルは「ベトナム株投資の教科書」のような存在です。

情報発信力 同社のリサーチレポートは、ベトナム投資家にとって必読の資料となっており、質の高い分析と現地密着の情報提供で定評があります。特に英語とベトナム語の両方で情報を提供している点が、外国人投資家にとって非常に有用です。

長期投資哲学 短期的な利益追求ではなく、ベトナムの長期的な成長を信じた投資哲学は、個人投資家にとっても参考になる姿勢です。30年間という長期にわたってベトナムに投資し続けてきた実績が、その哲学の正しさを証明しています。

企業文化 従業員の65%がベトナム人で、多様な国籍とスキルセットを持つチームが特徴的です。イニシアティブを重視し、オーナーシップを育む企業文化により、優秀な人材の長期定着を実現しています。この安定した組織基盤が、一貫した投資パフォーマンスの源泉となっています。

今後の展望と投資戦略

2025年後半の注目ポイント 新CEOのレ・アン・トゥアン博士の下で、ドラゴンキャピタルがどのような新しい戦略を打ち出すかが注目されます。特に以下の点に期待しています:

  1. ESG投資の更なる強化: 世界的なESG投資の流れを受けて、より持続可能な投資戦略の展開
  2. デジタル化の推進: フィンテック技術を活用した新しい投資サービスの提供
  3. 地域展開の拡大: ベトナム以外の東南アジア市場への展開加速

ETF商品の今後の発展 現在の3つのETFに加えて、セクター別ETFやテーマ型ETFの開発も期待されます。例えば、ベトナムの成長セクターであるIT、金融、不動産に特化したETFがあれば、より精密な投資戦略が可能になるでしょう。

まとめ:ベトナム投資の羅針盤

ドラゴンキャピタルは、単なる投資会社を超えて、ベトナムの経済発展そのものを体現する企業です。30年間にわたってベトナムと共に成長し、今後もベトナム経済の発展を牽引していく存在として位置づけられます。

特に同社のETF商品は、ベトナム株投資を検討している個人投資家にとって、非常に魅力的な選択肢です。私自身の投資経験からも、これらのETFは以下の理由で強く推奨できます:

  1. プロの運用チームによる管理: 現地市場を熟知した経験豊富なチームが運用
  2. 低コスト: 個別株投資や他のアクティブファンドと比較して圧倒的に低い手数料
  3. 透明性: パッシブ運用による明確で予測しやすい値動き
  4. 多様性: 大型株、中型株、外国人人気株という3つの異なる投資アプローチ

ベトナム株投資を検討している投資家にとって、ドラゴンキャピタルの動向を追うことは必須といえるでしょう。特に長期投資を考えている方には、同社の投資哲学と戦略、そしてETF商品から学ぶべき点が多くあります。

私自身もベトナム投資において、常にドラゴンキャピタルの動向を参考にしており、その情報発信力と分析力の高さを日々実感しています。新CEO体制の下で、さらなる発展を遂げることを確信しています。

いかがでしたでしょうか。今回のドラゴンキャピタル解説について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。

【メンバーシップのご案内】 より詳細な投資分析や、ポートフォリオの具体的な銘柄情報、現地からのリアルタイム情報をお求めの方は、ぜひメンバーシップへのご参加をご検討ください。 https://note.com/gonviet/membership

一緒にベトナム株でFIREを目指しましょう!

【免責事項】 本記事の内容は、情報提供のみを目的としており、いかなる金融商品または仮想通貨への投資の推奨を意図するものではありません。 ベトナム株式投資は価格の変動が大きく、リスクを伴う投資対象です。投資判断はご自身の責任に基づいて行ってください。 本記事で提供される情報の正確性、完全性、または最新性については、最大限の注意を払っていますが、保証するものではありません。 投資の際には、専門家への相談を推奨いたします。この記事は、法的、税務的、または財務的なアドバイスを提供するものではありません。 本記事の情報に基づいて行われた投資による損失や損害について、執筆者および当ウェブサイトは一切の責任を負いません。 株式投資およびその関連商品に投資する際は、各国の規制および法律を確認し、法令を遵守することが重要です。

#ベトナム株 #投資 #アジア株 #FIRE

noteメンバーシップのご案内

ベトテク太郎noteメンバーシップ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次