こんにちは、ベトナム株投資アドバイザーのベトテク太郎です。
ハノイで生活していて、最近特に感じるのが「ベトナムへの外国資本の流入が加速している」ということです。街を歩けば新しい商業施設が次々とオープンし、工業団地の建設ラッシュも続いています。
実は、この肌感覚を裏付けるデータが出ました。2025年10月、ベトナムのM&A市場は52件、総額約720.5百万ドル(約1,080億円)という活発な動きを見せたのです。この数字、実は9月とほぼ同水準なのですが、内容を見ると「質的な変化」が起きています。
今回は、Grant Thorntonの最新レポートをもとに、ベトナムM&A市場の最新動向と、私たち投資家が注目すべきポイントを解説していきます。
外資主導の戦略的M&Aが市場を牽引
2025年10月のベトナムM&A市場で最も特徴的だったのが、外国企業による「戦略的M&A」が中心となった点です。
過去数年、ベトナム企業同士の再編目的の取引が多かったのですが、10月は明らかに様相が異なります。韓国のOCI Holdingsが太陽光パネル製造のElite Solar Power Waferの65%を取得したり、日本の住友グループがベトナムの水力発電会社の49%を取得したりと、本気の事業投資が相次いでいます。
私がハノイで日系企業の方々と話していても、「ベトナムでの事業拡大」というテーマは必ず出てきます。人件費の上昇は確かにありますが、それでも中国や他のアジア諸国と比較すれば競争力があり、何より政治的な安定性と若い労働力が魅力なんです。
これは単なる一時的なトレンドではなく、ベトナム経済の構造的な成長を示すシグナルだと私は見ています。
PEファンドの「復活」が示す市場の成熟
もう一つの大きな変化が、プライベート・エクイティ(PE)ファンドの動きです。
2022年から2023年にかけて、世界的な金利上昇の影響でPEファンドは慎重姿勢を強めていました。ベトナムでも同様で、大型の投資案件は影を潜めていたんです。
ところが、10月には複数の「初めて」がありました。
Ares Asia Private EquityがベトナムのMEDLATECに投資したのは、このファンドのベトナム医療セクター初の案件です。Ares Management Corporationは世界的な資産運用会社で、運用資産は数十兆円規模。そんな巨大ファンドがベトナムの医療市場に本格参入したわけです。
もう一つ、シンガポールのEMIAが倉庫管理サービスのMyStorageに投資したのも注目です。倉庫ビジネスなんて地味に聞こえるかもしれませんが、EC市場の急成長に伴って物流インフラへの需要は急増しています。ハノイでも、Lazadaやshopeeの配送拠点が次々と建設されているのを目にします。
PEファンドが戻ってきたということは、ベトナム市場の成長ストーリーに対する確信が強まっている証拠だと言えるでしょう。
セクター別で見る投資トレンド
10月のM&A市場を牽引したのは、不動産、製造業、エネルギー、金融の4セクターでした。
不動産:Vincom Retailの戦略的転換
Vincom Retail(VRE)がVincom Center Nguyễn Chí Thanhを約133百万ドル(約200億円)で売却したのは大きなニュースでした。
VREといえば、ベトナム最大級のショッピングモール運営会社です。私もハノイのVincom Mega Mallには頻繁に行きますが、週末は家族連れで大賑わい。ベトナムの中間層の消費意欲を肌で感じる場所です。
今回の売却は、資産の入れ替えと解釈できます。古い物件を売却して得た資金で、Cần Giờの大型海洋都市開発プロジェクト(2,870ヘクタール!)に注力する戦略でしょう。ベトナムの不動産市場は、単なる投資ではなく「どこに、どんな開発をするか」が問われる成熟フェーズに入っています。
製造業:韓国OCI Holdingsの太陽光パネル投資
OCI Holdingsが約78百万ドルで太陽光パネル用ウエハー製造工場の65%を取得したのも注目です。
ベトナムは再生可能エネルギー市場が急成長しており、政府も積極的に支援しています。太陽光発電の設備容量は今後も拡大が見込まれており、その部品を現地生産する動きは理にかなっています。
さらに、この工場は最初の投資120百万ドルで2.7GWの生産能力を持ち、追加40百万ドルで5.4GWまで拡張可能とのこと。スケーラビリティが高く、需要に応じて柔軟に対応できる点が魅力です。
エネルギー:住友グループの水力発電参入
日本の住友グループがベトナムの水力発電会社MEE JSCの49%を取得したのは、ベトナム在住の日本人としても嬉しいニュースでした。
MEE JSCはクアンナム省に48MWの水力発電所を保有し、EVN(ベトナム電力公社)と20年間の売電契約を結んでいます。安定したキャッシュフローが見込める優良資産です。
住友グループはこれまで工業団地開発に強みを持っていましたが、今回の水力発電参入で、ベトナムでのポートフォリオをさらに多様化させたことになります。
金融:TPBankがTiên Phong証券を子会社化
TPBank(TPB)がTiên Phong証券(TPS)の持ち株比率を9.01%から51%に引き上げるため、約137百万ドル(約205億円)を投資する計画も発表されました。
ベトナムでは、銀行が証券会社を傘下に収めることで、個人投資家向けのサービスを強化する動きが加速しています。TPBankは比較的新しい民間銀行ですが、デジタルバンキングに力を入れており、若い世代を中心に支持を集めています。証券事業を取り込むことで、顧客の資産運用ニーズにワンストップで対応できるようになるでしょう。
農業・食品セクターも見逃せない
M&A市場全体では目立ちませんでしたが、農業・食品セクターでも重要な動きがありました。
10月1日、オランダのDe Heus Groupが韓国のCJ Feed & Careを約852百万ドル(約1,278億円)で買収する契約を締結しました。これにより、ベトナム国内の7つの飼料工場(年間生産能力100万トン以上)がDe Heusの傘下に入ります。
De Heusは2021年にMasanの飼料事業(ProconcoとANCO)も買収しており、今回の取引でベトナム最大の飼料メーカーとしての地位をさらに強固にしました。
ベトナムは豚肉消費大国であり、養豚業は重要な産業です。ハノイの市場に行けば、豚肉がずらりと並んでいますし、家庭料理でも豚肉は欠かせません。飼料ビジネスは地味ですが、食料安全保障の観点からも重要なセクターなんです。
投資家として注目すべきポイント
今回のM&Aトレンドから、私たち投資家が学ぶべきことは何でしょうか。
まず、外資の流入が加速しているという事実です。世界的な投資家がベトナムに本気で資金を投じているということは、この国の成長ポテンシャルが評価されている証拠です。
次に、セクターの多様化です。不動産だけでなく、製造業、エネルギー、医療、物流など、幅広い分野で投資が進んでいます。これは、ベトナム経済が単なる「安い労働力」を提供する国から、付加価値の高い産業を育てる段階に移行していることを示しています。
そして、PEファンドの復活です。機関投資家が慎重姿勢を緩めているということは、マクロ環境が改善しつつある兆候かもしれません。
リスクも忘れずに
もちろん、リスクもあります。
ベトナムの法規制は頻繁に変わりますし、外資規制も厳しい分野があります。為替リスクも無視できません。VND(ベトナムドン)は管理変動相場制なので、急激な変動は少ないものの、長期的には対ドルで緩やかに減価する傾向があります。
また、M&A市場が活発だからといって、すべての企業が良い投資先というわけではありません。財務状況、経営陣の質、ガバナンスなど、個別企業の分析は欠かせません。
まとめ:ベトナムは「投資の旬」を迎えている
2025年10月のM&A市場を見ると、ベトナムが今まさに「投資の旬」を迎えているように感じます。外資が本格的に参入し、PEファンドが戻ってきて、セクターも多様化している。この流れは、短期的なトレンドではなく、構造的な変化だと私は考えています。
ハノイで生活していると、この国の成長エネルギーを日々感じます。若い世代の消費意欲、デジタル化の加速、インフラ整備の進展。ベトナムは確実に次のステージに進んでいます。
投資家として、この波に乗るチャンスを逃したくないですよね。
いかがでしたでしょうか。今回のM&A市場の動向について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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