ハノイの朝、いつものようにバイクの排気ガスで目が覚める日々が続いていましたが、昨日発表されたビンファストの電動バイク戦略を見て、「これは本当にベトナムの交通事情を変える可能性がある」と感じています。
今回のニュースを整理すると
ビングループ傘下のビンファストが、バッテリー交換式電動バイクの本格参入を発表しました。主な内容を整理すると以下の通りです。
10月に第一弾の「エボ・マックス」を約11万円で発売開始し、年内に合計4モデルを投入予定です。価格帯は11万円から22万3000円まで幅広く設定されています。
特徴的なのは、容量1.5kWhのバッテリー2個搭載で最大85km走行可能という実用性と、バッテリー交換システムです。ユーザーはバッテリー1個あたり月額1120円でレンタルでき、1回の交換費用は50円という低コスト設定になっています。
そして最も注目すべきは、3年間で全国15万か所のバッテリー交換ステーション設置という壮大な計画です。まず10月に1000か所から始めて、2025年末までに5万か所まで拡大するとしています。
さらに記念キャンペーンとして、電動バイク購入時に10%割引や最大90%の分割払い支援、2027年まで充電ステーション無料利用など、大規模な購入支援制度も発表されました。
投資家としても、この動きは見逃せません。
バッテリー交換式という賢い選択
ビンファストが今回発表した電動バイクで最も注目すべきは、バッテリー交換式を採用したことです。正直言って、これは非常に理にかなった戦略だと思います。
ベトナムの住宅事情を考えてみてください。ハノイやホーチミンでは、多くの人がアパートの2階、3階に住んでいて、バイクを1階に駐輪しています。毎日バッテリーを外して充電のために持ち運ぶなんて、現実的ではありませんよね。
しかも今回のビンファストのシステムは実によく考えられています。バッテリー1個あたり月額1120円のレンタル料金、そして1回の交換が50円。これを聞いて、「ガソリン代と比べてどうなんだろう」と計算してみました。
ベトナムでガソリンバイクを使っている私の経験では、月のガソリン代は大体150万VND(約8400円)程度です。電動バイクでバッテリー2個使いなら月額2240円、ガソリンの4分の1以下になる計算です。これは家計には相当なインパクトですよね。
15万か所のステーション計画の現実性
「3年で15万か所のバッテリー交換ステーション」という数字を聞いて、最初は「また大風呂敷を広げて」と思ったのが正直なところです。ただ、ビンファストの親会社であるビングループの実行力を考えると、あながち不可能ではないかもしれません。
ビングループは既にビンマートという小売チェーンを全国展開していますし、不動産開発も手がけています。既存の店舗や施設にステーションを設置していけば、15万か所という数字も現実味を帯びてきます。
実際に1000か所から始めて2025年末までに5万か所という段階的な展開計画も、無謀さよりも現実的な戦略を感じさせます。私がベトナムで見てきた多くのプロジェクトは、最初から大きすぎる目標を掲げて結局頓挫することが多かったのですが、今回は違う印象を受けます。
VIC株への投資判断が難しい理由
さて、投資家として一番気になるのは、この発表がビングループ株(VIC)にどう影響するかということです。私のポートフォリオにあるVIC株は取得から36.02%の含み益が出ているものの、最近の株価は少し頭打ち感があります。
正直なところ、ビンファストの電動バイク事業への評価は複雑です。確かに市場性は高く、ベトナムでは年間約300万台のバイクが販売されています。電動バイクのシェアが10%になるだけでも30万台、相当な市場規模です。
ただし、競合も激しくなってきています。中国メーカーの参入もありますし、既存のバイクメーカーも電動化に向かっています。ビンファストが先行者利益を確保できるかが鍵になりそうです。
投資家として注目する3つのポイント
この発表を受けて、私が今後注目したいのは以下の点です。
まず、初期販売台数の推移です。10月のエボ・マックス発売後、どれだけの台数が実際に売れるのか。ベトナム人は新しいものには慎重な面もありますから、口コミでの評判が広がるまでに時間がかかる可能性もあります。
次に、バッテリー交換ステーションの設置ペースです。利便性がユーザー体験を左右する決定的要因になりますから、計画通りにステーションが増えているかは重要な指標になります。
そして何より、収益性の見通しです。バイク本体の販売に加えて、バッテリーレンタルと交換サービスで継続的な収益を得られるビジネスモデルは魅力的ですが、初期投資も相当な額になるはずです。
ベトナム株投資家への示唆
この動きは、ベトナム株投資を考えている方にとって重要な示唆を含んでいると思います。
ベトナムの企業は、自国の市場特性を深く理解した製品・サービス開発が得意です。今回のバッテリー交換式電動バイクも、まさにベトナムの住環境や所得水準に合わせた絶妙な設計です。
また、政府の環境政策とも方向性が一致しています。ベトナム政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと表明していますから、電動バイクの普及は国策とも言えるでしょう。
一方で、新興国企業の特徴として、発表と実行の間にギャップが生じることもあります。投資家としては、華々しい発表に踊らされることなく、実際の進捗を冷静に見極めることが大切です。
個人的な投資戦略
私自身のVIC株に対する投資戦略は、当面は「ホールド」で様子見です。
36%の含み益が出ている状況で、この電動バイク事業の本格化を前に売却する理由はありません。ただし、大幅な買い増しも控えようと思います。事業の成功が確実ではない現段階では、リスクを抑えた投資姿勢を維持したいからです。
むしろ注目しているのは、電動バイクの普及で恩恵を受ける関連銘柄です。電力インフラや部品供給に関わる企業にも波及効果があるかもしれません。
まとめ:変化の波を読む重要性
ビンファストの電動バイク戦略は、ベトナムの交通事情を大きく変える可能性を秘めています。投資家として、こうした構造的な変化の兆しを見逃さないことが重要だと改めて感じています。
12年間ベトナムに住んできて思うのは、この国の変化のスピードは本当に早いということです。5年前には考えられなかったキャッシュレス決済が今では当たり前になり、配車サービスも急速に普及しました。
電動バイクの普及も、思っているより早く進むかもしれません。投資家としては、変化の波を読み、適切なタイミングで投資判断を行うことが求められます。
皆さんは、このビンファストの電動バイク戦略をどう見ますか。ベトナム投資を検討されている方は、ぜひこうした個別企業の動向にも注目してみてください。きっと新たな投資機会を見つけられるはずです。
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