こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。
ベトナム株投資を始めた方から「確定申告はどうすればいいんですか?」という質問をよくいただきます。正直なところ、私も最初の年は税務署に何度も足を運んで、かなり苦労しました。外国株の税制は複雑で、ベトナム株特有のルールもあるため、慣れるまでは大変だと思います。
この記事では、ベトナム在住12年の私が実際に毎年行っている確定申告の手順を、初心者の方にもわかりやすく解説します。2026年2月から3月の確定申告シーズンに向けて、今から準備を始めましょう。
ベトナム株にかかる税金の基本
まず、ベトナム株投資でかかる税金の全体像を理解しましょう。日本居住者がベトナム株に投資する場合、「日本の証券会社経由」と「ベトナム現地証券会社」の2パターンで税金の仕組みが異なります。
日本の証券会社でベトナム株を取引する場合
SBI証券やアイザワ証券などの日本の証券会社でベトナム株を取引する場合、基本的には日本株と同じ税制が適用されます。
「売却益(譲渡益)」については、利益に対して20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。ただし、ベトナム国内では租税条約により課税されないため、日本での課税のみで済みます。
「配当金」についても、受取時に20.315%が源泉徴収されます。ベトナム国内では配当に課税されないため、二重課税の心配はありません。
特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合は、証券会社が自動的に税金を計算して納付してくれるため、原則として確定申告は不要です。ただし、複数の証券会社で取引していて損益通算したい場合や、配当控除を受けたい場合は確定申告が必要になります。
ベトナム現地証券会社で取引する場合
SSI証券などのベトナム現地証券会社で取引する場合は、少し複雑になります。
「売却時」には、損益にかかわらず売却代金の0.1%が現地で源泉徴収されます。これは利益ではなく売却金額に対する課税なので、損失が出ていても徴収される点に注意が必要です。例えば、1億VND(約5万円)で売却した場合、10万VND(約500円)が自動的に引かれます。
日本では、売却益に対して20.315%の申告分離課税が適用されます。ベトナムで徴収された0.1%は「外国税額控除」により日本の税金から控除できるため、実質的な二重課税は避けられます。
「配当金」については、ベトナムで5%が源泉徴収された後、日本でも20.315%が課税されます。この場合も外国税額控除を適用することで、ベトナムで支払った5%分を日本の税金から差し引くことができます。
私の経験では、現地証券会社を使う最大のメリットは手数料の安さですが、その代わり確定申告の手間が増えるのは事実です。年間の取引が少額であれば日本の証券会社、本格的に投資するなら現地証券会社と使い分けるのも一つの方法だと思います。
確定申告が必要なケース・不要なケース
ベトナム株投資で確定申告が必要かどうかは、取引している口座の種類や所得の状況によって変わります。
確定申告が不要なケース
特定口座(源泉徴収あり)で日本の証券会社を通じて取引し、他の証券口座での取引がなく、配当控除や損益通算の必要がない場合は、確定申告は不要です。証券会社が全て処理してくれます。
NISA口座で取引している場合も、売却益は非課税のため確定申告は不要です。ただし、配当金についてはベトナム国内で5%が源泉徴収され、この分は取り戻せない点には注意が必要です。米国株の10%と比べると、ベトナム株は配当課税が低いのが魅力ですね。
年間の給与所得が2000万円以下のサラリーマンで、給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合も、確定申告は不要です。ただし、住民税の申告は別途必要になる場合があります。
確定申告が必要なケース
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引している場合は、確定申告が必須です。私も最初は源泉徴収なしの口座で始めたので、毎年必ず申告しています。
ベトナム現地証券会社で取引している場合も、外国税額控除を受けるために確定申告が必要です。この手続きをしないと、ベトナムで支払った税金が戻ってこないので、必ず申告しましょう。
複数の証券口座で取引していて、損益通算や繰越控除を受けたい場合も確定申告が必要です。例えば、A証券で50万円の損失、B証券で20万円の配当がある場合、確定申告により損益通算すると配当にかかった約4万円の税金が還付されます。
配当金について総合課税を選択して配当控除を受けたい場合や、上場株式の譲渡損失を翌年以降に繰り越したい場合も、確定申告が必要になります。
必要書類の準備
確定申告をスムーズに進めるためには、事前の書類準備が重要です。私は毎年12月になると、翌年の確定申告に向けて書類を整理し始めます。
日本の証券会社を利用している場合
「特定口座年間取引報告書」は、特定口座で取引している場合に証券会社から発行される書類です。1月中旬から下旬にかけて、証券会社のマイページからダウンロードできるようになります。この書類には年間の売買損益や配当金の明細が記載されているので、確定申告の基礎資料になります。
「外国株式 配当金のお知らせ」または「外国証券に関するご案内(権利配当等)」は、配当を受け取った際に証券会社から発行される書類です。外国税額控除を受ける場合に必要な情報が記載されています。SBI証券の場合、2024年2月14日以降は「外国株式 配当金のお知らせ」という名称に変更されています。
本人確認書類としては、マイナンバーカードがあれば1枚で済みます。持っていない場合は、マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載された住民票の写しと、運転免許証やパスポートなどの身分証明書が必要です。
ベトナム現地証券会社を利用している場合
ベトナム現地証券会社(SSI証券など)を利用している場合は、追加で以下の書類が必要になります。
取引明細書(Statement)は、現地証券会社のオンラインシステムからダウンロードできます。売買の日付、銘柄、数量、金額、手数料、税金などが記載されています。英語またはベトナム語で記載されているため、必要に応じて日本語訳を準備しておくと税務署での説明がスムーズです。
配当金の支払通知書は、配当を受け取った際に発行される書類です。配当金額、源泉徴収税額(5%)、受取日などが記載されています。これも外国税額控除の申請に必要です。
外国所得税を課されたことを証明する書類として、取引明細書や配当金支払通知書が該当します。税務署によっては追加の証明書類を求められる場合もあるので、不安な場合は事前に税務署に確認しておくと安心です。
為替レートの記録も重要です。ベトナムドンを日本円に換算する際には、取引日または配当支払日のTTBレート(対顧客電信買相場)を使用します。各証券会社のサイトや日本銀行のサイトで確認できます。私はExcelで為替レートを記録しておき、確定申告の際にすぐ参照できるようにしています。
確定申告の具体的な手順
それでは、実際の確定申告の手順を見ていきましょう。初めての方でも迷わないように、できるだけ詳しく説明します。
Step 1:確定申告書の作成方法を選ぶ
確定申告書を作成する方法は大きく3つあります。
「国税庁の確定申告書等作成コーナー」を利用する方法は、最も一般的で私もおすすめしています。パソコンやスマートフォンから無料で利用でき、入力内容に応じて自動計算してくれるので便利です。e-Taxで電子申告すれば税務署に行く必要もありません。
確定申告ソフト(マネーフォワード クラウド確定申告など)を利用する方法もあります。事業所得がある方や、より詳細な管理をしたい方に向いています。有料ですが、日々の記帳から確定申告まで一貫して管理できるのが魅力です。
税理士に依頼する方法は、取引が複雑な場合や時間がない方におすすめです。費用はかかりますが、正確性が高く、税務調査のリスクも減らせます。私の知人で年間数千万円規模の取引をしている方は、税理士に依頼しています。
Step 2:所得金額の計算
特定口座年間取引報告書や取引明細書をもとに、売却益(譲渡所得)を計算します。
売却益=売却金額-(取得費+手数料等)
ベトナム現地証券会社を利用している場合は、ベトナムドン建ての取引をすべて日本円に換算する必要があります。換算レートは、原則として売買日または配当支払日の対顧客電信買相場(TTB)を使用します。
配当所得についても、特定口座年間取引報告書または配当金支払通知書をもとに計算します。現地で源泉徴収された税額も記録しておきましょう。
Step 3:確定申告書への入力
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使う場合、まず「所得税」を選択し、該当する年分を選びます。
「株式等の譲渡所得等」の欄に、計算した売却益を入力します。申告分離課税を選択し、税率20.315%が自動適用されます。
「配当所得」については、総合課税または申告分離課税を選択できます。一般的には申告分離課税を選択する方が有利なケースが多いですが、課税所得が695万円以下の場合は総合課税で配当控除を受けた方が得になる可能性もあります。私は毎年シミュレーションして、どちらが有利か確認しています。
損益通算する場合は、該当する欄にチェックを入れて金額を入力します。複数の証券口座がある場合は、すべての取引を合算して計算します。
Step 4:外国税額控除の申請
ベトナムで源泉徴収された税金を取り戻すために、外国税額控除の手続きを行います。
確定申告書等作成コーナーで「外国税額控除」の項目を選択し、「外国税額控除に関する明細書」を作成します。
明細書には以下の情報を入力します。
①国名:ベトナム ②所得の種類:株式の譲渡所得または配当所得 ③外国所得税額(外貨建て):ベトナムで徴収された税額(VND) ④外国所得税額(円貨建て):為替レートで円換算した金額 ⑤課税標準額:売却金額または配当金額(VND→円換算)
売却益の場合、ベトナムでの源泉徴収税は売却代金の0.1%です。例えば、1億VND(約56万円、1VND=0.0056円として計算)で売却した場合、10万VND(約560円)が徴収されています。
配当金の場合、ベトナムでの源泉徴収税は配当金額の5%です。配当金100万VND(約5,600円)を受け取った場合、5万VND(約280円)が徴収されています。
控除限度額は自動計算されますが、基本的には外国で支払った税額の範囲内で控除されます。所得税額から控除しきれない場合は、復興特別所得税や住民税からも控除できる仕組みになっています。
私の経験では、ベトナム株の場合は源泉徴収税額が少ないので、ほぼ全額が控除されるケースが多いです。
Step 5:提出・納税
確定申告書の作成が完了したら、提出と納税を行います。
e-Taxで電子申告する場合は、マイナンバーカードとICカードリーダーまたはスマートフォンが必要です。24時間いつでも提出でき、税務署に行く手間が省けるので便利です。私は毎年e-Taxで申告しています。
郵送で提出する場合は、確定申告書と添付書類を所轄の税務署に郵送します。郵送の場合は消印の日付が提出日となるので、期限ギリギリの場合は注意が必要です。
税務署に直接持参する方法もあります。確定申告期間中は混雑するので、時間に余裕を持って訪れることをおすすめします。
納税は、e-Taxからのダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード、コンビニ納付、金融機関や税務署での窓口納付など、様々な方法があります。納付期限は確定申告の提出期限と同じ3月15日(土日の場合は翌営業日)です。
還付申告の場合は、申告から1〜2ヶ月後に指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。
よくある質問と注意点
確定申告に関して、よく質問される内容をまとめました。
Q:NISA口座でベトナム株を取引した場合の税金は?
NISA口座では、日本国内の売却益は非課税になります。配当金も「株式数比例配分方式」に設定していれば非課税です。ただし、ベトナム国内での配当課税5%は免除されないため、実際には5%分が差し引かれた金額が入金されます。この5%分については外国税額控除も受けられないので注意が必要です。
米国株の配当課税が10%、中国株(H株)も10%であることを考えると、ベトナム株の5%は比較的低い水準です。高配当株をNISA口座で保有するなら、ベトナム株は税制面で有利だと言えます。
Q:複数の証券会社で取引している場合の損益通算は?
複数の証券会社で取引している場合、確定申告により損益通算が可能です。例えば、A証券で50万円の譲渡損失、B証券で20万円の配当がある場合、確定申告により両者を通算すると、配当に対して源泉徴収されていた約4万円が還付されます。
特定口座(源泉徴収あり)同士でも、確定申告すれば損益通算できます。ただし、確定申告すると配当金が所得に含まれ、健康保険料や扶養控除に影響する可能性があるので注意が必要です。
Q:譲渡損失の繰越控除とは?
株式の売買で損失が出た年に確定申告をすると、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。例えば、2025年に100万円の損失が発生し、同年に配当所得が20万円あった場合、損益通算により2025年の所得は80万円の損失となります。この80万円は2026年から2028年までの3年間、株式の売買で得た利益や配当所得と相殺できます。
繰越控除を利用するには、損失が発生した年から連続して確定申告をする必要があります。途中で申告をやめると、繰越控除の権利が失われるので注意しましょう。
Q:ベトナム現地証券会社の取引明細が英語やベトナム語の場合は?
税務署に提出する書類は原則として日本語である必要がありますが、実務上は英語の書類でも受け付けてもらえるケースが多いです。ベトナム語の場合は、主要な項目(日付、銘柄、金額、税額など)について日本語訳を添付すると親切です。
私の場合は、取引明細をExcelで整理し直して、日本語の項目名を付けた一覧表を作成しています。これを添付書類として提出することで、税務署でもスムーズに確認してもらえます。
Q:確定申告を忘れたり間違えたりした場合は?
確定申告を忘れた場合は、気づいた時点で速やかに「期限後申告」を行いましょう。無申告加算税(15〜20%)や延滞税がかかる可能性がありますが、早めに対応すれば軽減されるケースもあります。
申告内容に誤りがあった場合、納める税金が不足していれば「修正申告」、還付される税金が少なかった場合は「更正の請求」を行います。いずれも気づいた時点で速やかに対応することが重要です。
私も一度、配当金の集計漏れで修正申告をした経験があります。正直なところ、かなり焦りましたが、すぐに税務署に相談して修正申告をしたので、大きな問題にはなりませんでした。
Q:税務調査が心配です
正しく申告していれば、税務調査を恐れる必要はありません。ただし、以下のような場合は調査対象になりやすいと言われています。
・申告内容に明らかな矛盾や誤りがある ・所得に対して不自然に経費が多い ・高額な所得があるのに申告していない ・過去に申告漏れや脱税の履歴がある
取引記録や証憑書類は最低7年間保管しておくことをおすすめします。私は毎年ファイルにまとめて、年度ごとに保管しています。
2026年確定申告に向けた準備チェックリスト
確定申告をスムーズに進めるために、以下のチェックリストを活用してください。
2025年12月までに
□ 年間の取引記録を整理する □ 配当金の受取記録を確認する □ 為替レートの記録を整理する □ 必要書類のダウンロード方法を確認する □ 確定申告の方法(e-Tax/郵送/持参)を決める
2026年1月中に
□ 特定口座年間取引報告書を入手する □ 配当金のお知らせを入手する □ 現地証券会社の取引明細をダウンロードする □ 外国税額控除の計算をする □ 不明点があれば税務署に相談する
2026年2月〜3月15日まで
□ 確定申告書を作成する □ 外国税額控除に関する明細書を作成する □ 必要書類を準備する □ 申告書を提出する □ 納税または還付申請をする
まとめ:確定申告を味方につけよう
ベトナム株の確定申告は、最初は複雑に感じるかもしれませんが、一度経験すれば翌年からはスムーズに進められます。特に外国税額控除を活用すれば、ベトナムで支払った税金を取り戻せるので、必ず申告することをおすすめします。
私自身、最初の年は税務署に3回も足を運び、かなり時間がかかりました。しかし、2年目以降は要領がわかり、今では2〜3時間で完了できるようになりました。書類を整理する習慣をつけておけば、確定申告はそれほど大変な作業ではありません。
確定申告は義務であると同時に、自分の投資成績を振り返る良い機会でもあります。年間でどれだけ利益が出たのか、どの銘柄が好調だったのか、税金をいくら払ったのかを確認することで、次年度の投資戦略も立てやすくなります。
不安な点や疑問がある場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談することをおすすめします。特に高額な取引をしている方や、複雑な取引をしている方は、専門家の助言を受けた方が安心です。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナム株確定申告ガイドについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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付録:実際の計算例
最後に、具体的な数字を使った計算例をご紹介します。実際のイメージが湧きやすくなると思います。
ケース1:日本の証券会社でベトナム株を売却(利益あり)
取引内容
- 購入:FPT株100株を1株120,000VND(計12,000,000VND)で購入
- 売却:同じ株を1株150,000VND(計15,000,000VND)で売却
- 為替レート:購入時1VND=0.0055円、売却時1VND=0.0056円
- 手数料:購入時500円、売却時600円
計算
- 売却金額:15,000,000VND × 0.0056円 = 84,000円
- 取得費:12,000,000VND × 0.0055円 = 66,000円
- 譲渡益:84,000円 – 66,000円 – 500円 – 600円 = 16,900円
- 税金:16,900円 × 20.315% = 3,433円(所得税2,588円、住民税845円)
ベトナムでは租税条約により課税されないため、日本での納税のみで完結します。特定口座(源泉徴収あり)であれば、この税金は自動的に徴収されます。
ケース2:ベトナム現地証券会社で売却(外国税額控除あり)
取引内容
- 売却:VIC株200株を1株100,000VND(計20,000,000VND)で売却
- 購入時の取得費:15,000,000VND
- 為替レート:購入時1VND=0.0054円、売却時1VND=0.0056円
- 現地手数料:0.25%(50,000VND)
計算
- 売却金額(円換算):20,000,000VND × 0.0056円 = 112,000円
- 取得費(円換算):15,000,000VND × 0.0054円 = 81,000円
- 譲渡益:112,000円 – 81,000円 = 31,000円
ベトナムでの税金
- 売却代金の0.1%:20,000,000VND × 0.1% = 20,000VND(約112円)
日本での税金
- 譲渡益に対する税金:31,000円 × 20.315% = 6,298円
- 外国税額控除:112円(ベトナムで支払った分)
- 実際の納税額:6,298円 – 112円 = 6,186円
このように、ベトナムで支払った112円は日本の税金から控除されるため、二重課税は回避されます。
ケース3:配当金の受取(外国税額控除あり)
配当内容
- 保有株:ACB株1,000株
- 1株あたり配当:1,500VND
- 配当金合計:1,500,000VND
- 配当金入金日の為替レート:1VND=0.0056円
計算
- 配当金(円換算):1,500,000VND × 0.0056円 = 8,400円
ベトナムでの源泉徴収
- 配当の5%:1,500,000VND × 5% = 75,000VND(約420円)
- 実際の入金額:1,425,000VND(約7,980円)
日本での税金
- 配当所得に対する税金:8,400円 × 20.315% = 1,706円
- 外国税額控除:420円(ベトナムで支払った分)
- 実際の納税額:1,706円 – 420円 = 1,286円
申告分離課税を選択し、確定申告で外国税額控除を申請することで、ベトナムで支払った420円が戻ってきます。
ケース4:複数口座での損益通算
取引内容
- A証券:FPT株の売却で50万円の損失
- B証券:配当金20万円を受取(すでに20.315%が源泉徴収済み)
損益通算前
- A証券:-50万円(税金なし)
- B証券:+20万円(税金40,630円が源泉徴収済み)
損益通算後(確定申告)
- 合計所得:-50万円 + 20万円 = -30万円
- 配当から源泉徴収された40,630円が全額還付
このように確定申告により損益通算すると、約4万円が戻ってきます。これは大きいですよね。私も毎年この制度を活用しています。
ケース5:損失の繰越控除
2025年の取引
- 株式売却で100万円の損失
- 配当金20万円受取
2025年の確定申告
- 損益通算:-100万円 + 20万円 = -80万円の損失
- この80万円を翌年以降3年間繰り越し可能
2026年の取引
- 株式売却で50万円の利益
- 配当金10万円受取
2026年の確定申告
- 当年の所得:50万円 + 10万円 = 60万円
- 前年の繰越損失:-80万円
- 相殺後:60万円 – 60万円 = 0円
- 残りの繰越損失:-20万円(2027年、2028年に繰り越し可能)
- 税金:0円(60万円分の税金約12万円が節税できる)
繰越控除を活用すれば、損失の年があっても無駄になりません。ただし、毎年連続して確定申告する必要があるので忘れないようにしましょう。
税務署での実際の体験談
最後に、私が実際に税務署で確定申告した時の体験談をお話しします。
初めてベトナム現地証券会社での取引を確定申告した年のことです。外国税額控除の申請方法がよくわからず、税務署の相談窓口に行きました。
担当の方は最初、「ベトナム株?珍しいですね」という反応でしたが、取引明細と配当金の支払通知書を見せると、丁寧に対応してくださいました。「ベトナムでの源泉徴収は0.1%と5%ですね。では外国税額控除に関する明細書に記入しましょう」と、一緒に書類を作成してくれました。
一点だけ注意を受けたのは、ベトナムドンから円への換算レートについてです。「為替レートの根拠を示せるようにしておいてください」と言われ、私は日本銀行のサイトから該当日のレートを印刷して添付しました。
全体で1時間ほどかかりましたが、無事に申告を完了できました。後日、外国税額控除分の還付金が振り込まれた時は、本当にホッとしましたね。
翌年からはe-Taxで電子申告するようになり、自宅で30分程度で完了できるようになりました。やはり一度経験すると要領がわかります。
今すぐ始めるべき準備
2026年2月の確定申告シーズンまで、まだ数ヶ月あります。今から準備を始めれば、余裕を持って対応できます。
まず、今年の取引記録を整理してみましょう。Excelやスプレッドシートで、購入日、売却日、銘柄、数量、金額、為替レート、手数料などを記録しておくと便利です。私はこんな形式で管理しています。
日付 | 銘柄 | 取引 | 数量 | 単価(VND) | 金額(VND) | 為替レート | 金額(円) | 手数料 | 税金
配当金についても同様に記録します。
支払日 | 銘柄 | 配当額(VND) | 為替レート | 配当額(円) | 現地源泉税 | 日本源泉税
これらのデータがあれば、確定申告の際にスムーズに入力できます。
また、不明点があれば早めに税務署に相談しましょう。確定申告期間中は混雑するので、12月や1月に相談に行くと比較的空いています。私も毎年、年明けすぐに一度税務署を訪れて、今年の取引で何か特別な対応が必要かを確認しています。
ベトナム株投資は、税制を理解して適切に確定申告すれば、決して難しいものではありません。むしろ、外国税額控除などの制度を活用することで、税負担を適正化できる大きなメリットがあります。
この記事が、皆さんのベトナム株投資の一助になれば幸いです。確定申告を味方につけて、安心してベトナム株投資を楽しみましょう。
【免責事項】 本記事の内容は、情報提供のみを目的としており、いかなる金融商品または仮想通貨への投資の推奨を意図するものではありません。ベトナム株式投資は価格の変動が大きく、リスクを伴う投資対象です。投資判断はご自身の責任に基づいて行ってください。本記事で提供される情報の正確性、完全性、または最新性については、最大限の注意を払っていますが、保証するものではありません。投資の際には、専門家への相談を推奨いたします。この記事は、法的、税務的、または財務的なアドバイスを提供するものではありません。本記事の情報に基づいて行われた投資による損失や損害について、執筆者および当ウェブサイトは一切の責任を負いません。株式投資およびその関連商品に投資する際は、各国の規制および法律を確認し、法令を遵守することが重要です。
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