こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。
ベトナム株式市場が重要な転換点を迎えています。世界的な指数算出会社FTSE Russellによる市場格上げの正式発表が、2025年10月8日(ベトナム時間)に迫っています。
ハノイで生活していると、街中の証券会社や銀行で「FTSE格上げ」の話題が飛び交っています。投資家仲間との会話でも、この話題が中心です。今回は、この歴史的な出来事について、現地の肌感覚を交えながら詳しく解説します。
FTSE Russell格上げとは何か―基本を理解する
FTSE Russellは、ロンドン証券取引所傘下の世界的な指数算出会社です。この会社が各国の株式市場を「先進国市場」「新興国市場(エマージング)」「フロンティア市場」などに分類しています。
ベトナムは現在「フロンティア市場」に分類されていますが、今回の審査で「セカンダリー・エマージング(新興国市場二次)」への格上げが検討されているのです。
なぜこれが重要なのか。格上げが実現すれば、FTSE新興国指数やFTSEアジア指数を参照する世界中の投資ファンドが、自動的にベトナム株を組み入れることになります。つまり、巨額の国際資金がベトナム市場に流入する可能性があるのです。
今週のマーケット動向―格上げ待ちの様子見ムード
ベトナム証券委員会の報告によると、9月29日から10月3日の週のVN-Index(ホーチミン証券取引所の代表的な指数)は1.4%下落し、1,645.82ポイントとなりました。これは2週連続の下落です。
一方で、VN30(大型株30銘柄で構成される指数)は0.37%上昇して1,859.51ポイント。大型株と中小型株で明暗が分かれた形です。
注目すべきは取引高の減少です。ホーチミン証券取引所の1日平均取引量は前週比10.6%減の8億1,400万株。これは明らかに投資家が様子見姿勢を強めている証拠です。
ハノイの証券会社を訪れると、「格上げ発表まで大きな動きは控えよう」という空気が漂っています。誰もが10月8日の発表を待っている状態なのです。
外国人投資家の動向―11週連続の売り越し
気になるのが外国人投資家の動きです。この週だけで7,200億ドン(約40億円)もの売り越しとなり、なんと11週連続での売り越しとなっています。
「格上げ前なのに、なぜ外国人投資家は売っているのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
これには2つの理由が考えられます。
第一に、一部の投資家は格上げ前に利益確定を進めている可能性があります。特に短期的な投資家は、不確実性を避けるために一旦ポジションを整理しているのかもしれません。
第二に、格上げされた後により良い価格で買い直すという戦略です。格上げが正式に決まれば、より明確な投資判断ができるため、その時点で本格的に資金を投入しようと考えているファンドもあるでしょう。
ハノイの外資系証券会社で働く友人に聞いたところ、「格上げ後の方が社内稟議が通りやすい」という事情もあるそうです。つまり、格上げが正式決定されれば、組織的に大規模な投資が可能になるというわけです。
今週の市場展望―横ばいか、それとも急騰か
証券大手のSHSは、今週のVN-Indexについて「1,600-1,630ポイントが下値支持線、1,660-1,680ポイントが上値抵抗線となり、横ばい推移が続く」と予想しています。
Pinetree証券のグエン・タン・フォン氏も同様の見解で、「10月8日の発表まで、狭い範囲での取引が続くだろう」と述べています。
ただし、フォン氏は興味深い指摘もしています。「VIC(ビングループ)、VRE(ビンホームズの不動産投資信託)、LPB(リエンベトナム郵政銀行)などが市場を牽引する可能性がある」そうです。
実際、私のポートフォリオでもVICは重要な位置を占めています。この銘柄の動きは、市場全体のセンチメントを示すバロメーターとなっています。
格上げが実現した場合の資金流入規模
HSBCの分析によると、格上げが実現した場合、以下の規模の資金流入が見込まれます。
パッシブファンドから: 約15億ドル(約2,100億円)
これは主にFTSE新興国指数やFTSEグローバル指数(米国除く)に連動するファンドからの流入です。これらのファンドは指数の構成に従って機械的にベトナム株を組み入れる必要があるため、確実性の高い資金流入と言えます。
アクティブファンドから: 19億ドルから74億ドル(約2,700億円~1兆400億円)
アクティブファンドの場合、既にベトナムに投資しているファンドも多いため、追加的な流入規模には幅があります。ただし、格上げによって投資制限が緩和されるファンドもあるため、中長期的には大きな資金流入が期待できます。
ベトナムの時価総額がFTSEアジア指数で約0.6%、FTSE新興国指数で約0.5%を占めると予想されていますが、もしインドネシア並みの1.3%まで高まれば、流入額は30億ドル規模に達する可能性もあります。
格上げされなかった場合のシナリオ
では、もし格上げが見送られたらどうなるのでしょうか。
Pinetree証券のフォン氏は率直に語っています。「格上げが実現しなければ、市場は中期的な調整局面に入る可能性がある。数か月単位での下落トレンドも覚悟しなければならない」
ただし、フォン氏自身はこの可能性を「かなり低い」と見ています。なぜなら、ベトナム政府は格上げ基準9項目すべてを満たしたと公式に発表しているからです。
ベトナム財務省のグエン・ヴァン・タン大臣も9月中旬、「ベトナムはFTSE Russellの格上げ基準を満たすために努力を尽くした」と自信を示しています。
2024年11月に実施されたプレファンディング規制の緩和、韓国取引所(KRX)システムの導入、新しい取引・決済メカニズムの整備など、政府は格上げに向けて着実に準備を進めてきました。
ハノイから見たベトナム市場の実力
ここで、現地在住者としての実感をお伝えしたいと思います。
ハノイで生活していて感じるのは、ベトナム経済の底堅い成長力です。街を歩けば、新しいオフィスビルや商業施設が次々と建設されています。若者たちの購買意欲も旺盛で、カフェやレストランは常に賑わっています。
特に印象的なのが、デジタル化の進展です。モバイルバンキングやQRコード決済が完全に日常生活に浸透しており、現金を使う機会がめっきり減りました。
この経済の活力が、株式市場にも反映されるべきだと感じています。現在のフロンティア市場という分類は、ベトナムの実力を正当に評価していないと言わざるを得ません。
投資家が取るべき3つの戦略
では、この重要な局面で、投資家はどのような戦略を取るべきでしょうか。
戦略1: 慎重な資金管理を維持する
証券大手のVCBSは「格上げ結果と第3四半期決算発表を見守りながら、リスク管理を徹底すべき」と助言しています。今は無理にポジションを増やす時期ではありません。
戦略2: ファンダメンタルズの良好な銘柄を選別する
SHS証券は「基本的な要素が優れた企業、業界のリーダー企業、経済成長を牽引する戦略的セクターの銘柄に注目すべき」と推奨しています。
私のポートフォリオでも、FPT(IT最大手)、VIC(不動産・小売コングロマリット)、VCB(ベトコムバンク)といった業界トップ企業を中心に保有しています。
戦略3: ETFでの分散投資を検討する
個別銘柄の選択に自信がない場合は、ベトナム株式ETFを活用するのも良い選択肢です。私も資産の一部をFUEFVND(大型株ETF)やE1VFVN30(VN30連動ETF)で保有しています。
第3四半期決算シーズンも控える
格上げ発表の時期は、ちょうど第3四半期の決算発表シーズンとも重なります。
企業業績が好調であれば、格上げと相まって市場に大きなポジティブサプライズを与える可能性があります。逆に業績が期待外れであれば、格上げ効果が相殺されるかもしれません。
ハノイのビジネス界では、今年の第3四半期について楽観的な見方が多いようです。製造業の生産活動は堅調で、消費も底堅い。IT業界も引き続き好調です。
ただし、不動産セクターには慎重な見方もあります。政府の規制強化により、一部のデベロッパーは資金調達に苦労しているという話も聞きます。
まとめ―歴史的瞬間を冷静に見守る
10月8日のFTSE Russell発表は、ベトナム株式市場にとって間違いなく歴史的な瞬間となります。
格上げが実現すれば、数十億ドル規模の国際資金が流入し、市場の流動性と透明性が飛躍的に向上するでしょう。ベトナム企業にとっても、資金調達の選択肢が広がります。
一方で、短期的には期待先行で株価が乱高下する可能性もあります。冷静な判断が求められる局面です。
私自身は、格上げの有無にかかわらず、ベトナム経済の長期的な成長ポテンシャルを信じています。年率6-7%のGDP成長、1億人の人口、若い労働力、政治的安定性―これらの基本条件は何も変わりません。
格上げは、その価値が世界に正式に認められるという意味で重要ですが、ベトナムの本質的な魅力は格上げの有無に左右されるものではないのです。
ただし、今週は慎重に市場を見守り、10月8日の発表後に冷静に対応する。それが賢明な投資家の姿勢だと考えています。
いかがでしたでしょうか。今回のFTSE格上げ問題について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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