AI法案が示すベトナムのAI戦略:ASEAN諸国をリードする国家AIインフラ整備へ

こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。

ハノイで生活していて感じるのは、ベトナム政府の「国家戦略」に対する本気度です。口だけじゃない。実際に予算をつけて、組織を作って、法律まで整備する。今回のAI法案も、まさにそういう動きの一つです。

2026年施行予定のAI法。「まだ先の話でしょ?」と思うかもしれません。でも、ベトナムに12年住んでいる僕から見ると、この動きは投資家として絶対に見逃せない。なぜか? それは、この法案が単なる規制じゃなくて、「国家AIインフラ整備」という巨大なビジネスチャンスを生み出すからです。

今回は、この法案が何を意味するのか、どの企業が恩恵を受けるのか、投資家として何に注目すべきかを、現地の肌感覚も交えて解説していきます。

目次

AI法案の核心:規制ではなく「国家プロジェクト」

今回のAI法案、報道を見ると「法案」という言葉から規制色が強い印象を受けるかもしれません。でも実態は全く逆。これ、規制じゃなくて「国家インフラ整備プロジェクト」なんです。

科学技術省が公表した草案によると、以下の3つの柱で構成されています。

国家AI委員会の設立 首相が委員長を務める委員会。つまり、政府のトップがAI政策を直接統括する体制です。科学技術省が一元管理するポータルサイトも整備されます。

国家AIインフラの整備 データセンター、高性能サーバークラスター、研究・イノベーション拠点、共用AIプラットフォームなどへの投資を推進。これ、国が本気でお金を出すということです。

国家AI開発基金の設立 国家予算外の非営利財政基金として運営され、AI戦略の実施を資金面で支援。「予算外」というのがポイントで、通常の国家予算とは別枠で資金が確保されるということです。

正直なところ、ベトナムって「計画は壮大だけど実行が…」みたいなイメージを持ってる人、多いと思うんです。僕も最初はそう思ってました。

でも、ハノイに住んで12年、いろんな国家プロジェクトを見てきて分かったことがあります。ベトナム政府って、一度「国家戦略」と決めたら、本当にやり切るんです。地下鉄プロジェクトも、遅れに遅れたけど、最終的には完成させた。高速道路網も、着実に整備されてます。

今回のAI法案も、そういう本気度を感じるんです。

3つのインフラ:それぞれ誰が儲かるのか?

法案では、国家AIインフラを3つに分類しています。投資家として注目すべきは、この分類ごとに恩恵を受ける企業が違うということ。

1. 国家行政・国防・安全保障を支えるインフラ(公安省・国防省管理)

これは、政府系ITベンダーの独壇場になります。セキュリティが最優先なので、民間企業が参入するのは難しい。ただし、政府系企業に部品やサービスを提供する企業は要注目です。

たとえば、通信大手のベトテル(Viettel)やFPTは、すでに国防・公安関連のプロジェクトで実績があります。今回のAIインフラ整備でも、中核的な役割を担う可能性が高い。

2. 科学技術・イノベーションを支援するインフラ(科学技術省主導)

ここは、大学・研究機関と連携する民間企業がチャンスです。FPTソフトウェア、Vinhグループ(Vingroup)傘下のVinAI、CMCコーポレーションなどが候補に上がります。

特にVinAIは、ベトナム最大の民間コングロマリットであるVinhグループの研究部門。自然言語処理、画像認識、音声認識などのAI研究で国内トップレベル。今回の法案で、政府からの研究資金が流入する可能性があります。

3. 経済発展を促進する民間投資インフラ(企業の自発的参加を奨励)

ここが一番面白い。国が「安全・中立・競争環境」を整備した上で、民間企業の参加を促すということです。つまり、条件を満たせば、スタートアップでも国家AIインフラの一部として認定される。

ハノイのスタートアップシーンを見ていると、AI関連のベンチャーが本当に増えてます。特にフィンテック、eコマース、ヘルステックの分野で。彼らにとって、この法案は追い風です。

「国家AIデータベース」と「国家AI開発基金」の破壊力

もう一つ、投資家として注目すべきは、「国家AIデータベース」と「国家AI開発基金」の設立です。

国家AIデータベース

高品質かつ統一的なデータ資源を形成するとのこと。これ、何が凄いかというと、今までベトナムのAI開発で一番のボトルネックだった「データ不足」が解消される可能性があるんです。

ベトナムって、人口9,800万人。EC、フィンテック、配車サービス、SNSなど、デジタルサービスの利用者が爆発的に増えてます。でも、データが分散していて、AI開発に使える形で整備されていなかった。

国がデータを統一的に管理・提供するようになれば、AI開発のスピードが一気に上がります。そして、このデータを使って新しいサービスを開発する企業が出てくる。投資家としては、そういう企業を早い段階で見つけることが重要です。

国家AI開発基金

国家予算外の非営利財政基金。つまり、通常の国家予算とは別枠で資金が確保されるということです。これ、かなり大きい。

ベトナムの国家プロジェクトって、予算が限られていて、途中で資金不足になることが多かったんです。でも、今回は「予算外」。AI戦略に本気で資金を投じる姿勢が見えます。

この基金から資金を受ける企業は、大きく成長する可能性があります。特に、研究開発型のスタートアップにとっては、ゲームチェンジャーになるかもしれません。

ASEAN諸国との比較:ベトナムの本気度

ここで、ASEAN諸国のAI戦略と比較してみましょう。

シンガポール

すでに「AI Singapore」という国家プログラムを展開。政府主導でAI人材育成、研究開発、産業応用を推進しています。ASEAN諸国の中では最も先進的。

タイ

「Thailand 4.0」政策の一環としてAI活用を推進。ただし、具体的な法整備やインフラ投資は、まだこれから。

インドネシア

AI戦略を発表していますが、実行段階ではまだまだ。インフラ整備が追いついていない状況です。

マレーシア

「Malaysia Digital Economy Blueprint」でAIを重点分野としていますが、具体的な国家インフラ整備の動きは見えていません。

こうして見ると、ベトナムの今回の動きは、シンガポールに次ぐレベルの本気度です。しかも、シンガポールと違って、ベトナムには「巨大な国内市場」と「若い労働人口」があります。AI技術を実際に活用する市場としてのポテンシャルは、むしろベトナムの方が高いかもしれません。

ハノイで生活していて、最近よく感じるのは、「ベトナム政府の戦略的な動き」です。中国とアメリカの間で絶妙なバランスを取りながら、自国の産業を育てようとしている。今回のAI法案も、その一環です。

投資家として注目すべき企業

では、具体的にどの企業に注目すべきか。僕が現地で見ている限り、以下の企業が有望です。

FPT Corporation(FPT VN、証券コード:FPT)

ベトナム最大のIT企業。AI、クラウド、データセンター事業を展開。政府プロジェクトでの実績も豊富で、今回のAIインフラ整備でも中心的な役割を果たす可能性が高い。直近の株価はやや調整局面ですが、長期的には買い場かもしれません。

Viettel(非上場、ただしVGI、VTPなど関連上場企業あり)

国防省傘下の通信大手。公安・国防関連のインフラを担当する可能性が高い。Viettelグループの上場企業(VGI、VTPなど)は、間接的に恩恵を受けるかもしれません。

Vingroup(VIC VN、証券コード:VIC)

ベトナム最大の民間コングロマリット。傘下のVinAIはAI研究で国内トップクラス。科学技術・イノベーション分野でのインフラ整備に関与する可能性があります。ただし、株価は既にプレミアムがついているので、タイミングを見極める必要があります。

CMC Corporation(CMG VN、証券コード:CMG)

ITサービス、システムインテグレーション、データセンター事業を展開。政府系プロジェクトでの実績があり、AIインフラ整備での受注が期待できます。時価総額が比較的小さいため、大きな成長余地があります。

FPT Software(非上場、FPTの子会社)

FPTの子会社で、ソフトウェア開発に特化。AI開発プラットフォームやデータ分析サービスを提供しており、国家AIデータベースの構築に関与する可能性があります。

ただし、これらの企業に投資する際は、必ず自分でも調査してください。僕の分析が100%正しいとは限りません。特に、ベトナム株は流動性が低い銘柄もあるので、売買のタイミングには注意が必要です。

リスク要因も忘れずに

AI法案は明るい未来を描いていますが、リスクもあります。

実行の遅れ

ベトナムの国家プロジェクトは、計画発表から実行まで時間がかかることが多いです。今回も、2026年施行予定ですが、実際のインフラ整備が始まるのはさらに先かもしれません。

資金不足

「国家AI開発基金」は予算外とされていますが、具体的な資金規模はまだ明らかになっていません。期待よりも小規模になる可能性もあります。

技術人材の不足

ベトナムのIT人材は増えていますが、AI分野の高度人材はまだ不足しています。インフラを整備しても、それを使いこなす人材がいなければ意味がありません。

地政学リスク

米中対立の中で、ベトナムがどちらの陣営に寄るかによって、AI技術の導入や投資環境が変わる可能性があります。

これらのリスクを理解した上で、長期的な視点で投資することが重要です。

僕の投資戦略:AI関連銘柄をどう組み込むか

僕のポートフォリオは、現時点でベトナム株が中心ですが、AI関連銘柄は全体の約15%です。FPTとCMCを主力として保有しています。

今回のAI法案を受けて、以下の戦略を考えています。

短期(1年以内)

法案の具体的な内容が明らかになるにつれ、関連銘柄の株価が上昇する可能性があります。FPT、CMCなど、既に政府プロジェクトで実績がある企業を中心に買い増しを検討。

中期(2〜3年)

2026年の法案施行後、実際のインフラ整備が始まる段階で、受注企業が明確になります。この段階で、直接の受益企業に資金をシフト。

長期(5年以上)

国家AIインフラが整備された後は、そのインフラを使って新しいサービスを提供するスタートアップや中小企業に注目。これらは上場前に見つけるのが理想ですが、上場後でも成長余地は大きいはず。

もちろん、これは僕の個人的な戦略なので、皆さんはご自身のリスク許容度に応じて判断してください。

まとめ:AI法案はベトナム投資の新しいチャプター

2026年施行予定のAI法案は、ベトナムのテクノロジー産業にとって大きな転換点になる可能性があります。規制ではなく、国家インフラ整備プロジェクト。政府が本気で資金を投じ、民間企業の参加を促す。

投資家として注目すべきは、以下の3つです。

国家AIインフラの整備で恩恵を受ける企業(FPT、CMC、Viettel関連企業など)

国家AIデータベースと開発基金を活用する企業(VinAI、スタートアップなど)

AI技術を使って新しいサービスを提供する企業(フィンテック、eコマース、ヘルステック分野のベンチャー)

ハノイで生活していて、街のあちこちでAI関連のスタートアップが生まれているのを目の当たりにしています。カフェで隣に座っているのが、次のユニコーン企業の創業者かもしれない。そういうワクワク感があるんです。

今回のAI法案は、そういう動きを国家レベルで後押しするものです。投資家として、この波に乗らない手はありません。

いかがでしたでしょうか。今回のAI法案について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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