【投資家必見】ドイモイ政策とは?ハノイ在住12年の私が語る「刷新」の意味と現在

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

ハノイのタイ湖沿いを散歩していると、高層マンションが次々と建ち、ロッテセンターには最新のブランドショップが並び、道路にはVinFastの電気自動車が走っている。この光景を見るたびに「本当にベトナムは変わったな」と実感するんですが、正直に言うと、私自身「ドイモイ政策」について詳しく説明できなかったんですよね。

投資家として、クライアントや読者の方から「ドイモイ政策って何ですか?」「いつ始まったんですか?」「今も続いているんですか?」と聞かれることが何度もあって。その度に「ああ、これはちゃんと調べないとマズい」と思いながら、なんとなくの知識で話していた自分がいました。

というわけで今回、徹底的に調べました。そしたら分かったんです。ドイモイ政策を理解せずにベトナム株投資を語るなんて、土台を知らずに家を建てるようなものだったと。

目次

ドイモイ政策とは何か?まず言葉の意味から

「ドイモイ」というカタカナで呼ばれることが多いこの政策、実はベトナム語で「Đổi Mới」と書きます。発音もほぼ「ドイモイ」で合っているんですが、意味としては「新しい物に換える」「刷新」「革新」といったニュアンスなんです。

英語では「Doi Moi」や「Reform and Opening」と表記されることが多く、日本語では「刷新政策」や「革新政策」と訳されます。でも、ベトナム人に「ドイモイ知ってる?」と聞くと、誰もが知っている歴史的な転換点として認識されているんですよね。

じゃあ具体的にいつ始まったのか。これ、意外と曖昧に覚えている人が多いんですが、正確には「1986年12月15日から18日」に開催されたベトナム共産党第6回党大会で正式決定されました。つまり、もう39年も続いている政策なんです。

誰がドイモイを始めたのか

政策の中心人物は「グエン・ヴァン・リン」(Nguyễn Văn Linh)という人物です。1986年12月の第6回党大会で党書記長に選出された改革派のリーダーで、元国家解放戦線の指導者でもありました。

実はこの党大会の少し前、1986年7月に当時の党書記長「レー・ズアン」が死去していて、保守派から改革派への権力移行が起きたタイミングだったんです。そこに登場したのがグエン・ヴァン・リンで、彼と一緒に経済改革を推進したのが「ヴォー・ヴァン・キエット」という人物。この二人が、ベトナムを計画経済から市場経済へと大転換させた立役者なんですね。

当時のベトナムは本当にヤバかった

じゃあなぜドイモイが必要だったのか。これを理解するには、1986年当時のベトナムがどれほど深刻な経済危機にあったかを知る必要があります。

想像してみてください。1986年のインフレ率、なんと「約700%超」です。翌年の1987年から1989年にかけては「774%」というハイパーインフレに突入しました。給料をもらった瞬間、その価値がどんどん下がっていく。1987年には1人当たりGDPが675ドルだったのに、1989年には「97ドル」まで急落したんです。

経済成長率も1986年時点でわずか3.36%。物資は極端に不足し、生産は非効率で、貿易赤字は拡大する一方。中央計画経済は完全に機能不全を起こしていました。

さらに外的要因も重なります。ベトナム戦争後の荒廃、米国による経済制裁、1979年の中越戦争、カンボジアへの軍事占領コスト、そしてゴルバチョフ政権下でソ連からの援助も減少していく。四方八方から締め付けられていたわけです。

このままでは国が崩壊する。そういう危機感の中で、ドイモイ政策は生まれました。

市場経済化という大転換

ドイモイ政策の核心は「市場経済化」です。具体的にどんなことをやったのか、いくつか重要なポイントを挙げてみます。

まず1987年、「国道の検問所を撤廃」しました。これ、地味に見えますが革命的なことで、物流が自由化されたんです。価格統制も段階的に撤廃され、市場メカニズムが導入されていきました。

そして1990年、「私営企業法」が制定されます。これによって、私有財産が法的に認められるようになった。1992年の新憲法では、私営セクターの役割が公式に認定されました。

外資導入も積極的に進められました。1987年に「外国投資法」が制定され、外資100%企業の設立が認可されたんです。国有化を法的に禁止し、外国企業が完全に物的資産を所有できるようになった。これが後のSamsungやIntel、日系企業の大量進出につながっていくわけです。

農業改革も劇的でした。1988年の「決議10号」で、農民は協同組合への参加義務から解放され、自由市場で農作物を販売できるようになった。1993年の土地法改正では、土地使用権が世帯単位で付与され、交換・譲渡・賃貸・相続・抵当が可能になりました。土地所有権は国家に属するという原則は維持しながらも、実質的には私的財産として扱えるようになったんです。

39年間で何が変わったのか

数字で見ると、ドイモイの成果は圧倒的です。

1986年のGDPは約180億ドルでした。それが2025年には「約4,850億ドル」。「約27倍」です。1人当たりGDPも、310ドルから約4,500ドルへと「約14.5倍」になりました。

貧困率は1986年の約70%から、2025年には4%未満まで低下。「約17分の1」です。外国直接投資(FDI)は、ドイモイ前はほぼゼロだったのが、現在は年間250億ドル超。2024年は10月までで253億ドルに達しています。

インフレ率も、1987年のピーク774%から、2023年には3.25%まで安定化しました。

ハノイで暮らしていて実感するのは、この数字が単なるデータじゃないってことです。タンロン工業団地には日系企業が続々と進出し、街中ではVingroupの高級マンション「Vinhomes」が次々と建設され、FPTのようなIT企業が世界中で戦っている。これ全部、ドイモイがなかったらあり得なかった光景なんですよね。

ドイモイ政策は現在も続いている

「ドイモイ政策って、もう終わったんじゃないの?」と思う人がいるかもしれませんが、実は現在も継続中です。

現在のベトナム経済体制の正式名称は「社会主義志向市場経済」(Socialist-Oriented Market Economy)と呼ばれています。市場メカニズムと社会主義体制を共存させるという、ある意味で矛盾した体制ですが、これがベトナム式なんです。

2025年に入ってからも、ドイモイ以来最大規模と言われる改革が進んでいます。5月4日に公布された「決議68号」では、民間経済を「最も重要な経済推進力」と位置づけました。これはトー・ラム党書記長が主導している改革で、中央・地方政府の大幅なリストラも実施されています。

経済成長目標も野心的です。2025年はGDP成長率8%以上、2026年から2030年は10%以上を目指しています。2030年には世界30位の経済大国入り、2045年には先進国入りという長期ビジョンも掲げられています。

ただし課題もあります。国営企業改革の遅れ、透明性の不足、インフラ整備、技術革新能力の不足、頭脳流出、都市農村格差、環境問題。こうした問題に対して、ベトナム政府は今も「刷新」を続けているんです。

ベトナム株投資家にとってのドイモイ

投資家として重要なのは、ドイモイ政策がベトナム株式市場にどう影響しているかです。

ホーチミン証券取引所が開設されたのは2000年7月20日。ドイモイ開始から「14年後」のことです。開設時の上場銘柄はわずか4銘柄でしたが、現在は証券口座数が1,130万口座(人口の10%超)まで増えています。

市場が発展したことで、Vingroup、FPTコーポレーション、Viettel、Vinamilkといった国民的企業が誕生しました。Samsungは8年連続でベトナム企業トップ500の首位を獲得し、日系企業も約2,000社が進出しています。

ただし投資家として知っておくべき制約もあります。外国人の株式保有制限は原則49%以下、一部銀行は30%以下に設定されています。2015年の政令60号で証券分野以外の緩和が検討されましたが、見通しは不透明なままです。

もしドイモイ政策がなかったら、専門家の見解では「ベトナム経済は崩壊していた可能性が高い」とされています。ソ連型社会主義の失敗例になるか、北朝鮮的な孤立経済に陥っていたかもしれません。現在のGDPは「10分の1以下」だった可能性もあるんです。

中国との比較で見えてくるもの

よくドイモイ政策は「中国の改革開放政策を真似たもの」と言われますが、実際はどうなのか。

中国の改革開放は1978年に鄧小平が始めました。ベトナムのドイモイは1986年なので、8年遅れです。両国とも農業改革から始め、市場メカニズムを導入し、外資を呼び込み、共産党の一党支配は維持するという点で共通しています。

違いは、中国がより急進的で大規模、経済特区方式を採用したのに対し、ベトナムはより保守的で段階的、全国一律のアプローチを取ったことです。成長スピードは中国の方が速かったですが、ベトナムは安定的な成長を続けてきました。

興味深いのは、1986年から1988年まではベトナムの1人当たりGDPの方が中国より高かったんです。その後、中国が逆転しましたが、2024年第3四半期のGDP成長率8.23%でASEAN首位を記録するなど、ベトナムは今でも高い成長率を維持しています。

そういうことなんです

ドイモイ政策を理解すると、ベトナム株投資の見方が変わります。

これは単なる歴史の話じゃなくて、今もリアルタイムで進行中の「刷新」なんです。39年間、一貫して改革路線を続けてきたベトナムの底力。政治的安定性、若い人口(平均年齢約32歳)、中間層の拡大、製造業ハブ化、16のFTA発効。これ全部、ドイモイの成果です。

ハノイで暮らしていて思うのは、ベトナムはまだまだ変わり続けるということ。2025年の民間経済活性化、2030年の世界30位入り、2045年の先進国入り。このロードマップは決して夢物語じゃない。だって、GDPを27倍にした国ですから。

投資家として、私たちはこの「刷新」の真っ只中にいます。外国人保有制限49%、国営企業の影響力、汚職問題、法規制の複雑さ。リスクはあります。でも、70%だった貧困率を4%未満まで下げた国が、次の40年で何を成し遂げるのか。それを見届けたいし、その成長に乗りたい。

それがベトナム株投資の本質だと、私は思っています。

いかがでしたでしょうか。今回のドイモイ政策について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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