こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。
現金の束を持ち歩く日々、もう終わりました。
ハノイで生活していると、この変化を肌で感じます。朝、近所のバインミー屋台でスマホをかざす。タクシーに乗ってアプリで支払う。友人とのランチ代を割り勘するのもアプリ内で一瞬。財布を開く機会が、本当に減りました。
ほんの5年前は違った。2020年頃のベトナムは、まだ現金が王様でした。高級レストランでさえ、紙幣の束で支払うのが普通。でも今、ハノイの旧市街を歩いていても、タイ湖エリアのカフェでも、どこでもQRコードが掲示されています。
この劇的な変化を牽引しているのが、今日紹介する4つの決済サービスです。実は、これらのサービスを提供する企業は上場していないものが多いのですが、ベトナム経済のデジタル化を理解する上で欠かせない存在なんです。
現金大国からデジタル先進国への大転換
ベトナムのキャッシュレス化、どれくらい進んでいるか想像できますか?
ベトナム国家銀行の目標は「2025年までに全取引の50%以上をキャッシュレスにする」というもの。2020年時点では10%程度だったことを考えると、この5年間の変化は驚異的です。
実際、僕自身も財布の中身が明らかに減りました。以前は100万VND札(約6,000円)を常に3〜4枚持ち歩いていましたが、今は緊急用に50万VND札が1枚あれば十分。ハノイの日常生活で現金が必要になることは、ほとんどありません。
この変革の主役が、これから解説する4つのサービスです。
1. 銀行アプリのQR決済:静かなる革命の主役
「地味だけど、実は一番重要」
これが銀行アプリによるQR決済の立ち位置です。Vietcombank、VietinBank、BIDV、Techcombankなど、ベトナムの主要銀行は全てモバイルアプリを提供していて、その中核機能がQR決済なんです。
なぜ銀行アプリQR決済が重要なのか
理由は3つあります。
まず、手数料が無料または格安。銀行口座から直接送金するので、中間業者に手数料を取られません。僕がよく行く果物屋さんのおばちゃんも、「銀行QRなら手数料ゼロだから嬉しい」と言っていました。
次に、「VietQR」という統一規格。これ、実はすごいんです。どの銀行のアプリからでも、他の銀行のQRコードを読み取って送金できる。日本で例えるなら、三菱UFJ銀行のアプリから三井住友銀行のQRコードに送金できるようなもの。相互運用性が完璧なんです。
そして、推定2,500万〜3,000万人が銀行アプリを保有。ベトナムの人口が約1億人ですから、成人の約半数が使っている計算になります。
実際の使い方
ハノイのロンビエン市場を歩いていると、野菜売りのおばちゃんの横にラミネートされたQRコードが貼ってあります。高級レストランでも、ビルの駐車場でも、タクシーの中でも、同じQRコードが。
支払う側は、自分の銀行アプリを開いてQRコードをスキャン、金額を入力して送金ボタンを押すだけ。店舗側はスマホで即座に入金を確認できます。
このシステムの素晴らしい点は、導入コストがゼロに近いこと。QRコードをプリントアウトするだけで、路上の屋台でもデジタル決済を受け付けられる。これが、ベトナムでキャッシュレス化が急速に進んだ最大の理由だと僕は考えています。
2. MOMO:3,500万人が使うスーパーアプリ
「ベトナム版PayPay+LINE Pay+楽天ペイ」と言えば、イメージしやすいでしょうか。
MOMOは単なる決済アプリではありません。送金、支払い、投資、保険、ローン、さらにはデリバリー注文、タクシー配車、映画チケット予約まで、全部このアプリ一つで完結します。
利用者数は3,500万人超。ベトナム人口の3分の1以上が使っている計算です。特に地方都市での普及率が高く、ハノイやホーチミンだけでなく、ダナン、ニャチャン、カントーといった地方都市でも日常的に使われています。
MOMOの何がすごいのか
僕が感心するのは、銀行口座を持たない人でも使えるという点です。
ベトナムには、まだ銀行口座を持っていない人が相当数います。農村部や低所得層を中心に、従来の金融システムからこぼれ落ちていた人々が多い。でもMOMOは、本人確認さえできれば銀行口座なしで利用を開始できる。
これにより、金融包摂(Financial Inclusion)が一気に進みました。今まで現金しか使えなかった人々が、スマホ一つでデジタル経済に参加できるようになったんです。
僕のMOMO体験談
先日、ハノイの友人と食事をした後、割り勘をする場面がありました。1人250万VND(約1万5千円)。以前なら現金を用意する必要がありましたが、今は友人がMOMOで即座に送金してくれました。5秒で完了。
翌日、そのお金をMOMO内の投資信託に回しました。わざわざ銀行に行く必要もない。アプリ内で全てが完結する。この利便性、一度体験すると戻れません。
ちなみにMOMOは、2024年にシリーズE資金調達を実施し、評価額は20億ドル(約3,000億円)を超えたと報じられています。IPOの噂も絶えず、もし上場すれば、ベトナム株市場の大型案件になるでしょう。投資家としては、目が離せない企業です。
3. VNPAY:見えない巨人
「一般の人は知らない。でも、実はベトナムの決済インフラを支えている」
これがVNPAYです。
利用者数は約1,500万人と、MOMOやZaloPayと比べると少なく見えます。でも、VNPAYの本当の価値は消費者向けアプリではなく、B2B決済インフラにあります。
VNPAYのビジネスモデル
VNPAYは、銀行や企業向けに決済ソリューションを提供しています。多くのECサイト、オンラインサービス、公共料金支払いシステムの裏側で、VNPAYの技術が動いているんです。
電気代、水道代、ガス代の支払い。学費の納入。病院の診療費決済。生活に不可欠な支払いインフラとして、ベトナム社会に深く組み込まれています。
派手さはありません。でも、確実に収益を上げる堅実なビジネスモデル。投資家の視点で言えば、「地味だけど安定している」企業の典型例です。
QR決済規格の普及を主導
VNPAYは、先ほど紹介した「VietQR」規格の普及にも貢献しています。異なる銀行間でQRコードを相互利用できるのは、VNPAYのような企業が標準化を推進したからです。
こういう「社会インフラ」としての役割を果たしている企業は、長期的に安定した成長が期待できます。もしVNPAYが上場すれば、僕は間違いなく投資を検討するでしょう。
4. ZaloPay:若者を掴むSNS連携の力
「Zalo使ってる?」
ベトナムで誰かと連絡先を交換するとき、必ず聞かれる言葉です。Zaloはベトナム最大のSNSで、月間アクティブユーザーは7,000万人。ほぼ全てのベトナム人が使っていると言っても過言ではありません。
そのZaloから生まれたのがZaloPayです。利用者数は約2,000万人。特に10代〜30代の若者への浸透率が高い。
SNS統合の圧倒的な利便性
ZaloPayの最大の強みは、SNSとの完全統合です。
友人とチャットしながら、「お金送って」と言われたら、アプリを切り替えることなくZaloPay内で即座に送金できます。一緒に食事した後の割り勘も、アプリ内で完結。オンラインゲームの課金、コンサートチケットの購入、全部Zaloのエコシステム内で行えます。
若者にとって、ZaloPayは「便利な決済アプリ」ではなく、「生活の一部」なんです。
親会社VNG Corporationの存在感
ZaloPayの親会社は、ベトナム最大のIT企業VNG Corporationです。VNGは、オンラインゲーム、クラウドサービス、音楽ストリーミング、EC、AIなど幅広い事業を展開しています。
残念ながらVNGはベトナム国内では非上場ですが、将来的な上場の可能性は常に噂されています。もしVNGがIPOすれば、ベトナム株市場史上最大級の案件になるでしょう。僕は、その日を待っています。
4つのサービスの棲み分けと競合関係
「どれが一番強いの?」
よく聞かれる質問ですが、実は単純な競合関係ではないんです。それぞれが微妙に異なるポジションを取っています。
銀行アプリQR決済は、インフラとしての地位を確立。手数料の安さから、高額取引や企業間取引で優位性があります。僕が家賃を払う時は、必ず銀行アプリQR決済を使います。手数料ゼロですから。
MOMOは、包括的な金融サービスと生活サービスの融合。特に地方都市や、銀行口座を持たない層へのアプローチに強みがあります。「デジタル金融の民主化」を実現している企業と言えるでしょう。
VNPAYは、B2B決済と公共インフラに特化。企業や政府機関との連携を深め、社会インフラとしての地位を固めています。地味だけど、確実に利益を生むビジネスモデル。
ZaloPayは、SNS連携による若者の囲い込み。エンタメ、ソーシャルコマース分野で圧倒的な存在感を示しています。次世代の消費者を掴んでいる企業として、長期的な成長が期待できます。
実際、多くのベトナム人は複数のサービスを併用しています。僕自身も、銀行アプリで給与を受け取り、MOMOで日常の買い物をし、ZaloPayで友人との送金を行う、という使い分けをしています。
サービス同士は競合しているようで、実は共存している。これが、ベトナム決済市場の面白いところです。
政府主導のキャッシュレス化推進
ベトナム政府は、本気でキャッシュレス社会を目指しています。
ベトナム国家銀行が2021年に掲げた目標は「2025年までにキャッシュレス決済を全取引の50%以上にする」というもの。そのために、VietQR規格の統一、税制優遇、デジタル決済導入事業者への補助金など、様々な施策を展開しています。
COVID-19パンデミックも、皮肉なことにデジタル化を加速させました。対面取引を避けたい消費者と店舗の思惑が一致し、QR決済は一気に普及。2020年〜2022年の3年間で、デジタル決済額は約3倍に増えたと言われています。
ハノイで生活している僕の実感としても、パンデミック前後で街の風景が明らかに変わりました。以前は現金しか受け付けなかった小さな店が、今はQRコードを掲示している。この変化、本当に劇的でした。
投資家が注目すべきポイント
さて、投資家としての視点で、この決済市場をどう見るべきか。
市場規模の拡大
ベトナムは人口1億人、平均年齢32歳という若い市場です。スマホ普及率は現在約70%で、今後も上昇が見込まれます。中間層の拡大により、デジタル決済額は年率30%以上で成長しています。
この成長率、日本や米国では考えられません。新興国ならではの爆発的な成長機会がここにあります。
上場の可能性
MOMOは評価額20億ドル超、IPOの噂が絶えません。VNPAYやZaloPayの親会社VNGも、将来的な上場が期待されます。これらの企業が上場すれば、ベトナム株市場に新たな投資機会が生まれるでしょう。
僕自身、メンバーシップでは「もしMOMOやVNGが上場したら、どう投資すべきか」という分析を随時更新しています。上場前から企業を理解しておくことが、投資で勝つための鍵です。
決済データの価値
これらの企業が蓄積する決済データは、信用スコアリング、マーケティング、新規事業開発などに活用できる貴重な資産です。金融サービスだけでなく、データビジネスとしての成長可能性も高い。
中国のアリババやテンセントが、決済データを活用して巨大企業に成長したのと同じ道を、ベトナム企業も歩み始めています。
現金が消える日
ハノイの街を歩いていると、財布を持ち歩く必要性を感じなくなりつつあります。
タクシーも、コーヒーも、路上の屋台も、全部スマホ一つで支払える。ベトナムは、確実にキャッシュレス社会へと向かっています。
銀行アプリQR決済、MOMO、VNPAY、ZaloPayという4つの決済ソリューションは、それぞれ異なるアプローチでこの変革を推進しています。そしてこの変革は、まだ始まったばかり。
2030年には、ベトナムはアジアで最もキャッシュレス化が進んだ国の一つになっているかもしれません。その時、これら4つのサービスがどのような進化を遂げているのか。ベトナム株投資家として、また金融テクノロジーに興味を持つ者として、目が離せない展開が続きそうです。
現金が消える日は、もうすぐそこまで来ています。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナムのキャッシュレス革命について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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