こんにちは、ベトナム総合ニュース&株式投資解説のベトテク太郎です。
ハノイで生活していると、雨季の洪水や浸水がどれほど深刻か、身をもって実感します。先日も、タイ湖エリアからロンビエン方面へ向かう道が冠水して、バイクで通れなくなっていました。ベトナム政府は、この洪水・浸水問題にどう立ち向かおうとしているのか。今回発表された農業農村開発省の計画から、ベトナムのインフラ投資の未来が見えてきます。
ベトナム政府が打ち出した洪水対策の全体像
2025年10月の政府定例会見で、農業農村開発省のフン・ドゥック・ティエン次官が明らかにした内容は、かなり包括的なものでした。
今回発表されたポイントは以下の通りです。
総合的な計画策定 農業農村開発省は、各地域の地形や気象条件、過去の洪水データを基に、水利計画や防災計画を策定しています。都市部や工業団地の浸水対策は建設省の管轄ですが、農業地帯の水害対策と農業生産の保護は農業農村開発省が担当する形です。
地域別の具体的対策 北部山岳地帯と北中部では、山から流れ込む水への対応として、排水システムの強化と堤防建設を進めています。タイグエン省やバクザン省など、地形に合わせた対策が評価されているとのこと。
紅河デルタ地帯(ハノイを含む)では、大雨による浸水が主な問題です。ここでは、川への排水を自動化するポンプステーションの建設と、堤防の補強が中心施策になっています。ハノイや周辺省では、すでに多くの対策が実施されているようです。
メコンデルタでは、上流からの洪水が課題となっています。洪水制御のための水利システムを完備し、農業生産や生活、環境保護を両立する多目的プロジェクトを展開する計画です。これらの方針は首相の承認を得て、各地で実施されています。
4つの資金源を動員 最も注目すべきは、資金調達の方法です。国家予算だけでなく、国際支援、商業借入、そして社会化・コミュニティからの資金という4つの財源を総動員する方針が示されました。この多様な資金調達手法こそが、持続可能な解決策の鍵だと強調されています。
ベトナム株投資家として注目すべき企業セクター
ハノイに住んで12年、こういった政府の大型インフラ計画が発表されるたびに思うのは、「これは投資チャンスだ」ということです。
建設・インフラセクターへの追い風
今回の計画で具体的に恩恵を受けるのは、水利インフラや堤防建設を手がける企業です。ベトナムの建設セクターは、政府のインフラ投資が活発化すると、受注が増えて業績が伸びる傾向があります。
特に注目したいのは、ホアファットグループ(HPG)のような鉄鋼メーカーや、コッカグループ(KBC)などの不動産・インフラ開発企業です。堤防やポンプステーションの建設には大量の鋼材が必要になりますし、都市部の浸水対策が進めば、その周辺の不動産開発も活性化します。
環境・水処理関連企業にも注目
排水システムや水質管理に関わる企業も、今後の需要拡大が見込まれます。ベトナムではまだ上場企業が少ない分野ですが、中長期的には成長が期待できるセクターです。
農業農村開発省が「環境保護と持続可能な農業生産」を強調している点も見逃せません。環境配慮型のインフラ投資が増えれば、関連企業の株価にもポジティブな影響があるはずです。
2025年の台風被害と政府の迅速な対応
今年は本当に自然災害が多い年でした。年初から台風や豪雨が相次ぎ、北部・中部の10以上の河川で記録的な洪水が発生しています。
ティエン次官によれば、年初からの自然災害で300人が死亡・行方不明となり、経済損失は約69兆ドン(約3,000億円)に達したとのことです。ハノイの首都圏でも深刻な浸水被害がありました。
それでも、ベトナム政府の対応は迅速でした。首相は農業農村開発省に対し、各省庁や地方自治体と連携して全国規模の防災会議を開催するよう指示。早期警戒システムの強化や、地域ごとのリスクレベルに応じた対応シナリオの作成が進められています。
興味深いのは、台風13号の被害比較です。フィリピンでは323人が死亡・行方不明となったのに対し、ベトナムではわずか8人にとどまりました。事前の準備と迅速な避難指示が功を奏した結果です。
農業生産は堅調、輸出も好調を維持
自然災害が多発する中でも、ベトナムの農業部門は驚くほど底堅さを見せています。
2025年の農業生産実績を見ると、コメ生産量は3,900万トン、食肉は650万トン、水産物は812万トン、植林木材は2,900万立方メートルに達しています。農産物輸出額は581.3億ドル(前年同期比12.9%増)、貿易黒字は175.9億ドルを記録し、年間では700億ドル近くに達する見込みです。
この数字が示しているのは、ベトナム経済の底力です。災害が多発しても、政府の「4つの現地主義」(現地の人材、物資、資金、指揮系統を活用する方針)による柔軟な対応で、農業生産を維持できています。
ベトナム株に投資している立場からすると、こういった政府の危機管理能力の高さは、本当に心強いものがあります。
メコンデルタの長期計画にも期待
農業農村開発省は現在、「メコンデルタ地域の地盤沈下・浸食・浸水・干ばつ・塩害対策計画(2035年まで、2050年を見据えて)」を政府に提出しています。
この計画では、水利インフラの整備、堤防の強化、法制度の整備、自然災害の予測・警報能力の向上などが盛り込まれています。メコンデルタはベトナムの「穀倉地帯」であり、ここの農業生産が安定することは、国全体の食料安全保障にとって極めて重要です。
さらに、バクフンハイ水利システムの多目的開発計画も進行中です。この計画は、バクニン省、フンイエン省、ハイフォン市の浸水問題を解決することを目指しています。農業農村開発省は2025年10月22日付の公文書256号で首相に報告し、各省庁や地方自治体への具体的な任務配分と、2026~2030年の中期投資計画を提案しています。
投資家として押さえておくべきポイント
今回の発表から読み取れるのは、ベトナム政府がインフラ投資を本気で進める姿勢です。4つの資金源を総動員する方針は、国家予算だけに頼らず、民間資本や国際支援も積極的に活用する意図が見えます。
これは投資家にとって何を意味するか。建設、鉄鋼、セメント、不動産開発といったセクターへの資金流入が増える可能性が高いということです。特に、政府の大型プロジェクトに参画できる大手企業は、安定した受注が見込めます。
また、環境配慮型のインフラ投資が増えれば、再生可能エネルギーや水処理関連企業にも追い風となります。ベトナムは気候変動への対応を国家戦略として掲げており、こういった分野への投資は今後ますます加速するでしょう。
ハノイで暮らしていると、政府の発表がどれだけ実行に移されるか、肌で感じることができます。今回の洪水対策計画は、単なる紙の上の計画ではなく、実際に動き出している実感があります。だからこそ、関連セクターへの投資は、中長期で見ても魅力的だと考えています。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナム政府の洪水対策計画について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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