こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。
今回は、ドラゴンキャピタルが運用するもう一つのベトナム株ETF「VNダイアモンドETF(FUEVFVND)」の2025年8月レポートを詳しく解説します。先ほど解説したVEILと同様、8月は大きく上昇しましたが、こちらのETFにはまた違った特徴があります。
【VNダイアモンドETFとは】
VNダイアモンドETFは、ホーチミン証券取引所に上場する企業で構成される「ベトナム・ダイアモンド指数」に連動するETFです。この指数の特徴は以下の通り:
- 時価総額
- 取引代金
- PER(株価収益率)
- 外国人保有枠(FOL)
これらの要素を総合的に考慮して構成銘柄を選定しています。注目すべきは、19銘柄中11銘柄(ファンドの61.8%)が外国人保有枠の90%以上を埋めている点です。つまり、人気が高く外国人投資家からの需要が強い銘柄を厳選しているということです。
【ファンド基本情報】
- 運用資産総額: 14兆720億VND(5億3,410万ドル)
- 1口あたりNAV: 40,378.7 VND(1.5ドル)
- ファンドコード: FUEVFVND
- 上場市場: ホーチミン証券取引所(HOSE)
- 運用報酬: 0.80%
- 経費率(TER): 1.04%
- トラッキングエラー: 0.49%
トラッキングエラーが0.49%と非常に小さいことから、ベンチマークである「VNダイアモンド指数」を高精度で追跡できていることが分かります。
【8月のパフォーマンス】
圧倒的なリターン
2025年8月、VNダイアモンドETFは**月次で15.5%**という驚異的な上昇を記録しました。これは2020年5月以来の最高のパフォーマンスです。
期間別リターン(VND建て):
- 1ヶ月: +15.5%
- 3ヶ月: +25.9%
- 年初来: +20.0%
- 12ヶ月: +20.3%
- 設定来: +303.8%
設定来で303.8%のリターンというのは驚異的です。つまり、このETFに投資した資金が約4倍になったということです。
ベンチマーク比較
興味深いのは、VNダイアモンド指数自体のパフォーマンスとの比較です:
| 期間 | FUEVFVND | VNダイアモンド指数 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月 | +15.5% | +15.5% | 0.0% |
| 3ヶ月 | +25.9% | +25.3% | +0.6% |
| 年初来 | +20.0% | +19.1% | +0.9% |
| 12ヶ月 | +20.3% | +19.4% | +0.9% |
| 設定来 | +303.8% | +288.2% | +15.6% |
長期で見ると、ETFがベンチマークを15.6%もアウトパフォームしています。これは配当再投資効果と優れた運用によるものです。
【8月の市場環境】
レポートから読み取れる8月のベトナム株市場の状況:
市場の熱狂
株価指数の動き
- VN-Indexが何度も過去最高値を更新
- 一時1,700ポイントに接近(月末に利益確定売り)
- 米ドル建てトータルリターンで+11.5%
流動性の爆発
- 1日平均売買代金: 19億ドル
- 最高値: 8月5日に33億ドルを記録
- 8月の新規口座開設数: 25万口座以上(前月比+13.8%)
私がホーチミンに住んでいて感じるのは、この株式市場の盛り上がりです。カフェやレストランで、株の話をしている人を見かけることが増えました。特に若い世代の参加が目立っています。
マクロ経済指標
公共投資と外国直接投資
- 公共投資執行額: 前年同期比+34.5%
- FDI実行額: 前年同期比+12.5%
- FDI認可総額: 261億ドル(前年同期比+27.3%)
貿易収支
- 輸出: 前年同期比+14.5%
- 輸入: 前年同期比+17.7%
- 月次貿易黒字: 約37億ドル
インフレと生産
- CPI(消費者物価指数): 前年同期比+3.2%
- コアインフレ: 約3.2%(7月から若干低下)
- 工業生産: 前年同期比+8.9%
- PMI(購買担当者景気指数): 50.4(7月から若干低下)
銀行セクター
- 信用成長: 年初来で約11.1%
- 中央銀行が預金準備率を半減(流動性供給策)
- VND為替レート: 年初来で約3.3%減価
これらのデータを見ると、ベトナム経済が非常にバランスの取れた成長を遂げていることが分かります。輸出入ともに2桁成長を維持しながら、インフレは3%台前半に抑えられています。
【IPOパイプラインの活況】
レポートで特に注目すべきは、大型IPO案件の動きです:
テクコム証券(TCBS)のIPO
- 年末までに上場予定
- 予想時価総額: 40億ドル超
- ベトナム最大の上場証券会社になる見込み
VP銀行証券のIPO
- 資金調達額: 約1億7,000万ドル
- 浮動株比率: 約25%
- 今後数四半期以内に実施予定
その他の注目IPO
- Gelexインフラストラクチャー
- CPグループ
- ハイランドコーヒー
- モバイルワールド関連のスピンオフ
これらの大型IPOは、ベトナム株市場のさらなる成熟化と流動性向上につながる重要な出来事です。特にTCBSのIPOは、40億ドル超という規模から、市場に大きなインパクトを与えるでしょう。
【セクター別構成比】
VNダイアモンドETFのセクター別構成(2025年8月末時点):
- 銀行: 44.9%
- 小売: 22.4%
- IT: 12.1%
- 運輸: 7.6%
- 不動産(住宅): 6.8%
- コングロマリット: 3.8%
- 工業: 1.8%
- 現金その他: 0.5%
VEILと比較すると、VNダイアモンドETFは銀行セクターの比率が若干高く(44.9% vs 40.0%)、小売セクターへの配分も大きいのが特徴です。
【トップ10保有銘柄】
| 順位 | 銘柄 | セクター | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 1 | モバイルワールド(MWG) | 小売 | 14.4% |
| 2 | FPT | IT | 12.1% |
| 3 | テクコムバンク(TCB) | 銀行 | 10.7% |
| 4 | PNJジュエリー(PNJ) | 小売 | 8.0% |
| 5 | VP銀行(VPB) | 銀行 | 8.0% |
| 6 | MB銀行(MBB) | 銀行 | 7.8% |
| 7 | ジェマデプト(GMD) | 運輸 | 7.6% |
| 8 | アジア商業銀行(ACB) | 銀行 | 6.3% |
| 9 | HDバンク(HDB) | 銀行 | 4.6% |
| 10 | REE | コングロマリット | 3.8% |
注目ポイント
1. モバイルワールド(MWG)が最大保有銘柄 構成比14.4%と最も高い比率を占めています。MWGは、ベトナム最大の家電小売チェーン「thegioididong.com」を運営する企業で、スマートフォンや家電製品の販売で圧倒的なシェアを持っています。
私もホーチミンでよくMWGの店舗を利用しますが、いつも客で賑わっています。特に週末は家族連れで混雑しており、ベトナムの消費拡大を肌で感じます。
2. FPTが2位(12.1%) ベトナム最大のIT企業FPTが2位です。FPTは、ソフトウェア開発、ITサービス、通信事業を手がける総合IT企業で、日本企業との取引も多数あります。
3. 銀行株が上位を占める トップ10のうち5銘柄が銀行株で、合計で約37.4%を占めます。これは、ベトナム経済の成長において銀行セクターが中心的な役割を果たしていることを示しています。
【ポートフォリオ統計分析】
VNダイアモンドETFとVN-Indexの比較:
| 指標 | FUEVFVND | VN-Index |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 14.2倍 | 15.2倍 |
| PBR(株価純資産倍率) | 2.2倍 | 2.1倍 |
| 配当利回り | 2.0% | 1.5% |
| ベータ値 | 1.1 | 1.0 |
| 標準偏差 | 21.6% | 20.5% |
| シャープレシオ | 0.4 | 0.3 |
分析のポイント
1. バリュエーションの優位性 VNダイアモンドETFのPERは14.2倍と、市場全体の15.2倍よりも低い水準です。つまり、より割安な銘柄で構成されているということです。
2. 高い配当利回り 配当利回りが2.0%と、市場平均の1.5%を0.5%上回っています。インカムゲイン狙いの投資家にとっても魅力的です。
3. リスク・リターン特性
- ベータ値1.1: 市場よりやや高いボラティリティ
- 標準偏差21.6%: 市場(20.5%)よりわずかに高い
- シャープレシオ0.4: リスク調整後リターンは市場(0.3)を上回る
これらのデータから、VNダイアモンドETFは市場全体よりもわずかにリスクは高いものの、それに見合ったリターンを提供していることが分かります。
【VEILとの比較】
同じドラゴンキャピタルが運用する2つのETFを比較してみましょう:
| 項目 | VEIL | VNダイアモンドETF |
|---|---|---|
| 8月リターン | 14.6% | 15.5% |
| 年初来リターン | 26.6% | 20.0% |
| 銘柄数 | 多数(分散型) | 19銘柄(集中型) |
| 最大保有銘柄 | ビンホームズ(7.8%) | モバイルワールド(14.4%) |
| 銀行セクター比率 | 40.0% | 44.9% |
| 小売セクター比率 | 7.6% | 22.4% |
| 運用報酬 | 非開示 | 0.80% |
どちらを選ぶべきか?
VEILが向いている投資家:
- より分散されたポートフォリオを好む
- ロンドン市場で取引したい(GBP、USD建て)
- 不動産セクターへの配分を重視
VNダイアモンドETFが向いている投資家:
- 厳選された高品質銘柄に集中投資したい
- ベトナム国内市場で取引したい(VND建て)
- 小売・IT・運輸セクターへの配分を重視
- より高い配当利回りを求める(2.0%)
個人的には、両方に分散投資するのも一つの戦略だと考えています。VEILで市場全体の成長を捉えつつ、VNダイアモンドETFで厳選された高品質銘柄にも投資する、という形です。
【外国人投資家の動向】
レポートによると、8月は外国人投資家による継続的な売り越しがありました:
売り越しが集中したセクター:
- ビングループの大口取引
- 銀行株
- 鉄鋼株
- テクノロジー株
しかし、これを上回る国内投資家の買いが入ったため、市場全体は大きく上昇しました。25万口座以上の新規開設という数字が、国内投資家の旺盛な需要を物語っています。
外国人投資家の売りは、必ずしもネガティブなシグナルではありません。むしろ、国内投資家が市場の主役になりつつあることを示しており、ベトナム株市場の成熟化を表しています。
【中央銀行の政策】
8月に注目すべきは、ベトナム中央銀行の積極的な政策対応です:
流動性供給策
- 預金準備率を半減(銀行の貸出余力を拡大)
- キャンセル可能なフォワード契約を活用してVNDを安定化
為替政策
- VNDは年初来で約3.3%減価
- 適度な減価を容認することで輸出競争力を維持
- 同時に急激な変動は抑制
これらの政策は、経済成長と物価安定のバランスを取りながら、市場に適切な流動性を供給しようという姿勢を示しています。私は、この中央銀行の柔軟な政策運営を高く評価しています。
【今後の注目ポイント】
1. 大型IPOラッシュ
テクコム証券(TCBS)を皮切りに、複数の大型IPOが控えています。これらは市場の流動性をさらに高め、投資機会を拡大するでしょう。
2. FTSE新興国市場への格上げ
先ほどのVEILレポートでも触れましたが、ベトナムがFTSE新興国指数に格上げされる可能性があります。実現すれば、大量のパッシブ資金の流入が期待できます。
3. 信用成長の継続
年初来で11.1%という高い信用成長率は、企業の設備投資や個人消費の活発さを示しています。この傾向が続けば、企業業績のさらなる改善が期待できます。
4. 公共投資の加速
公共投資が前年同期比+34.5%と急増しています。政府が経済成長を強力に後押ししている証拠で、インフラ関連企業にとって追い風です。
【リスク要因】
もちろん、リスクも認識しておく必要があります:
1. 短期的な調整リスク
8月の15.5%という急激な上昇の後、9月に調整局面に入る可能性があります。実際、レポートでも「月末の利益確定売り」に言及されています。
2. 外国人投資家の継続的な売り越し
国内投資家が吸収しているとはいえ、外国人の売り圧力が続くと、中長期的には株価の重石になる可能性があります。
3. 為替リスク
VNDが年初来で3.3%減価しており、今後も緩やかな減価トレンドが続く可能性があります。円建てやドル建てで投資する場合、為替差損のリスクがあります。
4. インフレ加速リスク
現在のインフレ率3.2%は管理可能な水準ですが、公共投資の急増や信用拡大が続くと、インフレが加速するリスクがあります。
5. PMIの低下
8月のPMIが50.4と、7月から若干低下しました。製造業の勢いが鈍化する初期兆候の可能性もあります。
【投資戦略の提案】
短期投資家向け(1-3ヶ月)
慎重姿勢を推奨
- 8月の急騰後、短期的な調整局面に入る可能性が高い
- 新規購入は調整を待つか、段階的に
- 既存保有者は部分利益確定も検討
中期投資家向け(3-12ヶ月)
押し目買いの機会を狙う
- IPOラッシュやFTSE格上げ期待は中期的にポジティブ
- 調整局面があれば積極的に買い増し
- 銀行・小売・IT セクターの成長トレンドは継続見込み
長期投資家向け(1年以上)
積極的な買い姿勢を維持
- 設定来303.8%のリターンが示す通り、長期では高いリターンを実現
- GDP成長率8%台が続く限り、企業業績の改善トレンドは継続
- 短期的な調整は長期投資家にとって買い増しの好機
私自身の投資スタンスは、長期保有を基本としながら、大きな調整局面では追加投資するというものです。ベトナム経済の構造的な成長ストーリーは変わっていないため、短期的な値動きに一喜一憂する必要はないと考えています。
【まとめ】
VNダイアモンドETF(FUEVFVND)の2025年8月レポートから読み取れる重要ポイント:
ポジティブ要因
✓ 8月に15.5%の大幅上昇(2020年5月以来の最高パフォーマンス) ✓ 設定来で303.8%の累積リターン ✓ 1日平均売買代金19億ドル(市場の高い流動性) ✓ 25万口座以上の新規開設(国内投資家の旺盛な需要) ✓ 大型IPOラッシュの到来 ✓ マクロ経済指標の良好な推移 ✓ 高い信用成長率(年初来11.1%) ✓ 公共投資の急増(前年同期比+34.5%)
注意要因
⚠ 短期的な調整リスク(急騰後の利益確定売り) ⚠ 外国人投資家の継続的な売り越し ⚠ VNDの緩やかな減価トレンド(年初来3.3%) ⚠ インフレ加速の潜在的リスク ⚠ PMIの若干の低下
総合評価:BUY(買い推奨)
短期的には調整のリスクはあるものの、中長期的な成長ストーリーは極めて魅力的です。特に以下の点を評価します:
- 厳選された19銘柄という集中投資戦略
- PER 14.2倍という割安なバリュエーション
- **配当利回り2.0%**というインカムゲイン
- **設定来303.8%**という実績
- 大型IPOラッシュという今後のカタリスト
VNダイアモンドETFは、ベトナム株市場の中でも特に質の高い企業に集中投資するETFです。VEILが市場全体の成長を捉える「コア投資」だとすれば、VNダイアモンドETFは厳選銘柄で高リターンを狙う「サテライト投資」と位置づけられます。
ベトナム株投資を始めたい方、あるいはすでに投資している方にとって、VNダイアモンドETFは検討に値する魅力的な選択肢です。ただし、短期的な調整局面に入る可能性もあるため、タイミングを見極めながら段階的に投資することをお勧めします。
いかがでしたでしょうか。今回のVNダイアモンドETF分析について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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